火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

現在,諸般の事情により質問の受付を停止しております. 再開に向け準備を進めておりますので,いましばらくお待ちください.
トピック項目表示

QA番号順表示

小中学生から多い質問

指定のQ&A番号へ飛ぶ
(半角数字で入力)

「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


VSJ HOME


Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:北関東・甲信越地方

妙高山


Question #400
Q 久しぶりに質問します。
妙高山についての質問です。
今年の初夏は、山頂まで登山を計画しています。
杉の原方向、赤倉方向から見る妙高山のカルデラ壁は、圧倒されます。
特に、三田原山から赤倉山にかけてカルデラ壁が円形に見事に続いています。
杉の原スキー場のゲレンデには、昔の火砕流によって流れてきた岩もあったようです。
日本火山学会編集の「写真で見る日本の火山」に妙高山が紹介されていますが、
妙高山の現在の形成過程は
1.富士山そっくりの山体形成
2.爆発的噴火による火山上部の崩壊
3.カルデラ形成
4.中央火口丘である妙高山形成
5.火山浸食による放射谷形成
だと考えますが、いかがでしょうか?
また、前山についてはカルデラ壁の一部だと思いますが、いかがでしょうか?
「写真でみる日本の火山」では妙高山については
複雑な形成史をへて。。とありますが、複雑な形成史について教えてください。
赤倉温泉から見た妙高山については、映画ダンデスピークを思い出しましたが
最後の噴火はいつ頃ですか?
また、将来噴火する可能性はあるのでしょうか?

(02/15/00)

火山研究サラリーマン:会社員:41

A 1.形成過程について
 基本的にそれで良いのではないかと思います。ただ、5の放射状谷の形成は、中央 火口丘の形成以前から続いていますが。また、後の質問にもある、妙高の形成過程の 複雑さともダブりますが、妙高では、1〜5までの過程が4回くり返されています。

2.前山について
 赤倉山〜三田原山〜大倉山〜神奈山〜前山を結んだ尾根が、カルデラ縁にあたりま す。カルデラ壁には、内壁と外壁があります。前山のピークそのものを、カルデラ「 壁」と呼ばない方がいいと思います。

3.複雑な形成史について
 妙高は、上記のように、円錐形成層火山体の形成→カルデラの形成→中央火口丘の 形成といった過程を4回くり返しており、マグマの性質も、そのつどマフィック→フ ェルシックへと変化しています。ですから、新旧4つの別々の火山が、縦に重なって できたような構造になっています。詳しくは、『フィールドガイド 日本の火山 @
 関東甲信越の火山氈x(築地書翰)を参考にしてください。

4.最後と将来の噴火について
 マグマを噴出した最新の噴火は、約5000年前(暦年代)の縄文時代中期末の火 砕流噴火です。この時の火砕流は、新井市まで達しています。マグマを噴出しない水 蒸気爆発は、約2500年前のものが、確認できる最新のものです。現在の4代目の 妙高は、その一生の最末期の状態にあります。ですから、以前のように、マグマ噴火 を頻繁にくり返すことはないでしょう。しかし、少量のマグマを、単発的に噴出する 可能性は、先代の例からみて、否定できません。また、水蒸気爆発は、まだ十分起こ り得ると考えています。5代目の妙高が、誕生するかどうかについては、全く不明で す。

(2/18/00)

早津賢二


Question #1658
Q はじめまして。妙高山について知りたいのですが、地形図閲覧システムというサイトでその山の地形を見て次のような質問をしたいと思いました。それは、北地獄谷と南地獄谷あるいは山頂西側の馬蹄形の爆裂火口のような窪地は、本当に火口跡なのでしょうか? (04/13/01)

タルビン・シン:大学生:19

A ご質問の「馬蹄形の窪地」というのは、具体的にどの場所を指しておられるのでしょ う。南地獄谷、北地獄谷、山頂西側の個々の窪地を指しておられるのでしょうか、そ れとも前山-赤倉山-三田原山-大倉山-神奈山を結んだ1つの大きな馬蹄形の凹地をさ しておられるのでしょうか。

もし、前者だとしたら、北地獄谷の谷頭部、中央火口丘山頂の東側にある半円形の凹 地は、その形状から、爆裂火口の跡と考えています(対応する噴出物は特定されてい ません)。南地獄谷の谷頭部、前山と赤倉山に挟まれた馬蹄形の窪地は、崩壊跡で、 対応する堆積物が確認されています(崩壊に噴火が関与したかどうかは不明です)。 山頂西側の馬蹄形の窪地が、もし大正池を含む凹地を指すなら、これは爆裂火口跡で す。大正池を囲む土手状の高まりを作っている堆積物が、その時の噴出物です。

後者の赤倉山・三田原山などの外輪山に囲まれた1つの大きな馬蹄状の凹地は、山頂 部の巨大な崩壊によって形成された崩壊跡で、その時の崩壊物である岩屑なだれの堆 積物は、東山麓に広く分布しています。崩壊に噴火が関与していたかどうかは、はっ きりしませんが、凹地の出口が狭いことなどの形状から判断して、単純な崩壊ではな く、噴火が関与していた可能性が大きいと考えています。野尻湖底では、ほぼ同時期 と考えられる火山灰も確認されています。 (04/16/01)

早津賢二