火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

現在,諸般の事情により質問の受付を停止しております. 再開に向け準備を進めておりますので,いましばらくお待ちください.
トピック項目表示

QA番号順表示

小中学生から多い質問

指定のQ&A番号へ飛ぶ
(半角数字で入力)

「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


VSJ HOME


Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:東北地方

焼山(秋田)


Question #35
Q 焼山の活動についてですが、専門家の意見が食い違っているそうですが >についてですか?また、今後のみとうしについて言える事を教えて下さい。 (8/22/97)

千田 良道:大学生:21

A 質問の趣旨は,97年8月16日,秋田焼山山頂火口で発生した水蒸気爆発に関し て,これが火山の活動(マグマの活動)に直接関係していたかどうか疑問とし た一部研究者の発言を指しているのだと思います.マスコミがこれを研究者の 見解の相違としてとりあげ東北地方の一部で報道したようです.
 自然現象のある一面だけをとらえればいろんな解釈ができると思いますが, 今回の爆発は中央火口から地下の物質が放出された訳ですからちゃんとした噴 火現象としてよいでしょう.水蒸気爆発は日本のような火山にはしばしば見ら れる現象で,それが拡大して大きな噴火につながった例がいくつもあります. 秋田焼山の活動が今後どう推移するか(マグマが地上に接近しつつあるのかど うか)について,現在,地震学的観測や噴出物(過去の噴出物も含んで)の検 討などの総合的観測観察が気象庁・大学・地質調査所で行われています. (8/27/97)

中田節也(東大火山センター)


Question #262
Q 学校のふるさと教育で「八幡平・焼山の噴火当時の様子について調べ発表することとなりました。 意外にも資料が少なく,困っています。 噴火の仕組みや,その当時の様子,現在の状態など教えていただければうれしいです。 (8/29/99)

11年ぶりの八幡平縦走で疲れている5年担任:教員:38才

A 焼山と八幡平について、それぞれ分けてお答えしましょう。 焼山は一昨年の8月に小さな噴火が起きた火山です。明治や昭和にも何回か小噴火が 起きており,活動的な火山です。焼山火山の噴火活動は約30万年前から現在に至る まで断続的に続いています。そして、時代によって噴火の様子が変化していることが 分かっています。約30万年前から数万年前にかけては安山岩マグマが地下から上昇 し、溶岩や火山灰が噴出して現在の山頂を中心とする直径約7kmのなだらかな形の 成層火山ができました。この活動の初期には、それ以前に存在していたカルデラ湖を 溶岩が埋め立てていったようです。一昨年の澄川温泉の地滑りで現れた巨大な崖で は,焼山の溶岩が湖水に流入し,爆発が起きて生じたスパイラクルというものが観察 されました。成層火山ができた後,今度は山頂火口内でデイサイト質溶岩が数回にわ たって噴出しました。これらは小さな溶岩ドームを形成しました。焼山火口内の鬼ヶ 城はその一つです。その後,現在に至るまで何度か爆発的な噴火が起きています。こ の爆発的噴火の多くは、「水蒸気爆発」と呼ばれるもので,マグマが噴出せずに,泥 などが噴出しています。一昨年起きたのも水蒸気爆発でした。 次に八幡平について説明しましょう。ご質問された方は,八幡平を縦走されて土地勘 をもたれているようですね。もう一度八幡平の地図を見てください。八幡平付近に は,八幡平頂上の他に,茶臼岳,前森山,恵比寿森などたくさんのピークがありま す。実はそれぞれが独立した火山と言ってよく,たくさんの火山が集まった「火山 群」を成しているのです。これらの火山は,現在はもう活動を終了しています。噴火 活動のあった時代も火山により違っており,八幡平山頂付近ができたのは約70万年 前,八幡平スキー場付近の恵比寿森や大黒森は約30万年前,安比スキー場のある前 森山は約15万年前頃の噴火活動でできました。それぞれの火山についても噴火の歴 史があるのですが,詳しいことは分かっていません。言えることは、どの火山も玄武 岩〜安山岩質の溶岩の噴出によって形成したということと,現在は活動を終えて山体 が消えつつあることです。 八幡平についてもうひとつ付け加えておきます。八幡平では過去に巨大な地滑りが何 度も起きています。その規模は一昨年の澄川どころではありません。巨大地滑りにと もなう大きな崖が至る所で見られます。八幡平山頂の南側にも大きな滑落崖がありま す。八幡平の火山体は,河川によるゆっくりとした浸食よりも、このような地滑りに よって消えゆくようです。ところで,八幡平山頂付近には火口と思われる池がたくさ んあります。この火口は東西に細長い列をなしています。この列の方向はすぐ南の滑 落崖の方向とよく一致しています。このことから,巨大地滑りに伴って生じた亀裂に 沿って,地下から水蒸気が上昇し,水蒸気爆発が生じて火口列ができたと考えている 研究者もいます。 なお、私がお薦めしたい資料は、(財)自然公園美化管理財団発行,(財)自然環境 研究センター編集の「新・美しい自然公園14八幡平」です。 (8/31/99)

大場 司(東北大学・理学部・地球物質科学科)