火山についてのQ&A

≪前のQ&A≪
≫次のQ&A≫

トピック項目表示

QA番号順表示

小中学生から多い質問

Jump to #
(半角数字)

「Q&A火山噴火」

に寄せられた意見集

Q&A HOME

VSJ HOME

Question #1829
Q 三宅島にアカコッコが戻ってきたと聞きちょっと安心しています。ようやく火山ガスの勢いも下火になってきたのでしょうか?
三宅島について二つ質問です。カルデラの種類には火砕流を伴うクレーターレイク型、大量の溶岩流出を伴うハワイ型、イエローストーンに代表される環状型、荒船山周辺のコールドロンなど幾つかのタイプがあり、三宅島のかつての八丁平カルデラや桑木平カルデラは伊豆大島とともに「ハワイ型」であると聞いたことがあります。しかし今回の噴火で出来たカルデラはほとんど溶岩を噴出してませんよね(よく逆噴火と形容されてましたが)。多分前例が無いことだと思うのですがこのタイプのカルデラを新たに「三宅型カルデラ」の様に新たに分類される可能性はあるのでしょうか。
次に現在も続く火山ガスの大量放出についてですがよく「火口直下にマグマが上がって来ていてマグマ溜まりと対流をおこしその過程でガスが放出されている」と聞きます。こういう現象はキラウエアなどの様に常に火口底にマグマが顔を出してるタイプの火山では起きないのでしょうか。(僕は他の火山に比べて三宅島の中央火道が極端に太いからこの様なマグマの対流〜火山ガス大量放出が起きてると考えてるのですが・・)
よろしくお願いします。 (07/31/01)

アマンタジン:医師:26

A
 三宅島の噴火活動が始まってから,もう1年が過ぎました.ヘリコプターから観察 していても,茶色く変色している木々から,緑の新芽が出ているところもあり,少し ずつですが元の姿を取り戻しつつあるようです.


 まず玄武岩質火山の山頂部に形成されるカルデラは,ハワイ型よりはキラウエア型 カルデラと呼ぶことが多いです.キラウエア型カルデラは,クレーターレイク型カル デラなどのカルデラ形成に伴う噴火の噴出量と,陥没量がほぼ見合うカルデラと異な り,噴出量より陥没量がずっと大きいことから,成因について議論ありました.
 さて今回のカルデラ形成は,三宅島では数千年に一度程度の比較的珍しい現象です が,他の火山で似たような事例が過去に観察されていなかったわけではありません. 例えば1924年のハワイ・キラウエア火山のハレマウマウ火口の陥没事件や,1968年ガ ラパゴス・フェルナンディナ火山のカルデラ形成事件などです.これらは玄武岩質火 山で地表への溶岩噴出量よりはるかに大きい陥没が,爆発的な噴火を伴って起きた例 で,今回の三宅島とよく似ています.
 これらのカルデラ形成事件では,いずれも地下側方へのマグマの移動が起きていた ことが知られており,それにより密度の大きな山頂部が陥没したという考えが有力で す.移動したマグマの大部分は地下にあり,地表には出てきていないので,噴出量と 陥没量が食い違うのも説明できるというわけです.今回の三宅島の噴火は,新たに三 宅型カルデラと呼ぶよりは,最もよく観測がなされている中で起きたキラウエア型カ ルデラ形成事件ということになると思います.


 次にマグマ対流による火山ガス放出モデルですが,おっしゃるように火道の実効径 がずっと大きいことが,今回大量の火山ガスを放出している原因と考えていいと思い ます.玄武岩マグマ程度の粘性の流体をぐるぐると移動させるだけなら,径3mの円筒 で大丈夫という計算があります.一方,対流させるには上昇したマグマの密度が大き くなる必要がありますが,これにはマグマからガスがどれだけ効率よく分離するかが 効いてきます.ガスの分離効率には火道の断面積が重要で,伊豆大島の例(一日数百 トンのSO2放出量)で計算した例では,実効火道径約9m強で対流しているとすると説明 できます.今回の三宅島では,放出量が伊豆大島の約100倍ですから,実効火道径は 10倍程度あることになります.陥没初期の変形せずに陥没している部分の大きさは少 なくとも径300m程度はありましたから,考えられない大きさではないと思います.
 (8/07/01)

川辺禎久(産業技術総合研究所地球科学情報部門)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp