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小中学生から多い質問
「Q&A火山噴火」
に寄せられた意見集
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Jan. 2012. The Volcanological Society
of Japan.
kazan-gakkai@kazan.or.jp
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身近の火山:北関東・甲信越地方
日光火山 |
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Question #307
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Q |
はじめまして。栃木県の中学校で先生をしています。理科の授業で火山を教えました。栃木県の火山にはどんなものがありますか?また。学校の窓から高原山がよく見えます。この高原山は火山ですか?休火山?ですか?愚問ですが素朴な疑問です。
(11/4/99)
よしろう:教諭:31
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A |
栃木県の火山には、北から那須、高原、日光の各火山があります。
那須火山群は栃木・福島県境挟んで南北に分布していますが、このうち栃木県内に
あるのは、40〜30万年前ころに活動した三本槍岳火山、10〜20万年前に活動した朝日
岳火山と南月山火山、そして1万年前以降現在まで活動を続ける茶臼岳火山がありま
す。何れも小型〜中型の安山岩質成層火山で、溶岩ドームもともないます。14〜17万
年前、3〜4万年前、1万6千年前には大規模な山体崩壊を起こし、岩屑なだれ堆積物が
山麓の那須野原を広く覆い尽くしました。最新の大規模な活動は1408〜1410年(応永
15〜17年)に起こった室町時代のものです。このときの噴火で現在の山頂を作る茶臼
溶岩ドームが生まれ、また小規模な火砕流も発生しました。また、火山泥流による那
珂川の洪水で、180人あまりの犠牲者を出し、多数の家屋や家畜が損害を受けました
。また、明治時代以降も水蒸気爆発をしばしば起こしており、1881年、1953年、1960
年、1963年には降灰をともなうような噴火活動が生じています。山頂まで登る観光客
や登山客は多いですが、現在も生きている要注意の火山といえるでしょう。
高原火山では、35〜40万年前に、大規模な大田原火砕流が噴出し、大田原周辺の原
野を埋め尽くすとともに、塩原カルデラが形成されました。塩原温泉付近に分布する
塩原湖成層は、このカルデラの中にできた湖に堆積したものです。その後、カルデラ
をほぼ埋めるように、前黒山、明神岳、鶏頭山、中岳、西平岳などを構成する安山岩
質成層火山群が形成されました。さらに高原山頂付近に東に開いた馬蹄型カルデラが
形成され、このカルデラ内に釈迦岳、剣ヶ峰などの火山体が噴出しています。最新の
活動は約6千年前のもので、北側山腹に富士山溶岩ドームと多数の割れ目群が形成さ
れました。この割れ目群からは、現在でも時折活発な噴気活動がみられることがあり
ます。そういった点では、高原火山はまだ生きている火山といってもよいでしょう。
日光火山は、60〜7万年前まで、一番東側に分布する女峰・赤薙成層火山が活動し
ていました。その後、その東側に活動中心が移り、丹勢、大真名子ー小真名子、太郎
ー山王帽子などのようがんドームや厚い溶岩流からなる火山群が形成されました。丹
勢火山の上に、2万5千年前〜1万2千年前にかけて男体山成層火山が噴出し活発な活動
を続けましたが、1万2千年前以降は完全に活動を停止しています。その後、活動の中
心はさらに西に移動し、戦場ヶ原の北部、日光湯元温泉近くに三ツ岳溶岩ドームが、
また5千年前以降は日光白根火山が活動を始め、現在に至っています。日光白根火山
は厚い溶岩や溶岩ドームからなる成層火山で、江戸時代初期の1649年には、比較的規
模の大きな水蒸気爆発をともなう噴火を起こしており、日光火山群中唯一の活火山で
す。最近も火山性地震が活発になり、噴火を心配されたことがありました。
(11/28/99)
高橋正樹(茨城大学・理学部・地球生命環境科学科)
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Question #2580
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Q |
火山のない埼玉で生まれ火山に憧れそして栃木に住み着いてから8年になります。日光、那須、高原と火山と温泉に恵まれていますが栃木の二つの活火山について質問があります。
@那須茶臼岳について
昭和28年頃最後の小噴火があったと聞きますがどの程度のものだったのでしょうか。現在山頂部は観光客でごった返してますが現在もし同程度の噴火があるとしたら事前予知はどの程度可能なのですか(水蒸気爆発は予測しにくいと言われるので少し不安です)。
A日光白根山について
最近まで前白根や五色山が外輪山で奥白根がカルデラの淵に出来た中央火口丘だと勘違いしてましたが両者は形成された時期が全く異なるそうですね。しかし現場にいってみるといかにも前白根、五色山の稜線は外輪山で五色沼は火口原湖に見えます。奥白根との関係はないとしてもこの『外輪山もどき』が古い時代の小カルデラのなごりという事はないのでしょうか。
以上2点、よろしくお願いします。
(09/03/02)
アマンタジン:医師:27
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A |
那須茶臼岳の最近の噴火としては,明治14年(1881年)の噴火が最大規模のもので
す.現在の山頂の西側直下にある無間火口から生じた水蒸気爆発で,茶臼岳周辺には
30cm余りの厚さで火山灰が降り積もり,噴石も飛来しました.茶臼岳周辺は一面灰色
の世界となり,多くの立木が枯れました.降灰は東方の白河市付近でもみられ,那珂
川では沢山の魚に被害があったということです.この規模の噴火が起きれば,ロープ
ウェイ山麓駅あたりまで,降灰や噴石で大きな被害を被り,観光客への人的災害もか
なりのものになると予想されます.昭和28年(1953年)の噴火では,やはり無間火口
で水蒸気爆発噴火があり,南方6kmまで降灰がみられました.この規模の噴火では,
噴石も山頂火口周辺には飛来したでしょうから,ロープウェイ山頂駅から上に観光客
がいれば,大きな人的災害をもたらすものと思われます.水蒸気爆発の予測は確かに
難しいところがありますが,噴気や火山ガス,火山性地震などのモニターをきちんと
やっていれば,ある程度の予測はできるのではないでしょうか.那須火山の観測体制
はこれまで必ずしも十分とはいえませんでしたが,最近になってかなり整備されつつ
あります.
前白根や五色山の稜線は新第三紀の古い火山岩類から構成されており,第四紀の火
山ではありません.これらの稜線が作る馬蹄型の地形はこの付近の山地によくみられ
る浸食地形であってカルデラではありません.
(09/04/02)
高橋正樹(日本大学・文理学部・地球システム科学)
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