火山についてのQ&A |
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Question #68 | |
Q |
もう既に、質問されたことがあるのかもしれませんが。
桜島の噴火時にいつも不思議でなりません。一般的には、
地下のマグマ溜まりからエネルギー(溶岩?)がこみあげて、
噴火すると理解しています。しかし、例えば溶岩がこみ上げてくるのであれば、
噴火したときに必ず火口低に溶岩がくるとおもうのですが、大体は
噴煙を黙々と上げるだけです。
質問は、マグマ溜まりでのマグマから、どのような物理過程を経て、
噴煙のみの形へ変化するのでしょうか。「マグマ溜まりには、噴煙の
元となるガスだけが貯まっているのですよ」という話しなら理解できるのですが
そうではなさそうですし。
よろしくお願い致します。
(3/18/98) |
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A |
ご質問ありがとうございます.鹿児島にお住まいの方は,実際に噴火をご覧 になりながら地下の現象に思いを巡らすことができるのですね.ときどき羨ま しくなります. さて,マグマ溜まりのマグマが噴煙に変化する過程を,簡単に説明してみま す.まず知っておきたいのは,マグマは単なる液体ではなく,その中にガスを 含んでいるということです.ビールやコーラを思い浮かべてください.ビール は炭酸を含んでいますから,急に圧力を低下させると(たとえば急に栓を抜く ととか)発砲して中身がビンの口から溢れ出てきますよね.噴火はそれに似て います. ガスを含んだマグマが地下から上昇してくると,発泡(はっぽう)という現 象が起こります.この発砲は,主にマグマが上昇してくる過程で圧力が低下す ることで起きるのです.発砲したマグマがさらに上昇すると,岩片(火砕物と いう)とガスの混合気体ができます.この気体はさらに速度を増して火口から 噴出し,噴火となります.噴煙柱は,噴出した高温の混合気体が周囲の空気を 取り込みながら上昇することによって形成されるのです. マグマはこのようなプロセスで噴煙となります.ですが,このプロセスはと ても複雑で,簡単なモデルでは実際の現象はなかなか説明できません.一口に 噴火と言っても,火山灰や軽石を噴出する噴火,爆発的な噴火,溶岩流を出す 噴火など様々です.その理由は,マグマの組成,温度,マグマの中にもともと あるガスの量,マグマ溜まりの深さ,マグマが上がってくる火道の大きさ,そ の上昇速度など,噴火様式を決める要素はたくさんあり,それらが火山ごと に,また噴火ごとに異なるからだと考えられています. ご質問に帰ると,例えば,ガスをあまり含まないマグマがゆっくりと上昇 し,粉砕されずに火口から出てくれば,それは溶岩流になります.噴煙柱をつ くる噴火との違いは,なんとなくイメージできるでしょうか? (3/19/98) 西村裕一(北大・理・有珠火山観測所)
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