火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #5414
Q はじめて質問します。
私は宮崎県の出身です。理科の教師を目指していることもあり、大学のお正月休み中に前から気になっていた地元の“大崩山・行縢山・可愛岳”の形成について調べることにしました。しかし、地元の図書館に行ってもそれほど多くの資料もなくインターネットで調べても得たい情報が得られません。ぜひ、私の質問にお答え下さい。

1.花崗岩と花崗斑岩とはどうちがうのですか?

2.花崗岩の貫入により大崩山が形成されたのち、花崗斑岩の貫入によって行縢山・可愛岳などの環状岩脈(リングダイク)が形成されましたが、その形成について調べていたら1種のカルデラであると出てきました。阿蘇のカルデラは負の重力異常により形成されたカルデラであるが、大崩山のカルデラは正の重力異常により形成されたカルデラで“バリアス式カルデラ”とも呼ばれるとも書かれてありました。このバリアス式カルデラとは一体どんなものなのか、またどのように形成されるのかいまいち分かりません。あるものにはカルデラの落下を引き起こした円筒形の断層に、マグマが進入して環状岩脈ができたとも書かれてあり、一体どうなっているのかさっぱりです。

3.大崩山はすべて花崗岩ではなく、途中8合目辺りから四万十地層がありますが、これは四万十地層群が始めあった所に花崗岩が貫入したからこうなったと考えてよいのでしょうか?

ぜひ、教えてください。 (01/12/04)

さくら:高校生/大学生:18

A まず入手可能な日本語の文献として以下のものがあります.

(1) 高橋正樹著「花崗岩が語る地球の進化」シリーズ自然史の窓7 岩波書店(1999) 147P:一般向けの本で第4章「花崗岩が生まれた現場を歩く」で大崩山花崗岩の解説がしてあります.大きな図書館に行けばこのシリーズの本は置いてあ ると思います.
(2) 奥村公男・酒井 彰・高橋正樹・宮崎一博・星住英夫 著 地域地質研究報告 5万分の1地質図幅「熊田地域の地質」工業技術院地質調査所(現・産業総合研究所) (1998) 100p:詳しい地質解説と地質図がついています.

質問1:花崗岩は粗粒等粒状(鉱物の粒が粗くて大きさが同じくらい)ですが,花崗斑岩は大きな結晶(斑晶といいます)とその間を埋めたやや細粒の結晶 (石基といいます)からなります.斑状なので花崗斑岩といいます.花崗岩とくらべて,より急冷した条件下でマグマから結晶化した岩石です.
質問2:カルデラは地形的な用語なので,地形的にへこんでいないと使えません.カルデラのうち陥没カルデラの仲間にバイアス(Valles)型カルデラ というのがあります.バイエス型とよぶこともありますが,もともとスペイン語なのでバイアスが最も原語読みに近いと思います.バリアスではありません. バイアス・カルデラはアメリカ合衆国西部にある大規模なカルデラで,環状の割れ目に沿ってカルデラの内側がピストンシリンダーのようにスポッと抜けたよ うに陥没したカルデラであると考えられています.環状割れ目からは陥没の後に溶岩ドームが噴出して,やはり環状に並んで配置しており,地下では環状の岩 脈を形成していると考えられています.こうしたカルデラが後の時代に隆起浸食を受けると,山岳地帯にカルデラの地下構造が露出するようになります.こう したカルデラの地下構造は陥没構造はありますが全体としては隆起して山を作っているので,地形的なカルデラとはよべません.そこでこうしたものをコール ドロンとよんで区別することが一般的です.大崩山岩体の環状岩脈はこうしたコールドロンの一部を構成しています.バイアス型カルデラは負の重力異常を示 しますが,過去のカルデラであるコールドロンはカルデラを埋めた軽い堆積物が失われていることが多いので,必ずしも負の重力異常を示すとは限りません. ただし,現在の大崩山花崗岩付近は負の重力異常を示しています.これは花崗岩体が周囲の岩石よりも軽いためと思われます.大崩山岩体では,最初に花崗斑 岩が貫入し,最後に花崗岩体が貫入しています.花崗斑岩の環状岩脈が後ではありません.
質問3:その通りです.よく観察していますね.大崩山では花崗岩体の水平な天井部がよく残されています.四万十層の堆積岩中に頭部の平たい花崗岩体が貫 入したためにこうした構造が残されているのです.ここでも堆積岩よりも花崗岩が後から貫入しています.
 (1/13/04)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp