1.医王山以外にも火口があるか.
医王山は確かに「火山岩」(流紋岩の溶岩や凝灰岩)でできてい
ますが,約1500万年も前の地層なので,「火口」はもう残っていま
せん.「火山」は地表付近のマグマ活動によって生じた地形(山や
凹み)のことを言うので,既に火山地形が完全に失われている医
王山は「火山」ではありません.なお,医王山と同じ地層(「医王山
累層」)は,確かに犀川上流から鶴来,そして更に小松市南方,
加賀市南方を経て福井市付近まで続いています.しかし,これらの
火山岩を噴出した「火口」がどこにあったのかは,まだわかってい
ません.ところで,医王山山系の金沢市側にある戸室山やキゴ山
は約50万年前の火山ですが,これらは溶岩円頂丘で,表面に
はっきりした「火口」はありません.
2.金沢の地下に凝灰岩層は広がっているか
金沢の地下には多量の凝灰岩層があります.上で述べた医王山
累層(厚さ1000m)は日本海側へ傾斜しており,金沢市の下にも
広がっています.また,医王山累層の上には「砂子坂凝灰質互層」
(170m),七曲凝灰岩層(100m),下荒谷凝灰岩層(30m)などの
凝灰岩の地層が重なっていて,これらは湯涌温泉へ行く道沿いに
露出しています.これらの地層は,金沢市中心部の直下では,
卯辰山層・大桑層・高窪層など泥岩・砂岩の地層の下,地下約
300-500m付近にあるものと思われますが,森本断層より海側で
は,それより更に500m以上深くにあるでしょう.これらの凝灰岩層
を作った火山灰を噴出した火口がどこにあったかは,残念ながら
まだわかっていません.石川県内のボーリング資料をまとめた
本は金沢大学にありますが,上の数字は私の大雑把な推定です.
もし正確に知りたい場合は,大学にいらして下さい.
3.金沢市の地史について書かれた文献
一般向けの本としては,次のようなものがあります(発行年順).
今井功「5万分の1地質図幅 金沢 および説明書」通産省地質
調査所,1959年(絶版です.図書館・大学でどうぞ)
かせ野義夫編著「北陸の地質をめぐって(日曜の地学6)」
築地書館,1979年(絶版です.図書館・大学でどうぞ)
石川県理科教育研究協議会・石川県理科協会編「石川の理科
ものがたり」日本標準,1981年(販売中.小学生向け)
藤則雄監修「理解しやすく・親しめる石川の地形・地質案内
野外観察のガイド」東京法令出版,1985年(販売中)
日本地質学会第97年学術大会(富山)見学旅行案内書.1990
(専門家向き.石川県内のコースもあり.大学でどうぞ)
北國新聞社出版局編「徹底検証地震と防災 石川は安全か」
北國新聞社出版局, 1995年(販売中)
石川県化学教育研究会編「科学風土記 加賀・能登のサイエンス」
裳華房ポピュラーサイエンス,1997年(販売中)
相馬恒雄「富山のジオロジー 富山の大地の成り立ちを探る」
シー・エー・ビー(とやまライブラリー5),1997年(販売中,隣
の県ですが,地元の地史を様々な学説と結びつけて説明)
北村晃寿文,夏目義一絵「暖かい地球と寒い地球」福音館書店,
1998年(販売中,大桑層に関する小学校中・高学年用絵本)
鹿野和彦ほか「20万分の1地質図幅 金沢」通産省地質調査所
1999年(販売中,裏に詳しい説明あり.地図専門店でどうぞ)
なお,私のホームページ
もご覧下さい.
(11/27/99)
石渡 明(金沢大・理学部・地球科学科)
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