火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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小中学生から多い質問

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

火山の形状と地形

溶岩円頂丘・溶岩ドーム(鐘状火山)・潜在円頂丘(潜在ドーム)


Question #92
Q 単成火山に特に興味をもっています。昨年夏、五島列島の小値賀島に 行ってきましたが今年は福江島を訪問しようと思っています。福江市 西南にはホマーテが8つ以上地図で認められます。この狭い地域に 海上(黒島、黄島等)もふくめて全てホマーテであるのはなぜで しょうか。 (6/18/98)

平木 英治:会社員:49

A
 福江市の西南ではなくて南東には,鬼岳を含む複数のスコリア丘が密集した 玄武岩溶岩からなる地域があります.御指摘の小値賀島も同様にスコリア丘が 狭い場所に密集した玄武岩火山の地域です.これらのスコリア丘は伊豆半島の 大室山と同じような単成火山です.単成火山は地殻が引っ張られている場所に よく出現します(質問42の小山さんの回答も参考にして下さい).福江島や 小値賀島にこのような単成火山が密集する理由は,五島列島周辺の地殻が部分 的に開いているためであると思います.なお,ホマテとは形の割に大きい 火口を持つ火山砕屑丘のことで古くに用いられた言葉ですが,アスピーテ・ト ロイデ・ベロニーテなどと同様に,現在の火山学ではほとんど使用しません. (6/20/98)

中田節也(東大・火山センター)


Question #260
Q 夏休みの地理の自由研究で北海道の火山について調べる事にしましたがあまり調べる資料がなくて困っています。 現在中学一年生です。北海道には現在活火山はいくつありますか?休火山、死火山はいくつありますか? 火山にもいろいろあるようですが楯状火山、鐘状火山、円錐火山はどう違うのですか?でき方が違うのですか? 北海道の火山と本州や九州などにある火山との違いは何ですか?最後に火山とプレート、地震についての関連性 に付いて教えてください。お願いします。もうすぐ夏休みが終わってしまいます!! (8/19/99)

佐藤みゆぽん:中学一年生:13歳

A 北海道の火山については築地書店のフィールドガイド「日本の火山(3)北海道の火 山(高橋・小林編)」が参考になるでしょう.北海道には気象庁が決める活火山が15 あります.知床硫黄山,羅臼岳,摩周,アトサヌプリ,雌阿寒岳,丸山,大雪山,十 勝岳,樽前山,恵庭岳,倶多楽,有珠山,北海道駒ヶ岳,恵山,渡島大島です.休火 山という言葉はすでに死語で使われなくなってきています.火山の一生を考えると 「休んでいる」との定義があまりに曖昧すぎるためです.円錐火山はほぼ成層火山の 意味で,溶岩と火山砕屑物が積み重なり,中心ほどうず高くなって円錐状になったも のです.楯状火山はハワイのように,山の高さに比べて広がりの大きい緩い傾斜の火 山です.粘り気の低い溶岩からなる火山の特徴です.また,鐘状火山という言葉は火 山の分野ではもはや使いません.溶岩ドーム(円頂丘)のように,粘り気のある溶岩 からなるお椀(お寺の鐘)を伏せたような火山に用いられていました.北海道と日本 の他にある火山では特に違いがありません.カルデラを作るような火山が多い点では 九州に似ています.日本の火山活動は,海洋プレートの沈み込みに大きな原因があり ます.また,プレートの沈み込みによって巨大地震が起きます.また,一旦できたマ グマが地殻を上昇する時に火山性の地震が起きます.特に噴火の前に火山性の地震が 多くなります.このことについてもっと知りたければ,図書館や学校の図書室で火山 の本や辞典を調べてみましょう.大きな本屋さんにも分かりやすい解説書がいくつも おいてあるはずです. (8/24/99)

中田節也(東大・地震研究所・火山センター)


Question #388
Q 先日受けた地学のテストで昭和新山は鐘状火山ということでした。
しかし、以前地理では火山岩尖ということで習いました。
そこでいろいろな書物を調べてみたのですが、地学関係の書物では鐘状火山、
地理関係の書物では火山岩尖ということになってしまいました。
地学と地理では定義の説明が違うのでしょうか?
またこの二つの違いはどこにあるのでしょうか? (01/26/00)

