火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #5912
Q 理科で、姶良火山のことを少しだけ学習しました。それには、「北海道にも火山灰が何センチか積もった。」と書いてありました。どれぐらいの規模の噴火でどんな形の火山だったんですか。(桜島のような形だったんでしょうか)また、姶良山の山の高さは、どのくらいだったのか教えてください。 (09/18/05)

サウジアラビア ジッダ在住:小学生:12

A 姶良火山は,約2万5千年前の旧石器時代に鹿児島県の錦江湾(こんこうわん)の北部にあったと考えられている火山です。そこで2万5千年前に巨大な噴火が起きました。その噴火では,最初に地上数万メートルに達する噴煙を噴き上げた後,火砕流と呼ばれる高温のマグマのかけらと火山灰とガスが混ざり合って高速で地表を流れる噴火が起きました。その火砕流は入戸火砕流と呼ばれ,鹿児島湾周辺では,立派なシラス台地を作っています。入戸火砕流は噴出源から90km 以上も地表を走り,木をなぎ倒して,地表を焼き尽くしました。その噴火の時に上空に舞い上がった火山灰が偏西風に乗って日本中に広がりました。九州中部で約50cm,中国・近畿地方で約20cm,関東地方で約10cm,東北地方で約5cmの火山灰層が見つかっています。北海道でも約5mmの火山灰層があるといわれています。日本中を灰まみれにし,日本海全域,朝鮮半島,東シナ海,太平洋四国海盆をも広くおおうほどの噴火でした。この火砕流噴火で約350立方キロメートルの火山灰が噴出しました。噴出物量によって噴火の規模を段階的に表す火山爆発指数(VEI)でこの噴火の規模を示すと,VEI=7となり,日本で最大級の規模になります。この巨大噴火のため,地下のマグマ溜まりが陥没して地表に直径約20kmのカルデラと呼ばれる凹地が形成されました。そのカルデラの南の縁に新しく生まれたのが桜島火山です。カルデラを形成する噴火は,噴出源が凹地になってしまうために,噴火前の火山体は完全に消滅してしまっていますし,姶良は旧石器時代の噴火ですから記録などは残っていません。現在残されているカルデラ縁では,昔の火山体を物語るような堆積物は見つからないので,直径20kmの大きな火山体があったとは考えられません。残念ながら姶良火山は,その存在は想像されるものの,実体は不明なのです。アメリカのクレーターレイクカルデラでは,カルデラ以前の火山体がよく復元されていますが,火山体が全くなくなってしまっている場合は,復元が困難です。よい方法を見つけて復元できればいいなと思っています。
(10/20/05)

鎌田桂子(神戸大学・理学部・地球惑星科学科)

May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp