身近の火山:伊豆・伊豆諸島・小笠原
大室山 |
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Question #93
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Q |
今度、伊豆に行こうと思っているんですが、地形的にどこか面白いところがあったら教えてください。
(6/23/98)
学生21歳:大学生:21
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A |
ここは火山学会のページなので,火山と関連する地形についてお答えします.
まず,天気のよい日を選んで伊東市の大室山に行って,リフトで山頂に登るこ
とをお勧めします.大室山自体が美しい円錐形の火山(スコリア丘)であり,
山頂にスリバチ状の火口があります.また,大室山から流れ出た溶岩流が作る
雄大な裾野(伊豆高原)を上から眺めることができますし,他の火山(一碧
湖,小室山,矢筈山,天城山など)の地形を楽しむこともできます.
大室山や他の伊豆半島の火山についての詳しい解説は,以下のホームページ
や図書にありますので参考にしてください.
http://www.ipcs.shizuoka.ac.jp/~edmkoya/Izu/IzuOpen.html
「フィールドガイド日本の火山(2)関東・甲信越の火山II」,高橋正樹・小
林哲夫編,築地書館.(6月末発売予定)
「写真でみる火山の自然史」町田 洋・白尾元理著,東京大学出版会.
(6/23/98)
小山真人(静岡大学・教育学部)
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Question #273
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Q |
伊豆の大室山には何故木が1本も生えていないのでしょうか?
幼稚な質問で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
(9/28/99)
将軍:団体職員:52
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A |
大室山は,最新のデータにもとづくと,4000年くらい前の噴火によって誕生した新
しい火山です.地質学的には,4000年前というのは,ついこのあいだと言ってもよい
新しさです.しかし,いくら新しいと言っても,4000年間は森が成長するのに十分過
ぎる時間です.じつは,毎年,観光行事として大室山の山焼きがなされているのです.
たとえば,
http://www.siz-sba.or.jp/ito-duo/izu-ito/yamayaki.htm
をご覧ください.だから,大室山上の植物の成長は毎年リセットされ,いつも火山本来
のもつ美しい円錐形があらわになっているのです.
(9/30/99)
小山真人(静岡大学・教育学部・総合科学)
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Question #381
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Q |
最近ネットで富士山の形成史を見てわいた疑問です.富士山は小御岳,古富士,新富士の3つの火山から形成されているとありますが,何をもって別の火山とするのでしょう?供給源のマグマ溜まりが違うのですか?八ヶ岳や榛名火山はどうなのでしょう?割れ目噴火でたくさんの円頂丘が形成された場合は?(ちなみに,その様な噴火様式は現実にありますか?)何となく思った疑問ですが,教えて下さい.
(01/17/00)
一応地質屋:会社員:27
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A |
大変本質的で難しい御質問です。専門家が困る素朴ですがよい御質問といえますね
。そんな馬鹿なことがと思うかもしれませんが、実は厳密な意味でのひとつの火山の
定義とは定まっていないのです。現実には漠然とひとつの空間的なまとまりをもった
火山体に対して、ひとつの火山としてある名称を与えるケースが多いようです。給源
のマグマ溜りで分けるなどといったことがわかるほど、マグマ溜りのことについてよ
くわかっているわけではないのです。
富士火山の場合、古富士と新富士は空間的に重複し、時間的にも連続したまとまり
のある分布をしていますので、両者を合わせて富士火山とよびます。小御岳火山は中
心が富士火山と比べて北側にずれており、侵食も進んでいて両者の間には時間間隙が
存在しているので、別の火山と認定されています。
古富士・新富士の違いはあまり明瞭ではありません。最初に新富士・古富士を命名
した津屋弘達氏は、富士火山の北側山腹の一部にみられるやや侵食の進んだ火山体や
、爆発的噴火を繰り返して厚いテフラ層を堆積させたり、山麓にかつて繰り返し火山
泥流を供給した火山体のことを古富士火山とよびました。その上を覆って、現在の山
体の主要部を構成しているのが新富士火山です。新富士火山の方が溶岩流の占める割
合が多く、より静かな噴火活動と考えたようです。しかし、確かによく検討してみる
と、漠然としていてあまり厳密な定義ではありません。
その後、町田 洋氏は富士火山のテフラを詳細に検討し、約5000年前の富士黒土層
を境にして、古期富士火山と新期富士火山に再区分しました。黒土層は噴火が休止し
た時期に堆積した一種の土壌です。この時期に活動間隙があると考えて区分したわけ
です。津屋氏の区分とは一致しませんが、合理的な区分ではあります。
新富士火山の形成史を詳細に明かにした宮地直道氏は、大量の溶岩噴出へと噴出様
式が大きく変化する時期を境に新富士と古富士を分けるという津屋氏の区分を、再び
採用しています。噴出様式が大きく変化するという意味では、噴出様式の違いに基づ
く新富士、古富士という区分も捨て難いものがあります。
榛名火山は全体としてひとつの空間的まとまりを示しているので、これをひとつの
火山とよんでもあまり抵抗はないかもしれませんが、八ヶ岳火山は、ひとつの火山と
よぶのは躊躇するかもしれません。事実、八ヶ岳は複数の小型〜中型成層火山や溶岩
流、溶岩ドームなどの集合体で、小型成層火山には赤岳火山などといった名称がそれ
ぞれつけられています。八ヶ岳の場合は、八ヶ岳火山群とよぶのがふさわしいでしょ
う。
割れ目噴火で沢山の火山体が形成されるケースはもちろんあります。伊豆半島の大
室山や1989年に海底噴火した伊東沖の手石海丘などで有名な東伊豆単成火山群は、小
型の沢山の単成火山からなる群を作っています。この場合、群全体で富士火山のよう
なひとつの成層火山体に相当するわけです。東伊豆単成火山群の中で手石海丘を除き
最も新しい噴火活動の産物のひとつである伊雄山ー岩ノ山火山列は、ほぼ同時期に一
連の割れ目から噴出したスコリア丘や溶岩ドームからなっています。しかし、こうし
た火山群に対してある固有の名称をつけるにはまだ至っていないようです。
専門家がドキッとするような大変難しい御質問でしたが、このくらいで御勘弁下さ
い。ひとつの火山の定義って、本当にどうしたらよいのでしょう。
(1/17/00)
高橋正樹(茨城大学・理学部・地球生命環境科学)
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