火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:東北地方

磐梯山


Question #499
Q 福島県の会津磐梯山とアメリカのセントへレンズ山は同じような噴火をした山のように
見えますが性質的に似ている山なのですか? (04/24/00)

たあさん:大学生:21

A 会津磐梯山は1888年に,アメリカのセントヘレンズ火山は1980年にどちらも山体崩壊 によって,岩屑なだれという現象が起こっています.会津磐梯山では水蒸気爆発が原 因でしたが,セントヘレンズ火山の場合は高粘性のデイサイトマグマが貫入して約 2ヶ月に渡って山体変形が起こった後に地震が引き金となって山体崩壊が起こってい ます.どちらの火山も成層火山で溶岩流や火砕物などが積み重なっていて不安定な構 造をしています.また,どちらの火山も火山ガスによる噴気変質で山体が脆弱になっ ていたことが崩壊の素因になっていたようです. (4/25/00)

宝田晋治(工業技術院・地質調査所・北海道支所)


Question #2218
Q 磐梯山の岩屑なだれ堆積物や地形を見る機会があり、火山のエネルギーにびっくりした次第です。ところで、このような岩屑なだれはいろんな火山で起きた現象と思いますが、磐梯山に近い吾妻連峰でも大規模な岩屑なだれは知られているのでしょうか。吾妻連峰の大まかな形成史と岩屑なだれ堆積物の概要が判りましたら教えてください。 (05/07/02)

初老のやまひめ:会社員:50

A 初老のやまひめ様
 岩屑なだれ,という用語を知っておられるということは,かなり火山の地質や噴火 現象に詳しい方だと思います.すでにご存じでしょうが,岩屑なだれは,火山噴火が 直接,間接的な引き金となって,すでに存在する火山体を大規模に崩壊させ,バラバ ラになった山体構成物,つまり,溶岩や火砕岩の破片が,なだれをうって流れ下る現 象を指します.このような現象は,歴史上の噴火でもしばしばみられます.1792年, 雲仙火山の眉山の崩壊によるものは,島原大変,肥後迷惑と呼ばれる,大津波を引き 起こしました.また,1980年アメリカ合衆国のセントへレンズ火山で起こったものは ,当時,全世界の人たちの目を釘付けにしました.初老のやまひめさんもご記憶のこ とと思います.
 さて,吾妻連峰についてですが,火山体としてみますと,東吾妻火山,中吾妻火山 ,西吾妻火山の3火山が東西に配列したものと見ることができます.茨城大学の火山 研究グループ(鴨志田;1991手記,野口;1995手記,齋藤;2002手記)でも10年近く 地質や岩石を調べていますが,今のところ明らかになっている形成史は次のようなも のです.今後,正確な年代測定値がでると,もっと説得力のある「改訂版」が出せる と思います.
 約150万年前頃,東吾妻火山の東部に初期の山体が形成されていました.東吾妻火 山北東部の形成は60万年前頃まで続きました.一方で,60万年前頃,中吾妻火山では 継森および箕輪周辺の山体,西吾妻では西吾妻,中大巓,籐十郎の山体が形成されま した.50-40万年前頃には東吾妻火山では,今のつばくろ谷から高湯温泉あたりの地 形を作っている溶岩流や,東吾妻山ができました.この時期,西吾妻火山では西大巓 の下部が形成されています.ついで約35万年前頃,東吾妻火山では高山周辺の山体が でき,中吾妻火山では東大巓や中吾妻山が形成され,西吾妻火山では西大巓の山頂が できました.この頃に中吾妻,西吾妻両火山は活動をほぼ終息しました.30万年前頃 ,東吾妻火山の一切経山が形成されました.その後,28-8万年前の間のいつかに今の 浄土平を中心に,東側に開口する大規模な山体崩壊が起こり,岩屑なだれが,今のあ づま競技場などがある東麓に下りました.そして,8万年前頃から浄土平周辺を噴出 口として,溶岩や火砕物の噴出が起こり,約5千年前には吾妻小富士や桶沼ができま した.
 上で述べましたように,岩屑なだれは東吾妻火山の大崩壊で東麓に堆積物を残しま した.しかし,その後の堆積物によってほとんどが埋積されてしまい,直接露頭で観 察できるところはほとんどありません.10年ほど前,東麓の竹の森産廃場建設時に地 表面下10数メートルの所にこの岩屑なだれによると思われる堆積物を見つけました.
 (05/08/02)

藤縄明彦(茨城大学・理学部・地球生命環境科学科) --


Question #2511
Q 僕の住んでる町の近くに磐梯山があるのですが、
もうすぐ噴火するというのは本当ですか?

 後、どのようにして山になったのですか。 (08/20/02)

丸山麟太郎::11

A 1.磐梯山が、もうすぐ噴火するというのは本当ですか?

磐梯山は2000年の8月15日には、400回を超える微小地震が発生しました。 このため、気象庁から臨時火山情報が出されて、警戒を呼びかけました。この地震活 動は次第に収まって、現在は静穏に戻っています。

磐梯山は明治21年に噴火をして、小磐梯山が崩壊し、死者461をだしたことから もわかるように活火山です。日本にある20の活動的な活火山のひとつで、気象庁な どで火山のようすを常に監視しています。

こうした活火山の地下にあるマグマは時々活発になって、地震活動が活発になる、噴 煙が活発になる、そして噴火活動をする、などをくり返しています。マグマが活発に なっても、そのすべてが噴火をするわけでなく、噴火までにはいたらないで活動が収 まることもあります。磐梯山の一昨年の夏はそうした活動と考えられています。

このように活火山であれば噴火活動をくり返すのですが、いつ噴火をするかについて 正確に予想するのは、現在の科学技術からは困難です。しかし、常に観測をしている ので、そろそろ噴火するかも知れないと予想される時は、一昨年のように、警戒情報 を出して、注意を呼びかけることにしています。

現在の磐梯山のようすからは、今日と明日とか噴火をすることはありません。

2.磐梯山は、どのようにして山になったのですか。

火山は地下のマグマが上昇すると、噴火活動をして、溶岩、火砕流、火山弾、火山灰 などを火口のまわりに噴出させます。これが長い期間くり返されると、噴出したもの が火口を中心に積み重なっていって、円錐形の成層火山として成長していきます。磐 梯山は今から90万年前から噴火を開始して、活動をくり返して、現在のような成層 火山に成長しました。

成長した火山は、地下のマグマの活動が衰えると、マグマを地表に噴出せずに、水蒸 気などの噴気だけが出ることが多くなります。そうした時期になって、地下にたまっ たガスが突然放出すると、爆発性が強い大規模水蒸気爆発となって、火山の山体が大 崩壊したりします。磐梯山の明治21年の噴火はこうした活動でした。

このほかにも、成長の止まった火山は水の浸食などで次第に山体が削られて、かつて の大きな成層火山もやがてはその山体は失われていきます。

火山はマグマが噴火活動をくり返して成長し、マグマが衰えるにつれて、やがてその 火山としての地形は失われます。
 (08/24/02)

中村洋一(宇都宮大学・教育学部・地学教室)