火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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小中学生から多い質問

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

火山の形状と地形

カルデラ・コールドロン


Question #1829
Q 三宅島にアカコッコが戻ってきたと聞きちょっと安心しています。ようやく火山ガスの勢いも下火になってきたのでしょうか?
三宅島について二つ質問です。カルデラの種類には火砕流を伴うクレーターレイク型、大量の溶岩流出を伴うハワイ型、イエローストーンに代表される環状型、荒船山周辺のコールドロンなど幾つかのタイプがあり、三宅島のかつての八丁平カルデラや桑木平カルデラは伊豆大島とともに「ハワイ型」であると聞いたことがあります。しかし今回の噴火で出来たカルデラはほとんど溶岩を噴出してませんよね(よく逆噴火と形容されてましたが)。多分前例が無いことだと思うのですがこのタイプのカルデラを新たに「三宅型カルデラ」の様に新たに分類される可能性はあるのでしょうか。
次に現在も続く火山ガスの大量放出についてですがよく「火口直下にマグマが上がって来ていてマグマ溜まりと対流をおこしその過程でガスが放出されている」と聞きます。こういう現象はキラウエアなどの様に常に火口底にマグマが顔を出してるタイプの火山では起きないのでしょうか。(僕は他の火山に比べて三宅島の中央火道が極端に太いからこの様なマグマの対流〜火山ガス大量放出が起きてると考えてるのですが・・)
よろしくお願いします。 (07/31/01)

アマンタジン:医師:26

A
 三宅島の噴火活動が始まってから,もう1年が過ぎました.ヘリコプターから観察 していても,茶色く変色している木々から,緑の新芽が出ているところもあり,少し ずつですが元の姿を取り戻しつつあるようです.


 まず玄武岩質火山の山頂部に形成されるカルデラは,ハワイ型よりはキラウエア型 カルデラと呼ぶことが多いです.キラウエア型カルデラは,クレーターレイク型カル デラなどのカルデラ形成に伴う噴火の噴出量と,陥没量がほぼ見合うカルデラと異な り,噴出量より陥没量がずっと大きいことから,成因について議論ありました.
 さて今回のカルデラ形成は,三宅島では数千年に一度程度の比較的珍しい現象です が,他の火山で似たような事例が過去に観察されていなかったわけではありません. 例えば1924年のハワイ・キラウエア火山のハレマウマウ火口の陥没事件や,1968年ガ ラパゴス・フェルナンディナ火山のカルデラ形成事件などです.これらは玄武岩質火 山で地表への溶岩噴出量よりはるかに大きい陥没が,爆発的な噴火を伴って起きた例 で,今回の三宅島とよく似ています.
 これらのカルデラ形成事件では,いずれも地下側方へのマグマの移動が起きていた ことが知られており,それにより密度の大きな山頂部が陥没したという考えが有力で す.移動したマグマの大部分は地下にあり,地表には出てきていないので,噴出量と 陥没量が食い違うのも説明できるというわけです.今回の三宅島の噴火は,新たに三 宅型カルデラと呼ぶよりは,最もよく観測がなされている中で起きたキラウエア型カ ルデラ形成事件ということになると思います.


 次にマグマ対流による火山ガス放出モデルですが,おっしゃるように火道の実効径 がずっと大きいことが,今回大量の火山ガスを放出している原因と考えていいと思い ます.玄武岩マグマ程度の粘性の流体をぐるぐると移動させるだけなら,径3mの円筒 で大丈夫という計算があります.一方,対流させるには上昇したマグマの密度が大き くなる必要がありますが,これにはマグマからガスがどれだけ効率よく分離するかが 効いてきます.ガスの分離効率には火道の断面積が重要で,伊豆大島の例(一日数百 トンのSO2放出量)で計算した例では,実効火道径約9m強で対流しているとすると説明 できます.今回の三宅島では,放出量が伊豆大島の約100倍ですから,実効火道径は 10倍程度あることになります.陥没初期の変形せずに陥没している部分の大きさは少 なくとも径300m程度はありましたから,考えられない大きさではないと思います.
 (8/07/01)

川辺禎久(産業技術総合研究所地球科学情報部門)


Question #391
Q 以前群馬県南牧村の立岩へ登ってきたのですが,あの辺つまり西上州一帯は有名な妙義山や荒船山に限らず多数のギザギザの岩山が密集しているように思えます。妙義や荒船は第三期火山のなごりとよく言われますが、あれだけ岩峰が密集しているのをみるとあの辺一帯がひとつの巨大な火山だったのでは、と思われるのですが実際はどうなのでしょうか。
また立岩の登山口付近に『陥没の壁』というものがありましたがこれはどうゆうものなのですか。例えば西上州一帯がかつて巨大なカルデラ火山で、陥没の壁はそれの名残りとか・・。

 素人の勝手な推理でとんでもない大間違いをしてるかもしれませんが、よろしくお願いします (01/28/00)

yosiaki:大学生:24

A
 大間違いどころか御明察です。荒船山周辺は本宿火山性陥没地とよばれており、第 三紀後期中新世の一種のカルデラ火山の跡です。荒船山を東山麓の群馬県下仁田町相 沢付近から登ると、下から順にデイサイト貫入岩体→安山岩溶岩→安山岩質凝灰角れ き岩→湖成層(砂岩・泥岩・凝灰岩)→安山岩質凝灰角れき岩→安山岩溶岩→安山岩 質凝灰角れき岩→湖成層が(貫入岩を除いて)ほぼ水平に重なっています。最上位の 平坦な尾根は安山岩溶岩からなっており、三角点のある山頂は、デイサイト質溶結凝 灰岩から構成されています。荒船山が航空母艦のように山頂が平坦なのは、安山岩溶 岩が侵食に強かったためです。こうした地形のことをメサといいます。
 本宿コールドロンの大きさは直径が約10km強あり、多角形型の輪郭をしています。 ちなみに、カルデラとは火山性の凹地形ですが、かつて陥没したカルデラの中味が隆 起して現在は山になっているような場合、凹地形ではないのでカルデラとはよばずコ ールドロンと称することが一般的です。本宿コールドロンでは、最初にマグマ溜りの 突き上げによって地表が隆起し、その結果張力が働いて陥没が生じ、その後に陥没地 内にマグマが噴出して各種の火山岩類が形成されたと考えられています。こうしたタ イプのカルデラのことを本宿型カルデラとよびます。この地域は本宿型カルデラの模 式地なのです。最初にできた陥没地の周囲の崖の下には一種の崖錘れきが溜まりまし たが、この崖こそが『陥没の壁』に他なりません。長野県側から荒船山に登る場合は 、まずこの『陥没の壁』を越えてかつてのカルデラの中へ入って行くというわけです。 (2/7/00)

高橋正樹(茨城大学・理学部・地球生命環境科学科)


Question #2076
Q 拝啓 非常に楽しく、興味深く拝見させて頂いています。

日本では、北海道、東北および九州に形の分かるカルデラ火山が多いのですが、なぜ関東、甲信越にはそのような大規模な火山が少ないのでしょうか?(富士山、箱根、浅間などは別として)

あるいは、関東近辺の旧い地層に、火砕流の痕跡などは見出されているのでしょうか?
巨大噴火をキーワードに検索していて、ふとそう思いました。よろしくお願いいたします。


(01/09/02)

大石 直昭:会社員:45

A
 大規模なカルデラをともなう火山は,第四紀後期では東北地方の十和田火山以北お よび北海道と九州にしかみられません.この理由については火山Q&A No.2014でお答 えしましたのでそちらを参考にしてください.第四紀前期や鮮新世には,関東近辺に も大規模な珪長質火砕流の噴火が行われ,現在は溶結凝灰岩として所々に残されてい ま す.
 このうち保存のよいものとしては,栃木県最北部から福島県南部にかけて分布する 白河火砕流があります.白河火砕流は100万年前前後に噴火した大規模なデイサイト 質火砕流堆積物で,4ないし5枚の溶結凝灰岩からなります.福島県白河市から栃木県 芦野町に分布する溶結凝灰岩は石材として利用されており,白河石あるいは芦野石な どとよばれています.この白河火砕流の噴出源は,西方の福島県田島町周辺であると 推定されています.地形的なカルデラは認められていませんが,地質調査によって供 給源とみられる複数の陥没カルデラ構造がみつかっています.
 甲信越地域では,甲府北部や北アルプスの穂高岳周辺にもみられます.甲府北部の ものは600万年前とやや古いですが,東山梨火山深成複合岩体とよばれ,南北に細長 いコールドロン(カルデラ)とそれを埋積した溶結凝灰岩とそれに貫入した花崗岩か らなります.山の名前でいうと,乾徳山や小楢山がそれにあたります.穂高岳のもの は第四紀初期のコールドロンとそれを埋積した溶結凝灰岩およびそれに貫入した花崗 岩からなります.穂高岳滝谷に露出するこの花崗岩は世界的にみても数少ない第四紀 の花崗岩です.あの穂高岳が第四紀初期のカルデラ火山だったなんてご存知でした か?
 (1/29/02)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


Question #2014
Q 私は登山が好きでよく登っていますが、日本の火山をみてみると、九州南部と東北北部、北海道に巨大なカルデラを持つ火山が多いように思います。これには何か理由があるのでしょうか。よろしくお願いします。 (11/16/01)

みのむしころりん:中学校教員理科:44

A
 大型のカルデラは,数10からから数100km3にもおよぶ大量の珪長質マグマ(流紋岩 質やデイサイト質の珪酸成分に富むマグマ)がいちどきに噴出することで形成されま す.すなわち,地下に大型の珪長質マグマ溜まりが存在することが必要です.こうし た大型のマグマ溜まりに大量のマグマを溜めるためには,大量のマグマを短時間に生 成するか,少量のマグマを時間をかけて少しずつ溜めてやるかのどちらかのプロセス が必要です.1億円を手に入れるのに,宝くじで一発で当てるのか,長年かけてこつ こつ貯めるのかの違いです.大型カルデラの分布する,南九州や東北北部,北海道の 地下には,これらのどちらかの条件が備わっていることになります.
 一発で当てたのか,こつこつ貯めたのかをチェックする方法もあります.マグマの 長期間にわたる生成率を調べてみるのです.前者の場合には,大型カルデラ火山のマ グマ生成率は一般の火山よりも大きくなるはずです.マグマ生成率を直接知ることは 難しいので,マグマ噴出率がほぼ生成率を代表していると考えて両者のそれを比べて みますと,ほとんど違いのないことがわかります.つまり,一発当てたと考えるより も,長い時間をかけてこつこつ貯めたと考えた方がよさそうなのです.これは,大型 カルデラ火山の成因も,長い休止期を経た火山の方が大規模な噴火をする(悪いやつ ほどよく眠る)という火山についての一般的な事実の延長上にあることを意味してい ます.それでは,こうした地域ではどうしてマグマを溜めやすいのでしょうか.大型 カルデラは概ね平坦な場所にあって,高く隆起した山脈の上などにはみられません. 活断層の変位などからこれらの地域の長期間にわたる平均的な地殻の変形速度を見積 もってやると,その値が小さいことがわかります.変形速度が小さいということはそ の場所が比較的静穏な環境に置かれているわけで,そのためにマグマが溜まりやすい のかもしれません.
 (01/11/25)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


Question #2169
Q 世界最大の活火山はどこにあり、どんな名前なのでしょうか?
以前NHKの番組で、アメリカの国立公園…確か、ノースカスケード国立公園だと思ったのですが、その国立公園の地下全体に超巨大なマグマ溜りがあり、これが60万年周期で爆発しているとききました、もしこれが本当ならおそらく世界最大の爆発エネルギーを秘めているのではと思っているのですが、本当にそうなのでしょうか?
さらにこの様な、超の形容詞がつくような火山が世界に何ヶ所かさらに存在していると聞きました、その名前と場所が知りたいです。 (03/07/02)

LonLon:フリーター:26

A
 おたずねの件は,ワイオミング,アイダホ,モンタナ州にまたがるイエローストー ン国立公園のことであると思います.そこでは50〜80万年おきに規模の大きな噴火が 起こり,そのつど約300〜2500立方キロメートル以上もの軽石や火山灰が放出されま した.また,これらの火山噴火のたびに直径20〜50キロメートル以上の大きさの陥没 カルデラが出現しました.地球上で,ここ2百万年間におこった火山噴火のうち,最 も規模の大きい部類に入るであろうと考えられています.イエローストーンの地下に は現在でも直径が10キロメートルを大きく上回る大きさのマグマ溜まりがあると推定 されています.
 一方,インドネシアのスマトラ島北部にあるトバ火山はわずか7万4千年前に大噴 火をしました.その時に噴出された火山灰や軽石の量は2800立方キロメートルにもな ると考えられています.トバ火山にも巨大なカルデラ(100×40キロメートル)が存 在しています.ここでもやはり地下に巨大なマグマ溜まりが存在しているでしょう.
 (3/26/2002)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) --


Question #2509
Q こんにちは。私は、小四の女の子です。夏休みに、阿蘇山にいきました。夏休みの自由研究に阿蘇山のことをまとめようと思います。ところで、阿蘇山は世界一のカルデラですが、世界二位のカルデラ火山は何ですか。できれば、日本二位のカルデラ火山もおしえてください。 (08/20/02)

重光和郁子:小学生:9才

A
 阿蘇カルデラは日本一や世界一とよく言われていますが、実は、大きさでは日本一 ではありません。北海道にある屈斜路カルデラが日本一の大きさです。阿蘇カルデラ は約24×18キロメートル、屈斜路カルデラは約26×20キロメートルです。大きさで言 うと日本一が屈斜路カルデラ、2位が阿蘇カルデラ。3番目あたりが今の鹿児島湾の 奥部(桜島より北)となっている姶良(あいら)カルデラ(直径約20キロメートル) ではないかと思います。
 世界一大きいカルデラはどこかというと、今のところインドネシアのスマトラ島に あるトバカルデラではないでしょうか。約100×30キロメートルもあります。2番目 はアメリカ合衆国のイエローストーンカルデラで約70×50キロメートルでしょう。
 (08/26/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) --


Question #2557
Q こんばんは。
伊豆諸島には非常にたくさんカルデラ(伊豆大島、三宅島、明神礁、青ヶ島等)があるようですが、その中に、九州や北海道のカルデラのように
大規模な火砕流の発生にともなってできたカルデラはあるのでしょうか? (08/29/02)

てんてけてん:会社員:24

A 伊豆孤の火山フロント沿いには,火山島上,海底におっしゃるようにたくさんカルデ ラがあります.産総研村上さん(村上,1997)では,大島から鳥島までの間に12個のカ ルデラがリストアップされています.このうち5つが火山島に,残りは海底カルデラ です.

これらのカルデラのうち,伊豆大島や三宅島など玄武岩質マグマを主に噴出する火山 のカルデラには,大規模な火砕流を発生して形成されたものはありません.いずれも 山頂部で大規模なマグマ水蒸気爆発を起こし,山頂部が陥没または崩壊することでカ ルデラが形成されたと考えられています.2000年の三宅島の噴火でできたカルデラ, 1924年のハワイ・キラウエア火山のハレマウマウ火口の陥没事件などからも,地下で のマグマの移動が原因となって山頂部が陥没,爆発的な噴火を伴ってできたのでしょ う. 一方,八丈島東山では,デイサイト質マグマの噴火活動がたびたび起きています.特 に2万5000年前に火砕流(軽石流)を噴出するやや規模の大きな噴火が起き,山頂部に カルデラができたと考えられています.火砕流の体積は侵食分を考慮すると数立方 km程度で,九州や北海道のカルデラ形成にかかわる火砕流よりは小さなものです.

海底カルデラについては,潜水調査などによると,少なくとも明神礁の北にある明神 カルデラは,流紋岩質軽石が大量に堆積していることがわかっています.もしこれが 陸上で噴火していれば火砕流を発生させていた可能性があります.ただし海底にある ことから十分な研究が行われているとは言えず,どのような機構でカルデラ地形がで きたのかなど,詳しいことはまだ十分にわかっていません.

