A: ご質問が多岐にわたるので全部はお答えできませんが,ここでは,登山規制の
緩和についての情報をお知らせします.
Q:浅間山が一般を対象に入山許可がでるというマスコミの報道がありましたが、
実際にどこまで行けるのでしょうか?
A: 5月21日に検討委員会から答申があったのを受けて,小諸市,軽井沢町,御
代田町や佐久地方事務所,地元警察署などで構成する「浅間山火山対策会議」がこれ
から具体的な規制緩和策を論議し,結論を出すことになります.従って,まだ何も決
定されてはいませんが,いずれ,当地のマスコミで報道されると思います.
ただ,「浅間山登山規制調査検討委員会」の出した答申には,釜山の火口縁までの
緩和は盛り込まれていません.答申では,軽井沢登山口についてはこれまで通り,小
浅間山までとし,小諸登山口については,前掛山火口縁までとなっています.
Q:登山するとなれば、どこから登山開始するのがいいでしょうか。
A:おそらく,小諸口の浅間山荘から出発するのが最も易しいルートだろうと思います.
Q:登山しているときに浅間山を観察、観測する上でどういった場所、地点を
注目して登山すればいいでしょうか?
A:火山学的な注目点の詳細については,ほかの専門家のアドバイスに譲りますが,
ここでは,登山に際しての安全対策について述べます.
浅間山は最近10年間くらいは静かですが,過去には大変激しい噴火を何回もした
ことはおわかりのことと思います.最近では1973年にかなり激しい噴火があり,火砕
流も発生しましたが,この程度の噴火が起きるときは,その前兆をなんとかつかめる
のではないかという期待があります.しかし,その後の1982,1983,1990年の噴火で
ははっきりした前兆現象がつかめておらず,従ってこの程度の規模の噴火は確実に予
測することは出来ないだろうと思われます.
このたび,「浅間山火山対策会議」が登山規制の緩和を打ち出し,前掛山までの登
山が許されたとしても,小さい規模の噴火が前触れなしに起きて,登山者が危険にさ
らされることが無いとは言えません.すなわち,登山規制を緩和する自治体当局が,
はっきりと危険であることを認め,緩和区域に入る登山者はこのことをよく理解し,
「本人の責任において」入山してもらいたいことを述べた立て札を建て,また説明の
パンフレットを配布することになっています.
このような性格の登山規制緩和措置はこれまであまり例が無く,新しい事例だと思
われます.危険が幾分でもあるような状態にも関わらず,一般市民の登山を認める理
由は,無用の規制で登山を全面的に禁ずるよりも,かなりの程度に安全であると思わ
れる期間に登山して,火山をよりよく理解してもらうのが適当であろうと言う判断に
よるものです.このような規制の方法は,他の先進諸国でもよく見られますが,当事
者(登山者)自身が判断し,結果に対して責任を持って行動するという了解のあるこ
とが前提となります.もちろん,小諸市をはじめとする地方自治体は,登山道の整備
や安全施設の強化などは十分行うことが条件であり,また火山活動については気象庁
(軽井沢測候所)が詳しい監視・観測を行い,適時火山情報を発表することになって
います.
登山規制に関する情報については,小諸市(あるいは軽井沢町,御代田町)に直接
照会されるのがよいと思います.登山を計画される前に詳しい情報を入手されること
を強くおすすめします.
荒牧重雄(日本大学・文理学部)
Q:(登山する場合)往復に要する時間なども教えてください。
A:小諸側の浅間山荘あるいは車坂峠から出発して前掛山まで健脚で片道3時間半程
かかると思われます.
ただし車坂峠からの場合はアップダウンも激しいので,
時間に余裕をみることが必要だと思います.
また十分な登山の装備(防寒,非常食など)や天候の判断も必要です.
Q:登山しているときに浅間山を観察、観測する上でどういった場所、地点を
注目して登山すればいいでしょうか?
A:例えば次のような見どころがあります.
1)黒斑山の北東の通称Jバンドのあたりや前掛山から北方を見下ろすと,
天明3年の噴火の時に流下した鬼押出溶岩流がよく見えます.
2)前掛山から黒斑山の方を見ると,黒斑山の火口壁に見事な成層構造が見えます.
これは,黒斑山が活動後期に磐梯山のような山体崩壊を起こした跡で,
成層火山の内部構造を観察できます.
3)前掛山から釜山の方を見ると,釜山の斜面に無数の岩塊が散在している様子が見
えます.
これらは1983年噴火などの際に放出された火山弾です.
安井真也(日本大学・文理学部)
(5/25/99)
荒牧重雄・安井真也(日本大学・文理学部)
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