身近の火山:九州・南西諸島
米丸・住吉池・山川 |
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Question #94
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Q |
鹿児島大学の井村先生にできればおたずねします。実は私も鹿児島大学
法文学部(昭和46年卒)です。よろしくお願いします。
質問ついでにもう少し教えて下さい。
(1)指宿の近くの成川はマール、とありますが噴出物は残っていますか?
地図で見ても地形がよくわかりません。
(2)山川港は伊豆大島の波浮港と同じ成因でしょうか?
爆裂火口跡と覚えています。
(3)加治木の西の方にある住吉池、米丸もマールですが、噴出物は
ありますか?
(6/24/98)
平木 英治:会社員:49
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A |
そうですか.開かれた大学を目指しておりますので,鹿児島においでになるこ
とがありましたら,お立ち寄り下さい.さて,ご質問にお答えいたしましょ
う.
(1)成川マールはきれいな円形の火口を残していませんが,そこから出たベー
スサジ堆積物が指宿市の西部に分布していることが知られています.ベース
サージ堆積物中の様々な堆積構造から,成川付近から来たことがわかるので
す.この噴火は池田湖を作った池田火砕流とほぼ同時(5000から4500年くらい
前)に起こったものです.
(2)山川港も波浮港も,上昇してきたマグマと海水が反応して激しい爆発を起
こして作られた火口地形です.爆裂火口の定義は研究者によって違うようです
が,私は出てきたマグマよりふきとばされた既存の岩体の量が多い,既存の岩
体の上に開いた火口について爆裂火口と言ってはどうかと思っています.
(3)住吉池,米丸のマールの噴出物はその周辺でベースサージ堆積物が見られ
る他,米丸マールの火山灰は東南東に約30km離れた福山町の遺跡でも見つかっ
ています.住吉池,米丸マールの噴火はいずれも7500年くらい前に起こったと
考えられています.
(7/3/98)
井村隆介(鹿児島大学・理学部)
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Question #201
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Q |
鹿児島県の加治木町の近くに、住吉池と米丸という、マールがあります。
これらのマールの霧島山と姶良火山との関連、噴出時期、成因につき教えて下さい。
(3/17/99)
平木 英治:会社員:50
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A |
以前にも住吉池・米丸マールの噴出物とその年代についてお答えしたことがあると思
います(Question#-94).これらのマールは,霧島火山と姶良火山の間にあります
が,実際のところ両火山との関連についてはよくわかっていません.米丸・住吉池マ
ールは地形的に見た姶良カルデラ縁の外側に位置しますが,姶良火山の側火山的なも
のかもしれません.付近には(時代は古くなりますが)火山の痕跡(貫入岩)がたく
さん見られます.マールの成因についてはQuestion#-36をご覧いただくとして,住
吉池・米丸マールが噴火した7500年前という時代が,今よりも海水準が2〜3m高かっ
た(いわゆる縄文海進)時代であることが重要です.現在は陸地になっている米丸・
住吉池付近まで海が進入したことによって水蒸気マグマ噴火が起こり,これらのマー
ルをつくったと考えられています.
(3/24/99)
井村隆介(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)
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Question #2913
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Q |
先日 鹿児島県姶良郡蒲生町の米丸地区と住吉池が火山として指定される
と新聞で知りました
住吉池は火山の火口あとだと言う事は知っていましたが
米丸地区が火山の火口跡とは思いませんでした
今後火山活動はどのように起こるのか
危険性など教えていただけませんでしょうか
親戚がたくさん住んでおり実家も近くなので心配です
(10/13/02)
めりけんこ :会社員:31
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A |
気象庁では,活火山の定義を「噴火記録のあるもの,または,噴気活動が活発なも
の」というものから,「約1 万年以内に火山活動があったと思われる火山」とする改
訂作業(2003年2月を期限)を行っています(Question#-2320などを参照して下さい
).「噴火記録のあるもの」というのは,「過去2千年以内に噴火したもの」と解釈さ
れてきましたので,1万年前から2千年前の間に噴火した火山が,今回の改訂で活火山
に加わることになります.鹿児島県で候補にあがっているのは,「米丸・住吉池」,
鹿児島湾海底にある「若尊(わかみこ,通称タギリ)」,「池田・山川の火山群」,
「口之島」の4ヶ所です.新たに活火山に加わると言っても,火山活動が最近活発に
なったからというわけではなく,過去に噴火があったという事実から指定されるだけ
ですから,今後の活動予測みたいなのは,特にはないと思います.
米丸・住吉池の7500年前の噴火活動については,このQ&AのQuestion#-94と201をご
覧いただくとして,この地域には,もう1ヶ所,青敷火山というのがあります(「日
本の第四紀火山カタログ」の火山データベースを参照して下さい).青敷火山の噴火
年代は,10万年くらい前とする説と30万年より古いという説があります.これらのこ
とから,この地域で起こる噴火の頻度は,それほど大きくないと考えられますが,い
かがでしょうか.
(10/21/02)
井村隆介(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)
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