ということで,八丈島東山は火砕流が発生してカルデラができたことがある.他の火 山島のカルデラはそうではない.海底カルデラはまだよくわかっていないが,流紋岩 質マグマの爆発的な噴火活動でできたカルデラがある,といったところでしょうか.
 (08/30/02)

川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門) --


Question #2670
Q 宮城、秋田県についての火山について質問です。大学時代仙台に住んでいた関係もあり、当時宮城県内の火山についての文献を色々と読み漁っておりました。そこで先日の質問で気づいた事、及び今まで分かり得なかった事なのですが、「花山カルデラ」「安達火山」についてどのような形態であったものなのか、ご教授いただければ幸いです。また秋田県についても、あまり知られていないカルデラ、火山等ありましたら、ご教授願います。 (09/14/02)

木村 昭彦:会社員:30

A まず安達火山からお答えします。宮城県川崎町釜房湖北方の丘陵地に安達という集落 があり、その集落の周辺が凹地になっています。この凹地が安達火山です。現在は開 析が進んでおり、火口地形はあまり明瞭ではありません。7〜8万年前に一度だけ噴 火した単成火山であると考えられています。この時に噴出した軽石は、仙台市付近に も1m程度の厚さで堆積しています。

次に花山カルデラについてお答えします。通常、「カルデラ」という言葉は火山性の 大きな凹陥地を差し、地形的な意味が含まれています。そのような凹地形は、時間が 経つとやがて浸食作用などで次第に元の地形が失われてしまいます。しかし、地形が 失われてしまった場合でも、その地域の地質を詳しく調べることによって、大昔は火 山性の凹地があったことが分かります。そのように地形が完全に失われてしまった大 変古いカルデラについても、地質学者は「カルデラ」の名称をもちいることがありま す。花山カルデラも地質調査によって初めて存在を確認できる古いカルデラの一つで す。ただし、大部分が鬼首火山からの火砕流堆積物に覆われているため、地質調査を しても詳しい形態は分かりません。

秋田県で良く知られているカルデラ火山は青森県との県境にある十和田火山です。そ の他、開析が進んでいますが、鹿角市と田沢湖町境の玉川カルデラ、宮城−秋田県境 付近の三途川カルデラなどもカルデラ火山です。どんな火山があるのか調べたいので あれば、第四紀(約160万年前以降)の火山については、日本火山学会発行の「日本の 第四紀火山カタログ」 (第四紀火山カタログ委員会)CD-ROM版に掲載されています のでそちらをご覧ください。また、花山カルデラのように古い火山は、あちこちに数 多くあることは確かなのですが、未だよく分かっていないものが多いです。現在研究 が進行中です。例えば秋田県雄勝町の院内盆地は、古いカルデラ(院内カルデラ)と 考えられています。
 (09/21/02)

大場 司(東北大学・理学部・地球物質科学教室) --


Question #3497
Q マグマに中には、なぜスコリア、火山灰などが、入っているんですか?それに、カルデラができて、湖が、できるというのですが、カルデラは、マグマみたいに熱くないんですか?もし熱いなら、なぜ湖ができるのですか?蒸発してしまって、湖ができないんじゃないでしょうか? (11/21/02)

小学6年生:なし:12

A マグマは高温でドロドロにとけたものをさします。スコリアや火山灰というの は、マグマが噴火の時に冷えて固まってできたもので、その形、色、大きさな どのとくちょうからそのようによばれます。

スコリアとは泡だった黒っぽいものです。白っぽい色のときは軽石(かるい し)とよばれます。それらがくだけて、こなごなになれば火山灰になります。 火山灰は別の原因でもできます(下の回答を参考にして下さい)。

カルデラができるにはいろいろな原因があります。地下にあったたくさんのマ グマが一度になくなったために、地面が落っこちてできることや、山が大きく くずれたり、噴火のときに火口付近がはでにふき飛ばされたりしてできること があります。カルデラの中にいつも湖ができるわけではありません。うまく水 がせき止められるとカルデラ湖ができます。

ふつうマグマがたまっているのは地下数キロメートルから十キロメートルの深 さですから、地上にはその熱がほとんど伝わってきません。カルデラができる ときに地上に噴出(ふんしゅつ)した溶岩や堆積物(たいせきぶつ)がまだ熱 いときには、水が蒸発して湖ができにくいこともあるかもしれません。高温の 火山ガスが吹き出しているところがあればその周辺だけちょっとだけあったか いかもしれません。大きなカルデラ湖ができるのは噴火からずいぶん時間がた っていることが多いので水は熱くないのがふつうです。でも、火山がふたたび 活発になってマグマが上昇してくれば、水が部分的にあたためられたり、蒸発 することもあるでしょう。
 (11/23/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #2758
Q こんにちは。火山の分類についてお伺いします。日本の中学校では溶岩の粘性によって楯状、成層、釣鐘状火山の3つに分類していますが、外国ではFissure, Shield, Dome, Ash-Cinder, Composite, Calderaなどに分けて教えられているようです。これらもまた溶岩の粘性による分類なのでしょうか?分類の基準とその種類について教えてください。 (09/27/02)

ナオッグ:教師:27

A こんにちはナオッグさん.火山の分類ということですね.

昔はもっぱら火山の地形だけで分類していました.例えばシュナイダー(1911)のコニ ーデ,トロイデといった分類は今でもマスコミや観光地の説明などで残っています. しかし今は表面の地形だけでは,その火山の成り立ちを必ずしも反映していないこと がわかってきたので,シュナイダーの分類は学術用語としては使われません.現在で は内部構造により注目した,成層火山,盾状火山などの用語が使われます.

盾状火山は粘性の低い,あまり爆発的噴火をしないマグマが,主に溶岩となって重な り,傾斜が緩やかな山体を作った火山です.ハワイが盾状火山の典型で,英語では Shield Volcanoです.一方,成層火山は粘性がやや高く,爆発的噴火による熱いマグ マのしぶき(火砕物)の割合が多いため,溶岩と火砕物の互層からなる傾斜の大きな山 体を持つ火山です.英語ではStrato Volcanoです.成層火山はスコリア丘(Scoria Cone, Cinder Cone)や溶岩ドーム(Lava Dome)などを火山体全体として含むことが多 いので,外国ではComposit Volcano(複合火山)と呼ぶことがあります.富士山や三宅 島など日本の火山の大部分はこの成層火山です.

釣鐘状火山というのは火山学用語では使われません.おそらく溶岩ドームのことだと 思いますが,粘性の大きなマグマが爆発的な噴火をすることなく地表に噴出してでき ます.有珠山の昭和新山や雲仙の平成新山が典型例です.マグマが地下を移動すると きは板状になって移動すると考えられていますが,この板状のマグマが地表に達する と,割れ(Fissure)噴火を起こします.粘性の低いマグマの噴火に多く見られます. 1983年の三宅島噴火がその例です.

カルデラ(Caldera)は,噴火や崩壊でできた大きな火口状地形のことで,おおよそ直 径1.6-2km以上のものをいいます.大量のマグマが爆発的な噴火で一気に噴出してで きたもの(例:阿蘇カルデラ)や,噴出物は多くないが地下でどこかにマグマが移動し てしまってできたもの(例:2000年三宅島噴火のカルデラ)などがあります.

これらの火山の形の違いは,どんな噴火様式で,どんな噴出物を,どのくらいの噴出 率で噴火するかで決まってきます.その噴火様式を決める大きな要因としてマグマの 粘性がある,と理解されればいいかと思います.なお,Q&Aの#3010にもありますよう に,自然は完全に分類できるものではなく,中間的なもの,複合したもの,例外的な ものが少なからず存在します.学校の先生にはマグマの粘性だけで一意に火山の形が 決まるわけではないということも,頭の片隅にでも記憶にとどめておいていただける と幸いです.
 (10/29/02)

川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)


Question #191
Q 火山の質問箱をはみ出すのかも知れませんが、学校以来、あの火山岩−半深成岩−深成岩(縦軸)と珪長質−苦鉄質(横軸)の表を何回も 見る機会があります。そこで質問ですが、火山岩の代表として安山岩、深成岩の代表として花崗岩が日本全体ないし県規模の地質図では地表 分布面積が多いようにおもいます。安山岩は地表火山熔岩として地質時代も噴出していたというのはわかるような気がしますが、一方、広大な 面積や点分布をしている花崗岩は、地下深所(10〜15kmぐらい?)でゆっくり冷却したと理解しています。とすると、花崗岩はどういう理由で地 表火山になれなくて地下深所にとどまったものなのでしょうか。また、現在花崗岩が冷却生成中の場所の見当がついているのでしょうか。また、 地殻変動・隆起浸食作用で花崗岩を現在、地質図の地表地質としてみているのでしょうか。 (2/5/99)

市井では地質の”プロ”と称して生計を立てているおじさん:会社員:45

A
  広義の花崗岩(花崗閃緑岩や石英閃緑岩を含む)は,全く独立した深成岩体とし て産する場合もありますが,火山・深成複合岩体として産する場合も多く,例えば 「コールドロン」がその例です.コールドロンでは,溶岩や凝灰岩からなる成層火 山のカルデラ状陥没体の中心部や,環状の陥没断層に沿う周縁部に花崗岩類が貫入 しています.これは,火山体を形成したマグマ溜まりそのものが,地下数kmの浅い ところまで上昇してきたことを示します.例えば,米国カリフォルニア州のLong Valley Caldera (長径30km)の中心部には再生ドームがあり,その直下数kmには 「現在冷却・生成中の」花崗岩体の存在が推定されています.大きなカルデラをも つ安山岩〜流紋岩質の火山の下には,必ず花崗岩体が形成されつつあると見てよい でしょう.


 「花崗岩はどういう理由で地表火山になれなくて地下深所にとどまったものな の」かはわかりませんが,マグマにとっては,地表に噴き出すよりも地下にいる方 が楽(エネルギーが少なくて済む)でしょう.しかし,そればかりでなく,実際地 表に火山体を作ったけれど,それが既に侵食されてしまった場合も多いと考えられ ます.例えば,九州の大崩山コールドロンでは,火山岩は一部残っているのみで, 基盤岩に貫入した花崗岩体や環状岩脈が広く露出しています.しかし,前述のLong Valleyや愛知県の設楽コールドロンでは,まだ花崗岩は露出していません.これは 単に侵食・削剥のレベルの違いであると思われます.飛騨山地では約100万年前に 形成された花崗岩体が既に地表に露出している例が知られており,これは世界で一 番若い花崗岩体として有名です.侵食速度は結構速いのです.日本の花崗岩の多く は5000万年〜1億年前のものですから,既に火山体は完全に侵食され,深成岩体が 地表に出ていても不思議はありません.


