映画の中で噴火が始まった,ロサンゼルスのラ・ブレア タール池(La Brea tar
pit)は,実在のものです.タールとはコールタールのタール,つまり黒くて粘り気の
大きな石油のことです.ラ・ブレア タール池は,地下から染み出してきたタールが
窪みにたまってできた,石油の池なのです.映画の中でサーベルタイガーやマンモス
の像があったのを覚えていらっしゃいますか?ラ・ブレア タール池は,粘り気の大き
なタールに落ちて死んでしまった動物の化石が,大量に見つかることで有名なところ
です.
都市で噴火が起きたらという映画の発想としては面白いのですが,ロサンゼルスから
最も近い火山でも数百km離れていて,ロサンゼルスで噴火が始まるということは,ち
ょっと考えにくいですね.
地下鉄の中を溶岩が流れるシーンです.ハワイなどでは溶岩流が,溶岩自身でできた
チューブの中を冷えずに十数km流れることがあることが知られています.ですから,
地下鉄の中を溶岩が流れていくことはあり得ることかもしれません.ただ溶岩流は粘
性の低い玄武岩質の溶岩流でも,水よりはずっと粘り気が大きく,傾斜があまりきつ
くない地下鉄の中を,映画のように大きな速度で流れることはまずないでしょう.
「ボルケーノ」については,#404と#363もご覧になってください.残念ながら科学考
証という点ではちょっと気になる点が多かった映画です.
ここで映画を離れてみると,池や湖から噴火が始まることは特に珍しいことではあり
ません.火口は普通くぼ地になっていますから,水がたまっていることも多いので
す.ただ水があるとマグマと水が接触して,マグマ水蒸気爆発になることが多く,映
画のように噴水のように赤熱した溶岩を吹き上げることはあまりないでしょう.フィ
リピンには,タール火山という火山があります.こちらは同じタールでもTaalという
湖の名前で,カルデラ湖です.湖の中央に浮かぶ島の周辺では,何回も噴火が起きて
いて,激しいマグマ水蒸気爆発をおこすことで知られています.
(01/16/01)
川辺禎久(産業技術総合研究所・地質調査所)
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