火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:中国・四国

阿武単成火山群


Question #208
Q 山口県に住んでいます。小規模ながら、噴火時の凄まじさを想像させるに十分な単性火山群にとても興味があります。これまで、阿武(笠山・伏馬山等)や青野山(鍋山・野坂山)、長者原等の県近郊の山を訪れ、写真を撮ったり登ったりして楽しんでいます。参考図書もいろいろ拝見したのですが、質問とお願いがありまして投稿させて頂きました。『お願い:阿武火山群内の1つ1つについて調査した資料(噴火の過程やスコリア丘・溶岩流の位置・個数)が有れば教えてください。これまで『日本の自然 火山と地震の国(岩波書店)』『守屋以智雄先生著 日本の火山地形』『空中写真による日本の火山地形』『中国地方』等の良い冊子に巡り会えましたが、更に詳しいものを読んでみたいのです。』『質問:著書 日本の火山地形に記載されている「阿武火山の地形分類図」ですが、これて全てなのでしょうか?。国土地理院発行1/25,000地形図 「十種峰」では、嘉年上と津々良岳の間にある山や、高峰山北北西の412Mm峰も1員の様に見えてしまいます。1つ1つの山にドラマがあると思い、全てを訪ねてみたいのです。』以上、勝手なお願いですが宜しくお願いいたします。 (4/17/99)

川本 均:会社員:32

A
 楽しい趣味をお持ちですね.県内の全ての火山が隈無く踏査され,徹底的に調べら れているわけではありませんから,小惑星が時折発見されるように,新たな火山が見 つかる可能性もあります.過去の噴火に想いを馳せながらいろんな山に登ってご自分 の目で確かめて見て下さい. 1.阿武火山についてのもっとも詳しい資料としては,1995年に発行された下記 の見学旅行案内書があげられます.最近の知識がまとめられています.
 角縁 進・永尾隆志・白木敬一(1995)山口の新生代火山岩類.
      日本地質学会第102年学術大会見学旅行案内書,157-170.
 この資料の入手については,山口大学理学部地球科学教室の今岡照喜(e-mail:im aoka@po.cc.yamaguchi-u.ac.jp)に連絡下されば,コピーの送付など対応します.阿 武火山の年代については,下記にまとめられています.
 西村祐二郎・今岡照喜(1995)山口県放射年代年代図(1:150,000)
                            山口地学会発行
 これについては県庁の刊行物センターあるいは山口県立博物館で入手できます.阿 武火山の成因については下記に解説があります.「山口県の岩石図鑑」に掲載されて いる写真はすべて実物大ですから,山頂の岩石をこの図鑑で絵あわせすれば,その山 が火山であるか分かりますし,火山岩の鑑定もできます.
 山口地学会(1991)山口県の岩石図鑑 第一学習社 2.「嘉年上」と「津々良岳」の間にある山は阿武単成火山の一つです.     「高峰山北北西の412m峰」は確かにきれいな丸い形をした山ですが,既存の資料 (新編島根県地質図20万分の1,1997年版)では錦層群の砂岩・頁岩となっています. (4/27/99)

今岡照喜(山口大学・理学部.地球科学教室)


Question #2483
Q 地殻引っ張られる所には単性火山が出来やすく、玄武岩質の溶岩が多いということを聞いたことがありますが、阿武火山群は単性火山でも円頂丘が多いように見うけられます。ここではマグマの供給個所が深く途中の岩石の影響を受けるからでしょうか?近畿地方には玄武洞や神鍋などの玄武岩質溶岩もあると思うのですが。 (08/13/02)

ぼるけの:会社員:40

A 地殻が引っ張られる所に単成火山が出来やすいというのは事実です.1つの単成火山 の火道は,一枚の岩脈(開口割れ目をマグマが満たしたもの)に相当していると考え られています.地殻の引っ張られる所には岩脈=開口割れ目が出来やすいのです.こ うした岩脈は,地殻の中でも,深さ20kmより浅い割れ目の出来やすい場所によく発達 します.単成火山の集合体のことを独立単成火山群といいます.阿武火山群は独立単 成火山群の1つです.独立単成火山群を構成する火山噴出物は玄武岩質とはかぎりま せん.安山岩質のものも,デイサイト質,流紋岩質のものもあります.その意味では 複成火山の場合とまったく同じです.マグマの成因の問題は,単成火山の成因とは別 に考える必要があるのです.
 (08/29/02)

高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学)