こんにちはナオッグさん.火山の分類ということですね.
昔はもっぱら火山の地形だけで分類していました.例えばシュナイダー(1911)のコニ
ーデ,トロイデといった分類は今でもマスコミや観光地の説明などで残っています.
しかし今は表面の地形だけでは,その火山の成り立ちを必ずしも反映していないこと
がわかってきたので,シュナイダーの分類は学術用語としては使われません.現在で
は内部構造により注目した,成層火山,盾状火山などの用語が使われます.
盾状火山は粘性の低い,あまり爆発的噴火をしないマグマが,主に溶岩となって重な
り,傾斜が緩やかな山体を作った火山です.ハワイが盾状火山の典型で,英語では
Shield Volcanoです.一方,成層火山は粘性がやや高く,爆発的噴火による熱いマグ
マのしぶき(火砕物)の割合が多いため,溶岩と火砕物の互層からなる傾斜の大きな山
体を持つ火山です.英語ではStrato Volcanoです.成層火山はスコリア丘(Scoria
Cone, Cinder Cone)や溶岩ドーム(Lava Dome)などを火山体全体として含むことが多
いので,外国ではComposit Volcano(複合火山)と呼ぶことがあります.富士山や三宅
島など日本の火山の大部分はこの成層火山です.
釣鐘状火山というのは火山学用語では使われません.おそらく溶岩ドームのことだと
思いますが,粘性の大きなマグマが爆発的な噴火をすることなく地表に噴出してでき
ます.有珠山の昭和新山や雲仙の平成新山が典型例です.マグマが地下を移動すると
きは板状になって移動すると考えられていますが,この板状のマグマが地表に達する
と,割れ(Fissure)噴火を起こします.粘性の低いマグマの噴火に多く見られます.
1983年の三宅島噴火がその例です.
カルデラ(Caldera)は,噴火や崩壊でできた大きな火口状地形のことで,おおよそ直
径1.6-2km以上のものをいいます.大量のマグマが爆発的な噴火で一気に噴出してで
きたもの(例:阿蘇カルデラ)や,噴出物は多くないが地下でどこかにマグマが移動し
てしまってできたもの(例:2000年三宅島噴火のカルデラ)などがあります.
これらの火山の形の違いは,どんな噴火様式で,どんな噴出物を,どのくらいの噴出
率で噴火するかで決まってきます.その噴火様式を決める大きな要因としてマグマの
粘性がある,と理解されればいいかと思います.なお,Q&Aの#3010にもありますよう
に,自然は完全に分類できるものではなく,中間的なもの,複合したもの,例外的な
ものが少なからず存在します.学校の先生にはマグマの粘性だけで一意に火山の形が
決まるわけではないということも,頭の片隅にでも記憶にとどめておいていただける
と幸いです.
(10/29/02)
川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)
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