福井県には活火山はありません.地質調査所1981年発行の「日本
の火山」という地図に載っている福井県内の火山は,火山体の一部
が福井県内にはみ出ているものも含めて,大日山火山,経ヶ岳火山
(取立山,赤兎山,法恩寺山を含む),願教寺山火山の3つです.
これらは九頭竜川の北に,福井・石川県境に沿って西北西方向に
並んでおり,岐阜県内の大日ヶ岳火山,烏帽子・鷲ヶ岳火山と合わ
せて「九頭竜火山列」をつくっています.
清水ほか(1988)による溶岩の年代測定結果は,大日山が330-357
万年前,経ヶ岳は88〜134万年前,願教寺山は272-311万年前
(133万年前というデータも1つあります)です.大日山と経ヶ岳の間
には,もっと古い505万年前の火打谷溶岩や430-463万年前の谷峠
溶岩もあります.
経ヶ岳火山の山麓を観察されたとのことですが,九頭竜火山列の
中では,経ヶ岳火山が最も新しく,大野市側の山麓には,火山体の
崩壊による流山や岩屑流堆積物が広く分布しています.しかし,最近
数10万年間は噴火の証拠がなく,九頭竜火山列の他の火山も含めて
今後噴火する可能性はほとんどないと考えられます.ただし,地震や
集中豪雨などをきっかけとして,山体崩壊を起こし,災害をもたらす
危険性はあります.
この他,福井県内の「火山」としては,若狭地方の高浜町西部に青葉山
があり若狭富士とも呼ばれています.この火山は恐らく鮮新世(170-520
万年前)のもので,かなり侵食されています.また,観光地として全国的
に有名な東尋坊や越前松島など,三国海岸にも安山岩〜流紋岩質の
溶岩や火砕岩が分布していますが,これらは約1300万年前のものです.
一方,越前海岸一帯から丹生山地,福井市内(足羽山など)を経て
丸岡町・金津町まで,そして南は勝山・大野を経て荒島岳まで,「グリー
ンタフ」とよばれる火山岩類が大規模に分布していますが,これは1600-
2000万年前の激しい海底火山活動で形成されたものです.これらはい
ずれも相当古い時代のもので,青葉山以外は火山体の形を全く残して
いません.
以上,福井県内の火山について,概略を述べました.
(11/11/99)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
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