火山についてのQ&A |
≪前のQ&A≪ ≫次のQ&A≫
|
Question #6333 | |
Q |
授業でカンラン石について調べました。 教科書では、緑色でしたが顕微鏡で観察したカンラン石はオレンジ色でした。 学校の先生に色の事で質問をしたところ成分の率で色は変わると教えてもらいました。 けれど、どんな成分がどのくらいの率で何色に変わるのか知りたいです。 カンラン石の色の変化について詳しく教えて下さい。 (12/27/06) のだかん:中学生:13 |
|
A |
う〜ん,カンラン石がオレンジ色でしたか.私は今までカンラン石を含む岩石をいろいろ見てきましたが,岩石薄片(プレパラート)を顕微鏡で見て,オレンジ色に見えるカンラン石はあまり見たことがありません. 学校で使用したのはどんな顕微鏡でしたか? もし偏光顕微鏡だった場合,直交ニコル(クロスニコル)の状態で観察した時の鉱物の色は,実際の色とは関係ない「干渉色」になります.カンラン石は複屈折(鉱物の中を光が通る時に,屈折率の違う2つの光に分かれること)の程度が大きいので,干渉色は赤・青・緑・黄色などの派手な色になります.オレンジ色の場合もあるでしょう.この場合,岩石薄片をステージの上でグルッと回転させると,1回転の間に4回,90度ごとに暗くなるはずです.干渉色は,例えば雨の日に駐車場の水たまりに自動車からこぼれた油が浮いていると,油も水も無色透明なのに,表面には様々な色が現われますが,あれと同じ原理で見える色です. もし単ニコル(オープンニコル・平行ニコル)の状態または偏光板がない生物顕微鏡などで見たのにオレンジ色だった場合は,そのカンラン石は,火山が噴火したときに,溶岩や噴出物の中で酸化されて変質している可能性があります.そのようなカンラン石は,周辺部から黄色や褐色(オレンジ色の場合もある)の「イディングサイト」と呼ばれる物質に変化し,ついには全体が黄色〜褐色になってしまいます.この場合,中心部には無色透明のカンラン石が残っていることが多く,残っていない場合でも,周辺部と中心部で色の違いが見られる(中心部の色が薄い)ことが多いです. 上で述べたような場合以外,カンラン石は顕微鏡(単ニコル)で見るとほとんど無色透明ですが,肉眼で見るといろいろな色のものがあります.「カンラン」というのはオリーブのことで,英語ではカンラン石のことを「オリビン」と言います(ただし,中国の「カンラン」とヨーロッパの「オリーブ」とは,本当は別の種類の木だそうです.名古屋圏などではキャベツのことを「カンラン」と言うそうですが,キャベツの色からついた名前ではありません.また,宝石名としては「ペリドート」と言います).従って,カンラン石にはオリーブ色(緑色)のものが多いのですが,上で述べた「イディングサイト」になっているものは黄色〜褐色に見え,鉄が少ないカンラン石は灰色に近いものもあります.隕石の主成分もカンラン石ですが,隕石中のカンラン石は真っ白のことがあります.隕石の場合,カンラン石はかなり鉄を含んでいるのですが,宇宙空間は地球上に比べると酸素が少ないので,鉄が還元されて色が消えているのだと思われます. 同じ物質でも,色はいろいろな要因で変化します.色に惑(まど)わされないように気をつけて,色の変化を楽しんで下さい. (12/28/06) 石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科) |