公開講座「桜島の火山活動と防災」

日本火山学会会長 / 千葉とき子


 日本火山学会では,会員が調査・観測・実験などによって火山活動のいろいろな面を研究していますが,それらの成果の一部を,多くの方々に知って頂くために,秋季大会の折に公開講座を開催してきました.今回は鹿児島市で開催するのに因んで,「桜島」の話題に致しました.言うまでもなく,桜島と諏訪之瀬島は,ここ数十年間活動を続けている日本で最も活動的な火山です.これらの火山を間近にご覧になっている皆様は,最近の桜島の火山活動については,よくご存じのことでしょう.しかし,私たちは数十万年〜百万年という火山の一生のごく一部を垣間見ているにすぎません.昨年の三宅島の噴火のように,二酸化硫黄の放出という,過去2000年間の活動とは全く違う推移を示すこともまれではありません.

 桜島がどういう活動をしてきたのか,現在はどういう状況にあるのか,将来大きな噴火が起きるのか,などについて3名の会員に講師をつとめてもらいます.石原和弘・小林哲夫両会員は,それぞれ地元鹿児島の火山観測研究センター・鹿児島大学で桜島を見守っています.岡田弘会員は,北海道大学で火山活動の観測から噴火災害の軽減までを目標に研究しています.公開講座以外でも,私共の発信する情報(ホームページ,機関誌「火山」,ブルーバックス「Q &A火山噴火」など)を受け止めて,桜島の活動の変化に備えて頂ければ幸いです.

 日本火山学会には,現在1200名の会員がおり,火山活動のさまざまな側面を理解しようと努めています.日本の活火山86(気象庁)のなかで桜島のように観測体制が整っている火山は20しかありません.富士山のように300年間も活動を休んでいる火山については,まだまだ観測は手薄です.火山噴出物の種類・分布を調べることによって,過去の火山活動の様子はある程度まで復元できますが,現在の三宅島のような気体の放出物は痕跡が失われてしまいますし,噴火の前兆現象も残されていません.噴火の前兆を的確に捕えて火山災害を軽減するため,もっと多くの活火山で,観測が行われるようになることを願っています.




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2002年1月,日本火山学会: kazan@eri.u- tokyo.ac.jp