NPO法人日本火山学会は,現在約1,200名の会員が所属し,火山に関連する学術研究の発展とその知識の普及を図ることを目的として活動しております.また最近は,火山災害の軽減に寄与するための活動も強めております.その一環として,多くの方々に火山についてより良く知っていただくとともに,噴火の際の災害を軽減するのに役立てていただきたいと考えて,公開講座を各地で開催しております.本年度は,火山学会の秋季大会が静岡市で開催される機会に,富士山を眼前に望む当地において,表記のテーマで第11回公開講座を行うことにしました.
皆様ご存知のように,富士山では1707年に大規模な宝永噴火が起こりましたが,その後300年近く静穏でありました.ところが2000年11月に,北東山腹の地下15km付近を震源とする低周波地震の活動が過去20年間で最大となり,翌2001年4月から5月にかけて再び活発になりました.幸い,地殻変動の変化など噴火が切迫していることを示すデータは観測されず,その後は低周波地震の活動も平常レベルに戻りました.火山地域で発生する深部低周波地震は,必ずしも噴火に結びつくわけではなく,その発生メカニズムについてもよくわかっていませんが,地下のマグマ活動と密接な関連があると考えられています.いずれにしても,富士山が活火山であることをあらためて一般に知らせた事件でありました.
これを機会に,消極的であった周辺の自治体でも富士山のハザードマップを整備し,将来の富士山の噴火災害に備えようとする動きが生まれ,内閣府の主導によりハザードマップ検討委員会が活動を開始しました.また,富士山の過去の噴火履歴,低周波地震の発生とマグマ蓄積のしくみ,被害予測と火山情報のあり方,などの解明を目的とした総合的な調査研究が実施されました.
本日は,最初に,ハザードマップの検討および総合的な調査研究をそれぞれ主導されたお二人の講師に概要を紹介していただき,その後,富士山の災害予測と防災について,関連分野の方々によるデイスカッションをしていただきます.限られた時間ですが最後まで聴いていただき,富士山の火山活動に対する理解を深め,また火山防災に役立てていただければ幸いです.