高松クレーターは,高松市仏生山町の法然寺付近を中心とする直径約4kmの円形,深さ1〜2kmの地下の盆地状構造です.厚い堆積物が溜まっているの
で,表面の大部分は周囲の平野と同じ高さの平らな土地になっており,飛行機や山の上から眺めても盆地状の地形は判別できません.また,クレーターの範囲
内にはデイサイト質溶岩や流紋岩質凝灰岩の小山が8つほどあります.高松クレーターは,金沢大学の河野芳輝先生らが,詳しい測定によってこの地域の重力
が異常に低い(「高い」は誤りです)ことを見出し,発見したものです.
この盆地状構造の成因については,隕石衝突説と火山カルデラ説が唱えられ,それぞれの説を支持する学者が現在でも口角泡を飛ばして議論していて,まだ決
着しておらず,国際的にもまだ「隕石孔」とは認められていません.仰るように,高松付近は「瀬戸内火山帯」に属し,この火山帯には愛媛県石鎚山や愛知県
設楽盆地などの火山性陥没構造(過去のカルデラ)があります.高松クレーター内部の掘削試料が厚い火砕流堆積物であること,隕石説の証拠となる高圧変成
鉱物が未発見であることなどから,今のところ火山カルデラ説(コールドロン説)の方が優勢のようです.どちらの説にせよ,高松クレーターが形成されたの
は第三紀中新世の1400-1300万年前頃と考えられますので,人類はまだ存在しなかったでしょうが,いろいろな哺乳類がいたと思います.もっと詳し
く知りたい場合は,次の書籍や論文,講演要旨を参照して下さい.
・河野芳輝編(1996),高松クレーターの謎を探る.四国新聞社.高松,231頁.
・山田涼子・佐藤博明(1998),香川県高松クレーター産ガラスの岩石学的研究.岩鉱,93巻, 8号,279-290頁.
・三浦保範・古賀登(2003),高松−香川地域の隕石衝突構造の研究.日本岩石鉱物鉱床学会2003年学術講演会(仙台)演旨, 50頁.
・三浦保範・中村麻美・古賀登・上原知子(2003)日本におけるFe-Ni含有微粒子について.日本鉱物学会2003年学術講演会(仙台)演旨,
204頁.
・三浦保範・古賀登(2003),高松−香川地域の衝突物質.日本地質学会第110年学術大会(静岡)演旨, 179頁.
(12/01/03)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
|