中国地方には大山を除くと大きな火山はありません.でも小さな火山はたくさ
んあります.萩市の北から東北東にかけても,小さな溶岩流やスコリアが積も
ってできた丘が点々と分布しています.この小さな火山をまとめて,阿武単成
火山群と呼んでいます.単成火山というのは,富士山や伊豆大島のように同じ
火口から何回も噴火を繰り返して大きくなった複成火山とは異なり,1回の噴
火で作られた火山で,ひとつひとつはそれほど大きくはありません.単成火山
ができる理由は,その場所の地殻に引っ張りの力が働いているなどの原因が考
えられています.単成火山群については,このページのバックナンバーにあ
る,Q47に対する静岡大学小山さんの回答をご覧ください.
萩市の沖合いに浮かぶ大島や羽島などの島々や鶴江台,羽賀台などは,そんな1
回の噴火で流れ出した溶岩でできた島や台地です.なお「笠山」は溶岩流の上
に,スコリア丘が乗っているもので,残念ながらカルデラではありません.
噴火した時期は,それぞれの火山体の侵食の程度から2つに分けられると考え
られています.放射性年代もいくつか測られていますが,古いもので約300万
年前,新しいもので約18万年ほど前から1万年ほどです.活火山には含まれて
はいませんが,単成火山群の噴火間隔は比較的長いものもあるので,これから
も噴火する可能性はないとは言えないでしょう.
なお火山帯としては大山(白山)火山帯に属するのでしょうが,今はあまり火山
帯という言葉は使われなくなりました.
(5/29/98)
川辺禎久(工業技術院・地質調査所)
|