 なお,花崗岩の貫入深度は,接触変成帯の鉱物組合せで,ある程度判断できま す.通常の泥質岩に菫青石が多く出てざくろ石があまり出ない接触変成帯を持つよ うな普通の花崗岩体は,だいたい地下10kmより浅いところに貫入したと見てよい でしょう.一方,ざくろ石が多くて菫青石がほとんどなければ,それより深かった と考えられます.ざくろ石と菫青石が共存している場合,温度が同じなら,圧力が 高いほどどちらも鉄が少なくなり,マグネシウムに富む傾向があります. (2/8/99)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


Question #3729
Q 18年ほど前に鹿児島大学を卒業した者です。
先日、久しぶりに鹿児島を訪れ、桜島の湯之平展望台から錦江湾を眺めたのですが、錦江湾の北部(湾奥部)の姶良カルデラだけでなく、南部(湾口部方向)にいくつかのカルデラが連なっているように見えました。ひょっとして、錦江湾は、姶良カルデラだけでなく、複数のカルデラからできているのですか?そうだとすると、錦江湾では「火山生成→大爆発→カルデラ形成」を何度も繰り返しているのですか? (12/29/02)

C57/BL6J:地方公務員:42

A
 桜島湯之平展望台からのすばらしい景色は,雄大なことを考えさせてくれますね. さて,カルデラと鹿児島湾の関係を考えると,現在のところ,鹿児島湾域では,湾奥 部の姶良カルデラと湾口部の阿多カルデラ(池田カルデラを含む)以外にカルデラの 存在を示す証拠は見つかっていません.したがって,カルデラが南北に連なって鹿児 島湾ができているのではなさそうです.それでは,それ以外の部分はどのようにして できたのでしょうか?それには,鹿児島湾の北の延長上に周囲より低いところが加久 藤盆地(カルデラ),人吉盆地へと連なっていることと関連がありそうです.鹿児島 県の本土の中央部を南北に貫く,この低まりを鹿児島地溝といいます.地溝はその両 側を境する断層の動きによって周りより相対的に低くなってしまったものをいいま す.鹿児島湾のカルデラでない部分は,断層で落ち込んだ鹿児島地溝の一部と考えら れています.鹿児島地溝がなぜそこにあるのかは,よくわかっていません.なお,姶 良カルデラと阿多カルデラは,それぞれ1回の巨大噴火で作られたものではなく, 「巨大噴火→カルデラ形成」を何度も繰り返して現在のような姿ができあがっている ことが知られています.
 鹿児島湾のことについて興味を持たれたのであれば,大木公彦さんの書かれた「鹿 児島湾の謎を追って」鹿児島文庫61,春苑堂出版(ISBN4-915093-68-9)を読まれる ことをお薦めします.  (01/10/03)

井村隆介(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)


Question #3737
Q 初めまして。
仕事で鹿児島市に赴任して、毎日桜島を見ているうちに火山に興味を持つようになりました。
このホームページはいつも楽しく、そして火山に対する畏敬の念と火山学者の皆様への感謝の思いを忘れずに拝見しています。最近、いろいろ調べて、錦江湾がカルデラだったことを知ってびっくりしました。さらに九州には同じような規模の爆発の跡がいくつもあることを知ってもっと驚きました。
そこで質問です。
1:先日「死都日本」という加久藤カルデラが巨大噴火する小説を読んだのですが、その中で、九州の巨大噴火はイエローストーン火山などと異なり、マグマが深層に留まったまま、いきなり大爆発をおこして、火山の山体を地下深部からじょうご状に破壊してしまうという記述がありました。これは学問的に裏付けられた事実なのでしょうか?それとも、まだ仮説に過ぎないのでしょうか?
2:また、事実だとしたら、九州や日本以外にもそのようなじょうご状の大噴火をおこす火山があるのでしょうか?(クレーターレイクカルデラはじょうご状巨大噴火とは違いますよね。) (12/31/02)

コーサカ:公務員:33

A
 確かに死都日本おもしろですね。よくかけていると思います。
 さて、カルデラを作る噴火は一般に規模の大きい噴火で、大量のマグマが 火砕流となって短時間に噴出するものです。カルデラができた際に噴出した 火砕流堆積物を調べると化学組成が次第に変化することが多く、噴火前に マグマは地下の溜まりで、上下に組成が異なっていたと考えれています。
 じょうご状の巨大噴火とは火山学的には言わないと思います。
 カルデラには、地上部分の陥没によってできる場合や、火口周囲の地表部分 がじょうご状に大規模に噴き飛ばされてできる場合があると考えられています。 後者はじょうご状カルデラと呼ばれています。死都日本ではじょうご状 カルデラを作る火砕流噴火をじょうご状の巨大噴火としているようです。
 日本の多くのカルデラを伴った火砕流噴火は、そのようなじょうご状の火道を 作っているというモデルが、数十年前に、日本の火山学者によって提案 されました。例えば、阿蘇カルデラもそのひとつとして提案されました。 しかし、最近行われたボーリングの結果は、じょうご状カルデラ説には 否定的で、陥没カルデラを支持するものでした。
 じょうご状カルデラのことをクレーターレイク型カルデラと提案 されましたが、米国オレゴン州のクレータレイク火山のカルデラは典型的な 陥没型カルデラであると米国の研究者は考えています。
 (01/04/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #3982
Q オーストラリアでガイドをしています。ゴールドコーストにあるtweed
volcanoは世界で2番目、南半球で最大といわれています。日本の阿蘇が世界1おおきいカルデラとおもっていたのですが、北海道にある屈斜路のカルデラの方が大きいという情報をえたのですが、どちらが正しいのでしょうか?単純な質問で大変もうしわけないのですがよろしくお願いいたします。 (05/30/03)

