火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:近畿地方

湯の峰温泉


Question #58
Q 今年の8月に和歌山県の湯の峰温泉に行ってきましたが、100度近いお湯が湧き出る「湯筒」というのがありました。このあたりには火山が全くないのにどうしてこんな熱い温泉が湧きだしているのでしょう。地質図を見るとこのあたりに火山岩が存在しているようですが、古い火山があるのでしょうか。近くの名勝の橋杭岩は火山岩が地表に出てきて冷えたものだと聞いた記憶があります。 (12/5/97)

中学生の時は火山学者を夢見てたおじさん。:公務員:41

A
 さすがに火山学者を夢見たロマンチストのおじさんでいらっしゃるだけあっ て,重要なポイントに興味をもたれましたね.和歌山県の温泉,特に龍神・湯 の峰・川湯などの温泉は温度の高いものです.これらの温泉の分布地域には何 千万年前の海底にたまった砂岩や泥岩が広く分布しているのですが,龍神・湯 の峰・川湯などの温泉のある一帯ではその岩石が白く変質しています.この変 質帯は果無山脈から大塔山の南まで南北に延びて帯をなしていて八丁涸漉(は っちょうこしか)変質帯と呼ばれています.この変質作用は熱をもった水によ るもので,しかもこの変質帯の中,およびその南延長上には石英斑岩という火 成岩の岩脈がだいたい南北にならんで分布しています.橋杭岩もその一つで す.これらの火成岩ができたのは千数百万年前ですので,この変質帯ができた のもそのころだと考えられています.
 で,湯の峰などの温泉の熱源なのですが,諸説ありまして,ひとつはこの千 数百万年前の火成岩の熱がまだ地下には残っているのだというものです.しか しこんなに長期間マグマの余熱が残っているということには懐疑的な学者もい て,昔マグマが上がってきた通り道であったこの地域は,今でも地下からの熱 を帯びた水や,地表から浸透した地下水の通り道になっているのであって,地 下深くからの熱がこれらの水にバトンタッチされながら運ばれてきているのだ という漠然とした考えもあります.
 疑問はつきませんが,湯の峰に限らずまわりには見かけ上火山がないのに高 温の温泉が出ているところは有馬温泉などほかにもあります.これらの成因を 探ることは重要な問題だと思います.火山学をさらに夢見てください. (12/30/97)

三宅康幸(信州大学・理学部)


Question #2730
Q ぼくたちは、奈良県吉野郡十津川村にある二村小学校の4年生です。総合学習で火山と温泉について調べています。温泉がわくところには、火山があるとかんがえています。しかし、十津川村には、火山がないようです。どうして温泉が多いのでしょうか。教えてください。  (09/24/02)

耶麻もと:小学生:10歳

A 二村小学校の皆さん,こんにちは. 十津川村のある紀伊半島にはたくさんの温泉がありますね.そしてほんとうに熱い温 泉が多いですね.十津川村の十津川温泉や湯泉地温泉は60℃ほどの温度で湧き出して います.近くの竜神温泉・湯ノ峯温泉(和歌山県)も含めて,これらの紀伊半島の熱 い温泉は地下水が地下にある”熱いもの”によって温められたあと,断層などの割れ 目に沿って地表まで上がってきたものと考えられています.

では,その”熱いもの”とは何でしょう?それは地下にあるマグマです.

紀伊半島では今から1400万年前に火山が活発に活動していました.その頃の紀伊半島 の地下では火山活動を起こすためにたくさんの熱いマグマがあったと考えられていま す.そのマグマが1400万年後の今も完全には冷え切らずに,地下水を温め続けている ようです.

もう少し詳しいことは奈良教育大学地学教室のホームページにある「大和の一億年 -奈良の自然誌-」(http://earth.nara-edu.ac.jp/nishida/y100ma.html)の「温泉」についての解説を一度読んでみて下さい.奈良や十津川村の温泉の話がありますよ.
 (09/25/02)

和田穣隆(奈良教育大学・地学教室)