伊豆孤の火山フロント沿いには,火山島上,海底におっしゃるようにたくさんカルデ
ラがあります.産総研村上さん(村上,1997)では,大島から鳥島までの間に12個のカ
ルデラがリストアップされています.このうち5つが火山島に,残りは海底カルデラ
です.
これらのカルデラのうち,伊豆大島や三宅島など玄武岩質マグマを主に噴出する火山
のカルデラには,大規模な火砕流を発生して形成されたものはありません.いずれも
山頂部で大規模なマグマ水蒸気爆発を起こし,山頂部が陥没または崩壊することでカ
ルデラが形成されたと考えられています.2000年の三宅島の噴火でできたカルデラ,
1924年のハワイ・キラウエア火山のハレマウマウ火口の陥没事件などからも,地下で
のマグマの移動が原因となって山頂部が陥没,爆発的な噴火を伴ってできたのでしょ
う.
一方,八丈島東山では,デイサイト質マグマの噴火活動がたびたび起きています.特
に2万5000年前に火砕流(軽石流)を噴出するやや規模の大きな噴火が起き,山頂部に
カルデラができたと考えられています.火砕流の体積は侵食分を考慮すると数立方
km程度で,九州や北海道のカルデラ形成にかかわる火砕流よりは小さなものです.
海底カルデラについては,潜水調査などによると,少なくとも明神礁の北にある明神
カルデラは,流紋岩質軽石が大量に堆積していることがわかっています.もしこれが
陸上で噴火していれば火砕流を発生させていた可能性があります.ただし海底にある
ことから十分な研究が行われているとは言えず,どのような機構でカルデラ地形がで
きたのかなど,詳しいことはまだ十分にわかっていません.
ということで,八丈島東山は火砕流が発生してカルデラができたことがある.他の火
山島のカルデラはそうではない.海底カルデラはまだよくわかっていないが,流紋岩
質マグマの爆発的な噴火活動でできたカルデラがある,といったところでしょうか.
(08/30/02)
川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)
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