お答えします。
以下に火山が人間のやくにたっている例を、大切な順にいくつか出します。
1)湧水
降水量(雨が降る量)を比べると、火山の中腹から上の方がそのふもとより多い
ものです。でも、火山の中腹より高いところに登ると水が流れているところがあり
ません。それは火山に降った雨が全部地面にしみこんでしまうからです。火山はす
きまのおおい溶岩でできていますので、砂場につくった山と同じぐらい水がしみこ
みやすいのです。このようにしてしみこんだ水が地下をふもとめがけて流れて、ふ
もとの溶岩の切れ目から流れ出します。
これが火山のふもとに多い湧水のすがたです。いわば、天然の浄水装置とでも
いったらよいのでしょうか。
この湧水は豊富でよほどのことがない限り枯れることがありません。どんなに日
照りの年でも枯れることはありません。そして温度も一定です。ふもとでくらす
人々はこの水をつかって暮らしています。この水こそが人間が暮らしてゆく上でな
くてはならないものです(水がないと本当にこまりますよ)。これ以上の「やくに
たつもの」はないのではないでしょうか。
2)温泉
火山のまわりには、かならずといっていいほど温泉があります。温泉につかっ
てからだとこころの疲れをいやしたり、けがを治したりすることがあります。温泉
でたまごをゆでたり、料理をすることもあります。そればかりか、温泉をほりあて
ると、お金がもうかることがあります。
3)軽石
ある種の火山のまわりには軽石が出ます。この軽石は切り出されて、入浴用と
して町で売られています。この軽石がざらざらであることをつかって、人間たちは
風呂に入りながら ひじ や かかと の固いかわをけずって、きもちよく毎日を
くらすことができます。
4)風景
火山はたいてい特徴のある格好をしています。そしてそのまわりには池や湖が
できることが多いです。そして、その中に豊かな植生と動物たちのくらしが包み込
まれています。このような舞台装置があると、人間の目には美しい風景としてうつ
ります。
日本の観光地の多くは火山の周辺にあります。富士山のまわりや桜島のまわりと
かが有名ですね。この風景でこころが休まるという役立ちかたもあります。
5)土
地方によっては、火山から出る火山灰がつもって出来た土があります。これら
の土は、水はけが良いという特徴があります。そのために、水はけが良い土地を好
む農作物(ネギやダイコン、キャベツなど)を作るのには絶好の場所になります。
嬬恋のキャベツ、関東平野の深谷ネギや鹿児島の桜島ダイコンなどは有名ですね。
こちらはおいしい方でやくにたっています。また、軽石を含む土が「鹿沼土」とい
う名で園芸用に売られていたりします。こちらはさし木をする時の必需品です。
さらにある種の火山灰が肥料の代わりになるということも知られています。
6)金属資源
火山は地球の中からいろいろな物質を運んできます。そして火山が噴火活動を
やめたあとに山がけずられてその内部が出てくると、そこには地球の内部から運ば
れてきた金属類の鉱脈が出来ていることがあります。金、銀、銅、亜鉛、スズなど
の金属類は昔々の火山のあとが鉱山になっている場合が多いようです。これも人間
の生活には欠かせないものです。そういえば、活火山で有名な阿蘇山で金脈がみつ
かったというニュースも過去にありました。
まだまだあります・・・。みなさんが呼吸している空気も水も、もとはといえば
昔の火山活動の結果として地球の中から出てきたものといわれています。でも、こ
のぐらいにしておきましょう。とにかく、火山が人間のやくにたっているのです。
(3/5/99)
筒井智樹(京都大学・理学部・火山研究センター)
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