火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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小中学生から多い質問

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:中国・四国

全般


Question #1116
Q 私の住んでいる美又には、温泉があります。土地の様子を調べると、花崗岩が圧倒的に多かったです。私の住んでいるところには、火山はないと聞いているのですが、昔は火山があったのでしょうか。または地下でマグマが活発に活動しているのでしょうか。又、マグマは、温泉にどのように影響しているのでしょうか。温泉と火山の関係について詳しく、教えてください。よろしくお願いします。 (10/11/00)

綾:小学生:11

A (1)白亜紀の大規模火砕流堆積物 もっとも古い火山からの噴出物は主に火砕流堆積物でこの時代の噴出物は広く中国地 方を覆っています。美又温泉付近では旭町から匹見町(匹見渓谷)にかけて分布しま す。この時代は白亜紀と呼ばれる時代です。この時代、つまり今から約1億年から6 千5万年前は1億数千万年もの間栄えた恐竜が絶滅に向かい、やがてその終焉を迎え た時代です。ちなみに本や映画で有名な「ジュラシック・パーク」のジュラシック( Jurassic)とは恐竜の栄えた中生代の真ん中の時代、ジュラ紀(今から2億1千万年 から1億4千万年前)を意味しています。実際には映画に出てくる恐竜はジュラ紀の 次の時代の白亜紀のものですが、語呂が白亜紀(Cretaceous) ParkよりもJurassic P arkの方がよかったのでしょう。白亜紀の頃は中国地方は陸上だったので、きっと恐 竜がのし歩いていたに違いありません。この時代にはまだ日本海は出来ておらず、中 国地方は朝鮮半島の東、ユーラシア大陸の東縁にあったとされています。 当時の中国地方の様子はどうであったでしょうか。ユーラシア大陸の東縁では想像を 絶する激しい火山活動が起っておりました。火山活動は、雲仙普賢岳で多くの犠牲者 を出したあの火砕流の何十倍何百倍にも匹敵する大規模なもので、その堆積物は今も 中国地方を広く覆っています。恐竜がいたとしても大規模な火砕流のためにバーベキ ューになってしまったにちがいありません。

(2)後期古第三紀の火山とカルデラ 旭町の雲月山の西に長径6km,短径4kmの楕円形をした火山性の陥没地があります.こ れは今から約4千万年から3千万年前にかけて出来たカルデラです.この時代は山陰 地方はまだユーラシア大陸の東縁にあったと考えられております。この時期、山陰地 方では西から田万川、益田、浜田、波佐、桜江、川内、大万木山などにカルデラを伴 う火山活動があり、火山岩類や深成岩類が分布しております。このカルデラ群は、現 在の日本列島で例えるならば九州南部から薩南諸島にかけてのカルデラ群に似ている でしょう。カルデラ形成に伴って激しい火砕流が発生しました。浜田市下府のゴルフ 場には当時の火砕流によってなぎ倒され炭化した巨木が残っており、火砕流が高温で 威力のあるものだったことを物語っています。一方、この頃すでに西側から入り込ん できた海が少なくとも浜田にまで達していました。

(3)160万年前以降の火山 百数十万年前には大江高山火山群が噴火しました。大江高山火山群は20数個の溶岩 ドームからなっており、当時大森町あたりまであった入り江には火山砕屑物や崩壊し た溶岩が堆積しておりました。戦国の覇権を争った毛利、尼子、大内が財源確保のた めに血眼になり、最終的には徳川政権の重要な財源の一つとなった大森銀山の銀鉱床 をつくった鉱液は大江高山火山群をつくった時のマグマに由来するものです。津和野 から徳山にかけて分布する青野山火山群は130万年前から2万年前にかけて活動したも のです。 火山活動の最後をかざるのが三瓶山です。三瓶山は今から3万年ほど前から活動し始 め、3千7百年前まで活動が続きました。もっとも初期の火山灰は偏西風に乗って、ま た軽石も海流に乗って青森まで運ばれていきました。活動の初期に直径が6kmx4kmの カルデラが形成されました。1万5千年前から5千年前の間に男三瓶山、女三瓶山、 子三瓶山などの溶岩円頂丘ができました。現在の室ノ内火口の窪地は一つの溶岩円頂 丘の中央部が爆発によりなくなったためにできたという説と、もともと別個の溶岩円 頂丘によりできたという説があります。最後に5千年から3千7百年前に火砕流や降 下軽石をともなう大規模な噴火がありました。この堆積物は島根県東部を広く覆いま した。 (10/12/00)

沢田順弘(島根大学・総合理工学部・地球資源環境学教室)


Question #1253
Q はじめまして、
質問させていただきます。
私は四国にすんでおりますが、四国には火山はありません

1.どうして四国には火山がないのですか

2.石槌山は、昔、火山だったとききますが、本当ですか。

  本当だったとしたら、いつ頃まで活動していたのでしょうか。

  また、外に火山だった山はないのですか?(たとえば剣山など)

3.今後、四国で火山活動が起こる可能性はないのでしょうか。 (11/11/00)

くま:公務員:33

A 1.どうして四国には火山がないの?
 火山は地下深部(上部マントル)から高温のマグマが上昇して来ることによって形 成され、噴火を起こします。上部マントルの温度が、岩石が溶ける温度より低いとマ グマは発生せず、その上に火山もできません。また、上部マントルが高温で溶けてい ても、マグマが地表に上昇するための通路がなければ、火山はできません。四国の地 下深部(上部マントル)は、温度の低いプレートが低角で沈み込んでおり上部マント ルでマグマが溶ける条件にないために火山がないものと思われます。

2.石槌山は、昔、火山だった?
 石鎚山は、今から1千5百万年前頃、火山として活動しておりました。その頃活動 していた火山としては、小豆島の寒霞渓や、讃岐の五色台などがあります。

3.今後、四国で火山活動は?
 上に書いたような四国の状態は数百万年にわたって維持されていたと思われますの で、私達が生きている間に、火山活動が起こることはないと思っています。 (11/13/00)

吉田武義(東北大学・理学部・地球物質科学科)


Question #4126
Q 豊北町に白滝山という標高600m位の山があります。この山は山頂付近に大きな岩が露出していますが、この岩は安山岩の塊のように見えます。ということは火山の噴火によるものなのでしょうか、それとも造山運動による隆起なのでしょうか。付近の工事現場などでは断層もよく見られます。山口県西部の火山についてはあまり発表されているものを見ません。しかし、西部には多くの温泉があるので火山の存在が発表されていないのが気になってしょうがありません。その点よろしく教えて頂けませんでしょうか。 (08/08/03)

山口県西部の火山に怯えるものより::

A
 私は最近学生さんと豊北町の地質を調べています。おたずねの白滝山(667.6m)にも登山して調べました。私たちの調査では白滝山には流紋岩質溶結 凝灰岩が分布しています。おとなりの天井ヶ岳(691.1m)には安山岩によく似たひん岩という岩石が分布しています。このあたり一帯には,白亜紀の阿 武層群として知られる火山岩が分布しています。お察しのとおり火山地帯であったわけです。それも噴火の規模は大きく,噴出当時,山口県はほとんど火山灰 など火山の噴出物で覆われていたことでしょう。山口県だけでなく,日本列島,さらに太平洋を取り囲む地域では,地球がそれまでに経験したことのないよう な大規模なマグマの活動が行われました。しかし,心配されることはありません。私たちの研究ではマグマの噴出した年代は約8700万年前です。したがっ て火山活動が行われたのははるか大昔のことで,現在は完全に活動を終えた死火山です。山口県で活火山に指定されているのは,萩の笠山などからなる阿武単 成火山群だけです。したがってこのあたりで噴火する可能性はないと思います。
 また,温泉には火山性だけでなく,非火山性の成因のものがあることに注意してください。火山がないところにも温泉はあるのです。山口県の温泉はすべて 非火山性で,泉温が25℃未満の冷鉱泉が多く,全温泉地の82%,全泉源の63%を占めていま す。温泉法では,温泉を温度(物理的性質)と溶解成分(化学的性質)の2本立てで定義し,温泉=(温泉+鉱泉+火山ガス)という考え方をとっているので す。これによれば,温度が25℃以上あれば,溶解成分は何もなくても「温泉」であるし,また,溶解物質があるきまった量を満たしていれば,泉温がいくら 低くても「温泉」になるのです。例えば,山口県には,白亜紀の花崗岩や先述の阿武層群などの火山岩が広く分布するため,ラドンを含む温泉も多いです。御 存知のように湯田温泉,湯本温泉,俵山温泉,川棚温泉は古くから防長四湯としてよく利用されてきた温泉です。
 火山に怯えられることなく,豊北町の大自然や温泉を楽しんでください。白滝山付近には風光明媚な豊北峡など,白亜紀の火山活動がその素材を提供してい る美しい自然がいっぱい残っています。
 (08/22/03)

今岡照喜(山口大学・理学部・化学・地球科学科)


Question #5333
Q 島根県に在住している者です。
島根県の西部と東部の境目辺りに、大江高山という
大昔の鐘状火山群があるのですが、その山体を見て
ちょっとした疑問がわきましたのでお聞きします。

大江高山を構成している山のひとつに、二段重ね
になっている山をよく見かけるんですが、これは
最初にできた山の上に新しい山ができた、と考えて
もいいものなんでしょうか?
そう考えると、雲仙普賢岳の溶岩ドームのように
崩壊して、きれいに二段重ねの山にならないと
思うんですが。 (11/28/03)

おき3号:社会人:29

A 大江高山では,溶岩ドームの周辺には火砕物(一部は崖錐や山体崩壊物,土石流堆積物)がこ んもりとした山をつくっており,それらを押しのけて粘性の高いデイサイト溶岩(雲仙普賢岳と似ている)がせり上がった(貫入した)ので,「二段重ね」 状態になったものです.
 (12/01/03)

山内靖喜・沢田順弘(島根大学・総合理工学部・地球資源環境学科)