チャウ:ツアーガイド:26

A
 オーストラリア大陸には新しい「火山」はありません。
 紹介されているTweed 火山は 東部にある直径40kmのカルデラ火山とされ ているものですが、それが活動したのは約2千万年前という大変古い時代で す。日本でいうと九州の傾山や紀伊半島の熊野地方の火成岩が活動した頃より さらに古い時代です。日本ではオーストラリア大陸と異なり、プレートが衝突 しており地殻の変動が激しいために隆起や浸食が進み、Tweed火山のように大 変古い火山でありながら当時の地形が残っているものはほとんどありません。
 ゴールドコーストでガイドとして大いに火山を紹介していただきたいと思い ますが、そこの火山の古さと新鮮さ(?)についても紹介いただければと思い ます。
 日本の「火山」地域のカルデラの大きさについてはこのQ&Aの#2509で紹介 しました。#2169では世界一のカルデラの紹介をしています。
 (06/02/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #4022
Q 文系人間のものですが、山の景観(特に火山)は大好きで、北海道の火山には大変魅力を感じます。しかし私が住んでいる関東地方にも素晴らしい火山がいっぱい眠っていると知り本当にうれしいです。
本題として、カルデラの定義とは何ですか。 僕の思うところ、榛名山や赤城山もそのような地形を持っているように思うのですが。

 立山や穂高岳がこのような地形だという事を知り大変驚いています。 (06/20/03)

山中 雅晴:学生:28

A
 カルデラとは火山に見られる円形ないし楕円形に近い凹地形です。通常の火口とは 大きさで区別しますが、一般的に直径1-2km以上のものがカルデラです。カルデラに はいくつかの種類があります。カルデラの成因で区分(たとえば、陥没カルデラ、侵 食カルデラ)、カルデラの形で区分(たとえば、馬蹄形カルデラ)する呼び方などが あります。北海道の洞爺湖や屈斜路湖はいずれも日本を代表するカルデラ湖ですが、 このようなカルデラは地下にあった大量のマグマが一気に噴出して天井が落ち込んで できた陥没型のカルデラです。大きいものでは直径が数10kmにもなります。こういう でき方がカルデラの典型的な成因でしょう。2000年、三宅島の噴火で山頂部にできた カルデラは、当初は直径1km程度でしたがその後の崩壊もあって直径約1.6kmになりま したが、これも陥没カルデラですね。ただし、地下にあったマグマは地表に噴出した のではなく、側方に移動したことにより陥没しました。
 さて、関東地方の北部にある榛名山や赤城山についてです。山頂部には確かにカル デラがあります。赤城山のカルデラは山頂部が大規模に崩壊してできた馬蹄形カルデ ラと考えられています。山が崩れてできた馬蹄形カルデラは鳥海山や磐梯山にもあり ますね。榛名山のカルデラは火砕流を噴出したことにより生じた陥没カルデラと考え られています。カルデラができた後にも火山活動は起こりますので、後カルデラ火山 活動と呼ばれますが、カルデラ内に溶岩ドームやスコリア丘など、中央火口丘ができ たりしてカルデラのもともとの形がわかりにくくなったりします。
 北アルプスの立山と穂高岳についてですが、常願寺川の上流部を指す立山カルデラ のことですね。これは、かつては陥没カルデラといわれたことがありますが、最近の 研究では、侵食と崩壊により拡大して大きくなった凹地形だと考えていますので、陥 没カルデラではなくて侵食カルデラですね。私としてはカルデラという名前であまり 呼びたくはないのですが、立山カルデラという名称は地名として一般にも使われてし まっています。穂高岳のことはよくご存知ですね。信州大学の原山さんが書かれた最 新刊「超火山・・・」(山と溪谷社発行)でも読まれたのでしょうか。ここがもとも とはカルデラだったということがわかったのは原山さんのごく最近の研究によりま す。周辺に大規模な火砕流が分布していることはだいぶ前からから知られていました が、穂高岳周辺から噴出したことがわかったのはごく最近のことです。カルデラがで きたのは170-180万年前ということもわかりました。もちろん、現在の槍穂高連峰の 急峻な地形はその後に形成されたもので、当時の地形は現在ではまったく残っていま せん。
 (06/23/03)

中野 俊(産業技術総合研究所・地球科学情報研究部門)


Question #5414
Q はじめて質問します。
私は宮崎県の出身です。理科の教師を目指していることもあり、大学のお正月休み中に前から気になっていた地元の“大崩山・行縢山・可愛岳”の形成について調べることにしました。しかし、地元の図書館に行ってもそれほど多くの資料もなくインターネットで調べても得たい情報が得られません。ぜひ、私の質問にお答え下さい。

1.花崗岩と花崗斑岩とはどうちがうのですか?

2.花崗岩の貫入により大崩山が形成されたのち、花崗斑岩の貫入によって行縢山・可愛岳などの環状岩脈(リングダイク)が形成されましたが、その形成について調べていたら1種のカルデラであると出てきました。阿蘇のカルデラは負の重力異常により形成されたカルデラであるが、大崩山のカルデラは正の重力異常により形成されたカルデラで“バリアス式カルデラ”とも呼ばれるとも書かれてありました。このバリアス式カルデラとは一体どんなものなのか、またどのように形成されるのかいまいち分かりません。あるものにはカルデラの落下を引き起こした円筒形の断層に、マグマが進入して環状岩脈ができたとも書かれてあり、一体どうなっているのかさっぱりです。

3.大崩山はすべて花崗岩ではなく、途中8合目辺りから四万十地層がありますが、これは四万十地層群が始めあった所に花崗岩が貫入したからこうなったと考えてよいのでしょうか?

