火山についてのQ&A |
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Question #3184 | |
Q |
冨士火山は伊豆半島が楔のように食い込んだ先に発達した火山のように見えますが、この場所に日本では桁外れに大きな火山が出来たのは、伊豆半島のプレートへの潜り込みが関係しているのでしょうか?、日本列島に付加された陸塊ではこのような所はほかにないのでしょうか?北上山地や阿武隈山地も似ているように見えますが。 (11/01/02) ぼるけの:会社員:40 |
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A |
ご指摘のように伊豆半島は本州に対して楔のように食い込んでみえます.このこと は海底地形をふくめて眺めるともっと明瞭になります.伊豆半島の西側では,フィリ ピン海プレートの沈み込み境界である南海トラフの延長にあたる駿河トラフが,伊豆 半島と平行するように北上し,富士川河口付近で陸側に上陸しています.一方伊豆半 島の東側では日本海溝から分岐した,やはりフィリピン海プレートの沈み込み境界で ある相模トラフが,伊豆半島と平行するように北上し,国府津付近で陸側に上陸して います.これらのプレート沈み込み境界の海洋側にあたる伊豆半島は,フィリピン海 プレートの上にのっているわけです.伊豆半島には沢山の火山があります.伊豆半島 の南の延長は,伊豆大島,三宅島,八丈島などの火山島からなる,伊豆・小笠原火山 弧を形成しています.火山弧の地下のマントルからは灼熱したマグマが上昇してくる ために,火山弧では,固化したマグマによってマントルよりも軽い地殻の厚さが厚く なるとともに,その熱によって全体として密度が小さくなります.そのために,軽い 伊豆・小笠原火山弧はフィリピン海プレートといっしょにマントルへと沈み込むこと ができず,沈み込まれる側である本州島と衝突してしまったわけです.伊豆半島は現 在も衝突を続けており,丹沢山地はそのために隆起していると考えられています.伊 豆半島が衝突して沈み込むことができないため,そこを固定点として東側のフィリピ ン海プレートは北東へ,西側のフィリピン海プレートは西側へ沈み込んでおり,いわ ば生き別れ状態になっています.このために,沈み込んだ両者の間には裂け目ができ ているという考えがあります.この裂け目はちょうど富士山の直下付近を通過してい ます.そのためにそこではマントルで発生したマグマが上昇しやすく,富士山直下の 地下に大量に溜まっているという見方もあります.富士山が日本列島では桁外れに大 きい玄武岩質の火山であるのはそのためかもしれません.いずれにしても,富士山が 置かれている場所が,日本列島ではここにしかない大変ユニークな場所であることだ けは間違いありません.伊豆半島付近では,火山弧と火山弧がT字型に衝突していま す.このようなタイプの衝突帯は現在の地球上ではきわめてまれなのです.北上山地 や阿武隈山地の一部には中生代という古い時代に付加した古い陸塊が含まれてはいる のですが,現在も衝突帯であるというわけではありません. (11/12/02) 高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科) -- |