伊豆鳥島といえばアホウドリの繁殖地として有名ですね.1902年に伊豆鳥島で起き
た悲劇はこのアホウドリとも関係が深い出来事です.
伊豆鳥島は東京の南約580kmにある孤島です.径約2.5-2.6kmのほぼ円形の島で,径
約1.3kmの火口があります.火口の中には中央火口丘の硫黄山(394m)があります.も
ちろん火山島ですから,実際の山体はこれよりずっと大きく,比高約800mの火山の山
頂部だけが海上に出ていると考えてよいでしょう.
伊豆鳥島は,江戸時代までは漁民が遭難して流れ着いたり,一時的に上陸する程度
でそこに住んでいる人はいませんでした.ジョン万治郎が漂着したのも伊豆鳥島で
す.明治に入ってから伊豆鳥島のアホウドリの羽毛を獲るため人が住みはじめ,島の
北側の平地に50軒ほどの家が立ち並んでいたそうです.
さて1902年(明治35年)の噴火ですが,噴火前の異常はいくつかあったらしいと言わ
れていますが,8月7日に伊豆鳥島からの客1人を乗せて定期船が出発したときは,は
っきりとした異常は認められていませんでした.10日午前,別の船が島の近くを通り
かかったところ,噴火しているのが発見されました.最も激しい噴火をしていたのは
山頂部の南北約900m東西約300mの火口で,このほかに島の南南西約2kmで海底噴火
が,16日から24日の間に島の北北西でも噴火が起き,湾(兵庫湾)を作っています.
この噴火は非常に爆発的な噴火で,1902年以前の中央火口丘子持山のかなりの部分
を吹き飛ばし,崩壊物が居住地を埋め立てました.マグマ物質は確認されていませ
ん.この噴火で7日に定期船に乗った1人を除き,島民全員が死亡しています.
その後,伊豆鳥島では再び人が居住したことがありますが,1939年の噴火で一般住
民はいなくなりました.1939年噴火は1902年噴火と違い山頂部でのストロンボリ式噴
火が主で,硫黄山を作るとともに溶岩流が北側に流れ下り,溶岩扇状地を作っていま
す.1965年の群発地震活動時に気象観測所から職員が撤退し,伊豆鳥島は無人島にな
っています.
(08/19/02)
川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)
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