星河:高校生:17

A
 「鐘状火山」は溶岩円頂丘(溶岩ドーム)のことで,最近ではほとんど用いなくな っている言葉です.これはもともと釣り鐘のような形をした溶岩地形に対して用いら れた言葉です.それに対して,「火山岩尖」というのは,鳥のトサカや塔のように, 先が尖った形をなす溶岩地形に用います.後者は,ほとんど固結しかけた(粘り気の 高い)溶岩が火口に押し出されてできたものです.昭和新山はでき方だけから言うと 火山岩尖に近いものですが,昔の地表の堆積物を頭にそのままのせており,地上に露 出した溶岩部分がほんの一部です.昭和新山は火山学的に正確にいうと,潜在(せん ざい)円頂丘(潜在ドーム)というものです.地表までたどり着けなかった溶岩ドー ムというわけです.またまた用語が増えて申し訳ありませんが...(*_*;;)
 地学と地理で使う言葉が違うのは,残念ながら,「教科書」を執筆した先生や教え る先生に認識の違いやいくぶん誤解があるのだと思います.でも,地学・地理の地形 や現象に関する言葉の定義はあまり本質的なことではなく,最も端的な共通の言葉で ,観察される現象をほかの人にいかに伝達できるかという立場で設定されていると考 えて下さい. (1/26/00)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #870
Q 中学校で理科を教えています。
質問1;「二酸化珪素が多い岩石は流動性に乏しく、少ない岩石は流動性に富む」わけですよね。
したがって、流紋岩はきわめて流動性に乏しいと思うのですが、あの流紋は文字からすると流れた紋様となるのですが、
どういうことなのでしょうか。

 
質問2;普賢岳にしろ有珠山にしろ安山岩のドームだと思うのですが、粘性が高いからドームをつくるわけですよね。
マグマから水や火山ガスの抜けて、粘性を増しているのかなと思うのですが、とにかく溶岩ドームをつくるのは安山岩し
か聞かない気がします。最初にも述べたように、二酸化珪素の量からすれば、流紋岩がもっともドームを作りやすいと
思うのですが、聞いたことがありません。なぜ安山岩ドームばかりで、流紋岩ドームがないのでしょうか。

 教えていての素朴な疑問ですがよろしくお願いします。 (08/17/00)

地学大好きの先生:中学理科教員:40

A 質問1(流紋岩マグマは流動しにくいのになぜ流紋がある?)
 流紋岩の流紋は,もともと化学組成や発泡の程度,結晶度や色が違う,流れにくい マグマのかたまりが不規則に混在していて,それらが流動によって引き伸ばされ,縞 模様になったものだと思います.もし流れやすいマグマだったら,かきまぜると拡散 して混じり合ってしまい,流紋は残りません.例えばコーヒーに薄い牛乳を混ぜてか きまわしても,白と黒の縞模様にはなりませんね.コーヒーに濃いミルクを混ぜると ,最初は白と黒の流紋がはっきり見え ますがそのうち均等に混ざってしまいますね.しかし,白と黒のチョコレートを少し 暖めてかきまわし,均質になる前に冷やすと.きれいなマーブル模様のチョコができ ますね.粘性が大きく,なかなか混じり合わないことが,流紋が残る条件だと思いま す.流動しにくいからこそ,流紋があるのだと思います.

質問2(溶岩ドームをつくるのは安山岩マグマしかない?)
 確かに日本では安山岩の溶岩ドームが多く,流紋岩のドームは少いですね. 【理由の第1】は,そもそも日本には安山岩の火山が多く,流紋岩の火山が少ないた めです.「理科年表」の「日本の主な火山」には,北方領土の火山や寄生火山も含め ,199の火山について岩石の種類が示してありますが,その中で流紋岩(SiO2>70%)は わずか8個,デイサイト(SiO2=62-70%)が18個,玄武岩(SiO2<53%)が34個で,残りの 139個(70%)は安山岩(SiO2=53-62%)です. 【理由の第2】は,例として挙げられている普賢岳や有珠山の溶岩は,実は安山岩で はなく,デイサイトなのです.普賢岳の溶岩はSiO2=65%ですし,有珠の昭和新山の溶 岩はSiO2=69%で,流紋岩に近いものです.つまりドーム をつくる溶岩には,やはりSiO2に富むものが多いということです. 【理由の第3】は,流紋岩マグマは伊豆諸島の神津島・式根島や新島の南部のように 溶岩ドームをつくることもありますが,マグマの粘性が大きいために火山ガスの圧力 が高くなり,大爆発して火砕流や火山灰として周囲に撒き散らされてしまう場合が多 いということです.十和田,八甲田,姶良,阿多などのカルデラ火山がその例です. (8/18/00)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


Question #2294
Q 先日礼文島観光に行ってきました.そのとき「桃岩」という桃の形をした岩を遠くから見ましたが,その裏には高」というたまねぎの皮状に割れ目の入った丸い形の岩が露出していました.溶岩かマグマが冷えて固まったものだと思いましたが,崖になっていて近づけませんでした.実際あれはなんだったのでしょうが?どなたかご存知の方教えてください. (06/11/02)