ぜひ、教えてください。 (01/12/04)

さくら:高校生/大学生:18

A まず入手可能な日本語の文献として以下のものがあります.

(1) 高橋正樹著「花崗岩が語る地球の進化」シリーズ自然史の窓7 岩波書店(1999) 147P:一般向けの本で第4章「花崗岩が生まれた現場を歩く」で大崩山花崗岩の解説がしてあります.大きな図書館に行けばこのシリーズの本は置いてあ ると思います.
(2) 奥村公男・酒井 彰・高橋正樹・宮崎一博・星住英夫 著 地域地質研究報告 5万分の1地質図幅「熊田地域の地質」工業技術院地質調査所(現・産業総合研究所) (1998) 100p:詳しい地質解説と地質図がついています.

質問1:花崗岩は粗粒等粒状(鉱物の粒が粗くて大きさが同じくらい)ですが,花崗斑岩は大きな結晶(斑晶といいます)とその間を埋めたやや細粒の結晶 (石基といいます)からなります.斑状なので花崗斑岩といいます.花崗岩とくらべて,より急冷した条件下でマグマから結晶化した岩石です.
質問2:カルデラは地形的な用語なので,地形的にへこんでいないと使えません.カルデラのうち陥没カルデラの仲間にバイアス(Valles)型カルデラ というのがあります.バイエス型とよぶこともありますが,もともとスペイン語なのでバイアスが最も原語読みに近いと思います.バリアスではありません. バイアス・カルデラはアメリカ合衆国西部にある大規模なカルデラで,環状の割れ目に沿ってカルデラの内側がピストンシリンダーのようにスポッと抜けたよ うに陥没したカルデラであると考えられています.環状割れ目からは陥没の後に溶岩ドームが噴出して,やはり環状に並んで配置しており,地下では環状の岩 脈を形成していると考えられています.こうしたカルデラが後の時代に隆起浸食を受けると,山岳地帯にカルデラの地下構造が露出するようになります.こう したカルデラの地下構造は陥没構造はありますが全体としては隆起して山を作っているので,地形的なカルデラとはよべません.そこでこうしたものをコール ドロンとよんで区別することが一般的です.大崩山岩体の環状岩脈はこうしたコールドロンの一部を構成しています.バイアス型カルデラは負の重力異常を示 しますが,過去のカルデラであるコールドロンはカルデラを埋めた軽い堆積物が失われていることが多いので,必ずしも負の重力異常を示すとは限りません. ただし,現在の大崩山花崗岩付近は負の重力異常を示しています.これは花崗岩体が周囲の岩石よりも軽いためと思われます.大崩山岩体では,最初に花崗斑 岩が貫入し,最後に花崗岩体が貫入しています.花崗斑岩の環状岩脈が後ではありません.
質問3:その通りです.よく観察していますね.大崩山では花崗岩体の水平な天井部がよく残されています.四万十層の堆積岩中に頭部の平たい花崗岩体が貫 入したためにこうした構造が残されているのです.ここでも堆積岩よりも花崗岩が後から貫入しています.
 (1/13/04)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


Question #5380
Q 最近あらわれた supervolcano なるタイプの火山についてわかっていることを教えていただけないでしょうか? アメリカのヨセミテやイエローストーンの2つのカルデラ、バイアス、などの地球規模の噴火を起こしたと見られているカルデラのことがそれだと僕は認識していますが・・・

箱根山のカルデラは実は噴火口だと主張している人もいるそうですが、それを唱えている人はそれらのようなことを念頭において主張しているのでしょうか? また、その説にはどのような根拠があるのでしょうか? また、霧島火山群の火山の火口はカルデラというべきなのでしょうか? (12/14/03)

COMSPIRIT:中学生:13

A
 質問者は中学生にしては火山に関する難しい知識をお持ちのようで、このほかにいくつかの質問を連続でいただきました。代表して上の質問に答えます。
 supervolcanoというのは数年前にイギリスのテレビ番組で使った言葉で、火山用語にはまだ仲間入りしていません。ご指摘のイエローストーン など巨大なカルデラを作った噴火を起こした火山をさしたものです。火山爆発指数では8クラスのものを指していることになります。このような噴火は地球上 では数百万年に1回程度しか発生していないものです。また恐竜絶滅と関連があるとされるデカン高原などの洪水玄武岩もsupervolcanoそれに含 めているようです。後者はマントルのホットプルームによってできた火山活動です。
 ヨセミテは火山ではありません。同じカリフォルニア州のロングバレーのことではないでしょうか?ロングバレーカルデラやバイアスカルデラを作った噴火 はイエローストーンのものより規模の小さなものですが、これもsupervolcanoといいたい人がいるのかもしれません。
 カルデラか火口かは大きさで区別します。霧島山の山頂部の窪みは全て火口です。箱根カルデラが噴火口だという話は何を読まれたか知りません(「死都日 本」ですか)が、恐らく巨大なじょうご型火口と提案されていることを指しているのだと思います。これは数十年も前から学術的に提案されています。
 (12/14/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)