日本火山学会は,火山に関連した学問を発展させ,その知識を普及させることを目指して活動してきました.現在,約1200名の会員がそれぞれの分野で活躍しています.火山灰や岩石を採取・分析しマグマの性質を調べる人がいます.火山性の地震がどのようなメカニズムで起きるかを観測とコンピューターを駆使して調べている人もいます.あるいは,火山ガスや温泉水の分析に取り組んでいる人もいます.いろいろな分野の調査や研究から火山の謎を少しずつ明らかにしてきました.それらの研究の成果の一端をわかりやすく一般の方々にお知らせし,火山現象について理解を深めていただくために,学会活動の一環として公開講座を開催してきました.平成3年に福岡市で雲仙普賢岳の噴火と火山災害について第1回公開講座を開催したのが始まりです.今回は第4回目として,秋季学術大会が信州大学で開催される機会に標記の題目で公開講座を開くことになりました.
周囲を美しい日本アルプスの山々で囲まれた信州は,中央部を「糸魚川一静岡線」と呼ばれる大きな地質構造線が南北に走り,地震や火山の活動が活発な地域です.1979年10月には御嶽山で水蒸気爆発が起こり人々を驚かせました.それに引き続くように,1984年9月には,御嶽山のふもとの王滝村でM6.8の「長野県西部地震」が起き,大きな災害が発生しました.日本の火山や地震の起こり方は信州を境に大きく変化しています.日本列島を東と西に2分するような位置に信州があることがわかってきました.
「北アルプスって何だろう」,「糸魚川一静岡線って何だろう」,「信州には火山や地震はなぜ多いのだろうか」という疑問は,日本全体に関係するような広域のテクトニクス(プレート・テクトニクス)との関連性の中で理解することの大切さが明らかになってきました.そのためには,目を広く地球全体に向けて,世界の中の日本,そして信州,という大きな視野から考えてみることが必要になります.このような意味をこめて「世界の中で掟えてみよう」という副題を付けました.
今回の公開講座は,信州の火山や地震に造詣の深い3名の講師の先生方に,それぞれの専門分野の研究の最前線をわかりやすく紹介していただく予定になっています.この講座が,皆様の火山や地震の仕組みについての理解の一助になり,ひいては,火山や地震についての防災意識の向上に役立つことを願ってやみません.