ちたん:会社員:29

A 礼文島の桃岩は、御質問に書かれているように、マグマが冷えて固まったものです。 もう少し詳しく説明すると、粘性の高いマグマ(シリカに富むデイサイト質マグマ) が冷えて固まったものです。
 粘性が高いマグマが地表に噴出すると、お饅頭のような形のドームを作ります。こ れが溶岩ドームです。九州の雲仙普賢岳の噴火(1990-1995年)で形成された平成新 山や、北海道の洞爺湖の近くにある昭和新山、屈斜路湖にある硫黄山などが、有名な 溶岩ドームです。
 さて、礼文島桃岩のドームは、これらの溶岩ドームと少し異なります。普通の溶岩 ドームは、マグマが地表に顔を出してから成長しますが、桃岩はマグマが地表まで到 達しないで「地下」でふくらんで成長したドームです。桃岩の場合、正確に言うと「 地下」ではなく、「海底下」でした。
 桃岩ドームは、礼文島がまだ海の底だった頃(1300万年前)、浅海の底に堆積して いた泥や砂の中にマグマが貫入し、ドームの内側からふくらむように成長したことが 明らかにされています。ドームの形成・固結後、かなり時間がたってから、この地域 は隆起し、礼文島になりました。ドームのまわりの泥や砂は柔らかいので浸食され、 硬いドームだけが残ったのです。
 桃岩の「桃」の形はドームの外形そのものです。桃岩の西側(裏側)は浸食され、 ドームの内部(縦断面)がむき出しになっています。「丸い形の岩」はドームを輪切 りにした面です。この面に出ている「たまねぎの皮」は、ドーム内部の流理構造(マ グマの流れでできた縞模様)です。このように内部構造がむき出しになっているドー ムは世界的にめずらしく、地質学的に貴重です。
 (06/13/02)

後藤芳彦(東北大学・地球工学) --


Question #2758
Q こんにちは。火山の分類についてお伺いします。日本の中学校では溶岩の粘性によって楯状、成層、釣鐘状火山の3つに分類していますが、外国ではFissure, Shield, Dome, Ash-Cinder, Composite, Calderaなどに分けて教えられているようです。これらもまた溶岩の粘性による分類なのでしょうか?分類の基準とその種類について教えてください。 (09/27/02)

ナオッグ:教師:27

A こんにちはナオッグさん.火山の分類ということですね.

昔はもっぱら火山の地形だけで分類していました.例えばシュナイダー(1911)のコニ ーデ,トロイデといった分類は今でもマスコミや観光地の説明などで残っています. しかし今は表面の地形だけでは,その火山の成り立ちを必ずしも反映していないこと がわかってきたので,シュナイダーの分類は学術用語としては使われません.現在で は内部構造により注目した,成層火山,盾状火山などの用語が使われます.

盾状火山は粘性の低い,あまり爆発的噴火をしないマグマが,主に溶岩となって重な り,傾斜が緩やかな山体を作った火山です.ハワイが盾状火山の典型で,英語では Shield Volcanoです.一方,成層火山は粘性がやや高く,爆発的噴火による熱いマグ マのしぶき(火砕物)の割合が多いため,溶岩と火砕物の互層からなる傾斜の大きな山 体を持つ火山です.英語ではStrato Volcanoです.成層火山はスコリア丘(Scoria Cone, Cinder Cone)や溶岩ドーム(Lava Dome)などを火山体全体として含むことが多 いので,外国ではComposit Volcano(複合火山)と呼ぶことがあります.富士山や三宅 島など日本の火山の大部分はこの成層火山です.

釣鐘状火山というのは火山学用語では使われません.おそらく溶岩ドームのことだと 思いますが,粘性の大きなマグマが爆発的な噴火をすることなく地表に噴出してでき ます.有珠山の昭和新山や雲仙の平成新山が典型例です.マグマが地下を移動すると きは板状になって移動すると考えられていますが,この板状のマグマが地表に達する と,割れ(Fissure)噴火を起こします.粘性の低いマグマの噴火に多く見られます. 1983年の三宅島噴火がその例です.

カルデラ(Caldera)は,噴火や崩壊でできた大きな火口状地形のことで,おおよそ直 径1.6-2km以上のものをいいます.大量のマグマが爆発的な噴火で一気に噴出してで きたもの(例:阿蘇カルデラ)や,噴出物は多くないが地下でどこかにマグマが移動し てしまってできたもの(例:2000年三宅島噴火のカルデラ)などがあります.

これらの火山の形の違いは,どんな噴火様式で,どんな噴出物を,どのくらいの噴出 率で噴火するかで決まってきます.その噴火様式を決める大きな要因としてマグマの 粘性がある,と理解されればいいかと思います.なお,Q&Aの#3010にもありますよう に,自然は完全に分類できるものではなく,中間的なもの,複合したもの,例外的な ものが少なからず存在します.学校の先生にはマグマの粘性だけで一意に火山の形が 決まるわけではないということも,頭の片隅にでも記憶にとどめておいていただける と幸いです.
 (10/29/02)

川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)


Question #3010
Q 火山の種類で、問題集のまとめの部分に「成層火山」(例)富士山・雲仙岳 とありました。
テストで雲仙普厳岳は「成層火山」と書いたところ、「鐘状火山」が正解でした。どちらが
ただしいのでしょうか。雲仙岳と雲仙普厳岳はちがうのですか。 (10/19/02)

あきこ:学生:15

A
 火山をいくつかに分類することによって理解はしやすくはなるのですが、自然界に はどれに当てはまらないものや、どちらとも言いかねるものがでてくるのが普通で す。鐘状火山という言葉は現在では火山学的にはほとんど使いませんが、鐘(つりが ね)の形をした地形を持つ溶岩ドーム(溶岩円頂丘と同じ)のことです。教科書では 昭和新山がその例とされていると思います。成層火山は、溶岩と火山灰などが積み重 なって、ひとつの火口地域を中心としてできた円錐形の大型の火山のことです。富士 山や岩手山がその典型的な例です。
 雲仙普賢岳とは雲仙岳の山頂部を指し、雲仙岳という場合はもっと広範囲に山全体 を指すときに用います。出題者は山頂部(普賢岳)が溶岩ドームなので鐘状火山、雲 仙岳全体はどちらかといえば円錐形であるので成層火山と言いたかったのかもしれま せん。ただ、雲仙岳は典型的な成層火山とするのはよくありません。なお、「鐘状」 ということでは普賢岳よりはその東にある眉山の方がより近いでしょう。
 正直言って良い出題とは言えませんね。
 (10/20/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) --


Question #625
Q 箱根の駒ヶ岳は「溶岩円頂丘」となってますが山頂に火口があって地形図を見るとオタマジャクシ型の溶岩流を沢山流しています。円頂丘と言うと普賢岳の平成新山のように火口に栓をしてしまうものと思われますが実際には山頂に火口を持ちそこから溶岩を流している例も少なくないように思われます(日光白根の山頂溶岩や九重山など)。単純にこれについて考えるて考えるとまず粘性の強い溶岩が大量に吹き出してドームをつくりその後溶岩の粘性が低下してドームの屋根を破って溶岩流となった、と言うことが考えられるとおもいますが実際この様なことが起きているのでしょうか。

 また久住の三保山は溶岩円頂丘でありながら二重式の構造に見えます。これはどうやって出来ているのでしょうか (05/22/00)

アマンタジン:医師:25

A
 溶岩円頂丘(溶岩ドーム)と呼ばれている火山がじつは何個かの溶岩ドームがつみ 重なっているものだったり、山頂部だけが溶岩ドームで下の部分は違うタイプの火山 体だったりすることがあります。箱根火山の駒ヶ岳は3〜2万年前頃に厚い溶岩流や 溶岩ドームをつくる噴火を数回くり返して形成されたと考えられています。山頂部分 のみが溶岩ドームで、最後の噴火の時に火口を塞いで成長したものです。
 アマンタジンさんが駒ヶ岳で火口と思われたのは山頂部の細長い浅いくぼみのこと だと思いますが、火口にしては形は不明瞭で、ここから噴出物が出た証拠もありませ ん。溶岩の流れによる溶岩じわか、活動の終わりにマグマの一部が地下へ逆流したた めに溶岩ドームの表面が落ち込んでできたくぼみと考えられます。久住の三保山の場 合では一度マグマが逆流してくぼみを作り、再びマグマが上昇してきて中央の溶岩ド ームを作ったと考えられています。
 もちろん御指摘のように一度の活動の途中で溶岩の粘性が変化する可能性は十分あ ります。もともと粘性が違うマグマが上がってくる場合だけでなく、地上に噴出する ときのガス成分の抜け方や冷却のしかたなども影響します。また土台となる地形にも 左右され、粘性が同じでも斜面では重力の効果で流れやすくなります。 (6/03/00)

長井雅史(東京大学・地震研究所)


Question #3950
Q 初めまして。私は中年の内科の開業医です。
同じ質問が重複している可能性がありますが御容赦下さい。(前回送信されたのか否かが
確認できないためです。このページの初心者のためです)

伊豆単生火山群の矢筈山のあたりの地形図をみていると、特徴的な凹地が多数認められます。(溶岩ドームの周囲に多いようです)この地形の正式名称と成因について御教示いただければ幸いです。
私見では谷や沢の出口に溶岩ドームが出現したためその奥の谷間が凹地になったのではと考えています。

重複していたら申訳ありません。何十年も疑問におもっていた問題ですので宜しくお願いいたします (05/01/03)

河路晃一:内科の開業医:47

A お問い合わせありがとうございます.マニアックな質問と鋭い洞察力に驚きました.

まったくご明察の通り,矢筈山溶岩ドームとその北西側に隣接する孔ノ山(あなのや ま)溶岩ドームのまわりにある凹地の基本的な成因は,「谷や沢の出口に溶岩ドーム が出現したためその奥の谷間が凹地になった」で結構だと思います.ただ,詳しい現 地調査がおこなっていないため,一部の凹地は溶岩ドーム出現の際に小規模な水蒸気 爆発を起こした跡かもしれません.

ちなみに,孔ノ山のさらに北西側に,2万5000分の1地形図で578mの独立標高点が書 かれている凹地があります.この凹地(孔ノ窪,あなのくぼ)は,隣接する溶岩ドー ム群と同じ時期に水蒸気爆発でできた火口で,小規模な溶岩流も流出しています.

これらの溶岩ドーム群と火口は,東伊豆単成火山群(伊豆東部火山群)の一部であ り,およそ2700年前に起きた割れ目噴火にともなって生じたものです.東伊豆単成火 山群の詳しい噴火史については以下のサイトを御覧ください. http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/Izu/ItoShishi/ShishiKen1.html

なお,溶岩ドームが谷をふさいで作った凹地形をさす一般的な名称はないように思い ます.
 (05/02/03)

小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学教室)


Question #4109
Q 授業で有珠山の2000年噴火について調べているのですが、2000年噴火で潜在ドームが形成されたといえる根拠は、単純に、マグマが地表まで出てこなかったからということでいいのでしょうか?それに具体的にその潜在ドームが形成された場所は、どこにあたるのでしょうか? (07/27/03)

基礎から勉強したい:大学生:18

A
 潜在ドームとは,粘性の高い(ねばりけのある)マグマが地下の浅いところまで上 がってきて地盤を隆起させた(持ち上げた)ものの,地表までは顔を出さなかったも のを言います.従って,次のような観察事実があれば潜在ドームと考えてよいでしょ う:(1) 噴火活動に伴ってドーム状の隆起地形ができた;(2) その付近で噴気や温泉 などの地熱活動が見られるようになった(浅いところにマグマが上がってきた証 拠).有珠の2000年の活動では実際にこれらの現象が見られましたので,潜在ドーム が形成されたと考えられています.なお,もしこうした隆起地形からマグマ(溶岩) が顔を出せば,それは溶岩ドームと呼ばれますが,昭和新山はその有名な例の1つで す.
 2000年噴火の潜在ドーム(虻田新山)の出来た場所は,道央自動車道の虻田洞爺湖 ICから北東に1kmほどの所の有珠山西麓です.ここは,2000年噴火で繰り返し爆発の 起こった西山西麓火口群の場所に当たっています.現在この場所は公園として整備さ れ,火口や噴気,隆起地形などを間近に観察できる観光スポットとして多くの観光客 が訪れるようになっています.
 (08/18/03)

東宮昭彦(独立行政法人・産業技術総合研究所・地質調査総合センター)


Question #5333
Q 島根県に在住している者です。
島根県の西部と東部の境目辺りに、大江高山という
大昔の鐘状火山群があるのですが、その山体を見て
ちょっとした疑問がわきましたのでお聞きします。

大江高山を構成している山のひとつに、二段重ね
になっている山をよく見かけるんですが、これは
最初にできた山の上に新しい山ができた、と考えて
もいいものなんでしょうか?
そう考えると、雲仙普賢岳の溶岩ドームのように
崩壊して、きれいに二段重ねの山にならないと
思うんですが。 (11/28/03)

おき3号:社会人:29

A 大江高山では,溶岩ドームの周辺には火砕物(一部は崖錐や山体崩壊物,土石流堆積物)がこ んもりとした山をつくっており,それらを押しのけて粘性の高いデイサイト溶岩(雲仙普賢岳と似ている)がせり上がった(貫入した)ので,「二段重ね」 状態になったものです.
 (12/01/03)

山内靖喜・沢田順弘(島根大学・総合理工学部・地球資源環境学科)