火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #192
Q 色々な火山がある中で、噴出物も色々と変わってくると本で読みました。先日、北海道の硫黄山に行ったんですが、岩っぽいものが出てくるのは想像に難しくないのですが、硫黄が出てくるのはなんだか考え辛いです。一体どうして、硫黄だけが流れて来ることがあるんですか?たまたま地下で硫黄が集まっているところで火山ができるとあんな風になるのか、と思っても、箱根とかでもなにかとよく硫黄があるので偶然とも考え辛いなぁ、と思っています。教えて下さい。よろしくお願いします。
(2/7/99)

イガイガ:大学生:20

A イガイガさんが訪れた北海道の硫黄山というのは、恐らく"知床硫黄山"のことだと 思います。この火山は、前回1936年の噴火の際、溶けた硫黄を噴出したことで世 界的にも有名です。このときの硫黄の総噴出量は、約20万トンにのぼったそうで す。この火山では過去の噴火でも硫黄を流出するような噴火がありました。世界で も知床硫黄山のように、大量の硫黄を流出する火山は珍しく、他にはチリ北部にあ るLastarria火山が知られています。

火山で見られる硫黄は、もともとはマグマ中に溶け込んでいたものです。マグマが 上昇し、圧力が減少するのに伴い、硫黄などの揮発性成分がマグマから抜け出し、 火山ガスとして地表へと上昇します。火山ガス中の硫黄はSO2, H2S, S2の形で存 在します(S2の存在度は他の二つのガス成分に比べ非常に小さい)。これらの硫黄 のガスは、火山ガスが地表に近づき温度が低くなると(例えば100℃くらい)、一部 が硫黄の結晶として晶出します。箱根などで噴気孔の周りに見られる、黄色い結晶 が、晶出した硫黄です。このような硫黄の晶出は、噴気孔の周りだけでなく、火山 ガスが上昇してくる地下のガスの通り道でも起こっているのです。

さて、硫黄を晶出するような噴気活動が長期にわたって続くと、結果的に相当量の 硫黄が噴気地帯やその地下に蓄えられることになります。知床硫黄山の場合、長年 にわたって蓄積された硫黄が、火山活動の活発化に伴う温度上昇とともに融解し (下の「硫黄の性質」を見てください)、火口内にたまり、それが地下の水蒸気圧の 増大ともに噴出したと考えられます。つまり、知床硫黄山で噴出した硫黄は、たま たま硫黄が存在するところに火山ができたのではなく、火山活動の過程で蓄積した 硫黄なのです。

ちなみに、先に大量の硫黄を流出する火山は珍しいと書きましたが、小規模の溶融 硫黄噴出は噴気地帯では時々見られる現象です。硫黄の性質硫黄の融点は約113℃ です。160℃になると、水のようにさらさらの流体になります。(それ以上の温度 になると、逆に粘性が急激にたかくなる) (2/15/99)

森 俊哉(東京大学・大学院理学研究科・地殻化学実験施設)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp