身近の火山:九州・南西諸島
霧島山・韓国岳・高千穂峰・御鉢 |
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Question #55
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Q |
しばらく前に霧島の韓国岳に登山しました。台風19号通過後で火口底に池ができているとの報道がありましたが、すでに消失していました。また、すぐとなりの火口湖である太朗池は神秘的な水を湛えていました。
このように、同一の火山群であるのに、火口湖のできる火口とできない火口があるのは、どうしてかお教えください。
(11/16/97)
村松 成高:会社員:33
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A |
火口湖ができるためには,火口底が地下水面よりも低い必要があります.霧島
火山は火口湖がたくさん見られる火山として有名で,地下水面は全体に高いよ
うです.しかし,個々の火山体の地下水の状態は,その内部構造によって異な
ってくるので火口湖のある火山やない火山が生じます.台風19号のあとに韓国
岳(からくにだけ)の火口底にできた「池」は,大浪池(おおなみいけ)の
「池」とは性質の異なる,「大きな水たまり」のようなものと言えます.
(11/18/97)
井村隆介(鹿児島大・理)
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Question #49
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Q |
質問事項は2点ありますので、お願いします。
1.群馬県の榛名山は古墳時代に大規模な噴火活動を行い、当時の人々に
大きな被害を与えたとのことですが、、
その当時の噴火の規模はどれくらいだったのでしょうか?たとえば浅間山の天明噴火と
同等レベルだったのでしょうか?教えて下さい。
また、榛名山が再噴火することはあるのでしょうか?
2.年に1度、火山に登山します。今年は霧島山を縦走しました。旧霧島神宮跡から高千穂の
お鉢へ行く途中で、赤レンガ色の軽石が、登山道にたくさんありましたが、これらは直接噴火で
降下してきたものか、雨などの流水で溜まったものかどちらでしょうか?
また、霧島神宮が噴火で火災を起こし、移転するまでの影響を起こすような噴火は、どういった
規模の噴火だったのでしょうか?
(10/15/97)
火山研究サラリーマン:会社員:38
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A |
質問1:榛名山は古墳時代に大きな噴火を2回起こしており,古い方から,FA
(榛名二ツ岳渋川)の噴火,FP(榛名二ツ岳伊香保)の噴火と呼ばれていま
す.これらの噴火によって埋まってしまった古墳時代の遺跡の発見によって,
榛名山は1991年に活火山に指定されました.FA・FPの噴火と浅間天明噴火につ
いて,私は詳しく調査したことがないのですが,群馬大の早川さんによると,
その規模は彼の提唱した噴火マグニチュード(M)でFAがM=4.9,FPがM=4.8,
浅間天明がM=4.8だそうです(早川,1994).榛名山の直下ではときどき小さ
な地震が観測されていますので,今後も噴火する可能性があると考えてよいの
ではないでしょうか.
質問2:御鉢の登山道で見られる赤レンガ色の軽石(白色や黄色でない軽石をス
コリアと言います)の大部分は,今から750年くらい前の御鉢の噴出物です.
登山道周辺は荒れてしまい,雨などでスコリアが少し移動してしまったりして
いますが,もともとは噴火によって空から降ってきて堆積したものです.質問
にある旧霧島神宮跡は高千穂河原にある古宮址のことだと思いますが,実は霧
島神宮の前身はこの古宮址の場所に来る前には高千穂峰と御鉢の間の鞍部にあ
ったそうです.その宮は10世紀の噴火で焼失し,12世紀になって古宮址あとに
移されたと伝えられています.その後,この古宮址に建てられた宮も先のスコ
リアを噴出した13世紀の噴火によって再び焼失し,15世紀になって現在の地に
移されたそうです.神社を焼失させた13世紀の御鉢の噴火は,霧島火山の有史
時代の噴火では最大のものでした.
(10/15/97)
井村隆介(鹿児島大・理)
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Question #102
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Q |
5月に霧島山高千穂峰を登山し、天候不順のため御鉢火口までしか行けなかったので、7月に再度挑戦し、高千穂峰山頂まで行きました。
御鉢火口の縁を歩いていて気がついたのですが、スコリアの堆積が赤い部分と黒い部分とではっきり違いが見受けられます。背門丘側の方が黒いスコリアが多いのはなぜでしょうか?
高千穂峰は、成層火山の山頂にあった火口が溶岩ドームで覆われているとのことですが、御鉢火口は、この溶岩ドームのためにマグマが高千穂火山の弱線上に噴火したと考えていいでしょうか?また、火山学的に高千穂峰の溶岩ドームで覆われた火口が噴火することは将来的にあるのでしょうか?
御鉢火口直下の登山道に赤いスコリアに混ざり少し緑灰色の硬い岩類が見受けられますが、私の感では溶岩流に思えるのですが正解ですか?
少し、長くなりましたがよろしくお願いします。
(7/12/98)
火山研究サラリーマン(北陸在住):会社員:39
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A |
ご質問には「背門丘の方が」とありますが,どこと較べられているかがわか
りませんので,十分にお答えできませんが,以前お答えしました(Question
#-78)ように,スコリアの赤/黒は含まれる鉄の酸化の状態によります.一般
には酸素が十分にある状態でゆっくりと冷えると赤くなります.大きなスコリ
ア粒子の中には,(空気に接していた)外側が赤く,(酸素がほとんどない状
態で冷えた)中心部が黒いものが見られます.
また,厚いスコリア層では地面と大気に接した下部と上部が赤く,その中央部
が黒いという事もあります.背門丘は御鉢火口の東側ですね,どのような状態
でスコリアが堆積したか考えてみて下さい.
高千穂峰に溶岩ドームという「栓」があったために御鉢が現在の位置にでき
たかどうかについては,よくわかりません.ただ,高千穂峰の山群は,東から
二子石,古高千穂,高千穂峰,御鉢と,東西に並んだ4つの火山体で構成され
ており,その年代は東から西に向かって若いということがわかっていますの
で,「栓」が原因と考えなくてもよいのかも知れません.東西に並んだ火山列
からわかるように,このならびにマグマの出やすいところがあるようです.将
来,御鉢の西麓の高千穂河原に新しい火山ができるかも知れません.火口をふ
さいだ溶岩ドームを吹き飛ばして噴火が起こるということは珍しいことではあ
りませんから,将来的に高千穂峰で噴火が起こらないとは言い切れません.
どこの登山道のどのあたりのことかわかりませんので,質問に直接お答えで
きませんが,高千穂河原から御鉢へ登山道の1200m付近より上では,登山道の
南側に大きな窪みがあって,それが御鉢の火口縁まで続いているのをご存じで
しょうか?実はこの窪みは溶岩の通った跡なのです.御鉢の火口縁は西側が最
も低く,溶岩はそこから溢れ出して西斜面を流下したのです.登山道はこの溶
岩流が作った堤防の上についています.登山道脇のこの窪みの中には厚さが1m
以下の薄い緻密な溶岩が見られます.
(7/17/98)
井村隆介(鹿児島大学・理学部)
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Question #1968
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Q |
3週間ほど前高千穂の峰に登った時、お鉢火口で噴気を見ました。お鉢火口は確か昭和に入って活動していないし、自分も何度も登っていますが噴気を見たのは初めてです。噴火の前触れなのか、あるいは最近噴気が始まったのか。最新の情報を教えてください。
(10/30/01)
近藤ジュンスケ:高校教諭:41
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A |
霧島は地熱活動の活発な火山群であちこちに噴気地帯があります.特に新燃
岳,御鉢,硫黄山の3つの火山は歴史時代に噴火した火山で現在も噴気地帯があ
ります.御鉢には火口の一番深い部分の壁と火口の中段のテラスになった部分に
噴気がでています.さらに,火口壁の上部の南側にも噴気が出ていて,なぜわざ
わざこんな所からガスが出るのか不思議に思えます.微弱な噴気は気温が高い場
合,ほとんど見えないため気がつかないことが多く,気温が低くなったり,雨上
がりに気がつくことが多いものです.地震活動などに特に異常は出ていません.
霧島にはこのほかにも大幡池で主として炭酸ガスが池の底からブクブクと出てい
たりします.
(10/30/01)
鍵山恒臣(東京大学・地震研究所・火山センター)
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