火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:東北地方

鬼首カルデラ・鳴子カルデラ


Question #2579
Q 初めて質問させていただきます。

宮城県の鳴子から古川市(東北自動車道付近まで)にかけての江合川両岸、
概ね迫川を北限、田川(鳴瀬川支流)を南限とする地域で、
水系がほぼNW-SE方向に並行する非常に特徴的な地形が見られます。
この地域の地質は主に凝灰岩類を主体としているはずですが、
この地形がどんな由来でできたものなのか、ずっと不思議に思っていました。
(地質に関しては文献等検索しましたが、地形の成因までは見つけられませんでした。)

周辺の地形を巨視的に見ると、この地形の分布地域の北西端にはいわゆる「鬼首カルデラ」が
ありますが、この鬼首カルデラから噴出物が流れ出た跡のように見えることに気が付きました。
カルデラ外輪山の標高を見ても、西半部は標高1000mクラスのピークのはっきりした山なのに
対し、東半部、つまり問題の地形に面した鳴子〜花山側では標高500〜600m程度しかなく、
地形的にも比較的なだらかで、いかにも火山噴出物が流れ出ていった跡のような地形に思われます。

これはやはり火砕流等の痕跡なのでしょうか?
問題の地形を成す凝灰岩等は、鬼首火山の火砕流堆積物と解釈していいのでしょうか。
鬼首カルデラの活動史も含め、周辺地形との関連を教えていただければ幸いです。
よろしくお願いします。

(09/02/02)

Takahashi:会社員(土木関係・地質調査):32

A
 地質関連のお仕事をされておられるようですので、かなり専門的な知識をお持ちの ようですね。
 さて、まずこの地域の地質についてですが、お考えのとおり主に鬼首カルデラ由来 の火砕流堆積物から成っています。また、鬼首カルデラの南には、より新しいけれど 地形があまり明瞭ではない鳴子カルデラがあり、そこからの火砕流堆積物も鳴子−古 川間に堆積しています。
 火砕流は一般に高い場所から低い場所へ流れ下ります。そのため、もともと標高の 高い場所にはあまり流れず、低い場所へ流れ下ります。このあたりの地質・地形を見 てみると、鬼首カルデラの北〜西側、および鳴子カルデラの南側には古い地層がかな り高い標高まで分布し、山地を形成しています。一方、南東側の江合川あたりは、も ともと標高が低かった場所です。そのために火砕流は選択的に南東側に流れ、堆積し たようです。北東側や南西側にも一部流下し、堆積しています。なぜ南東側が低地で あったのかについては、はっきりとしたお答えはできないのですが、(1)北西〜南 東方向に伸びる構造線(仙台−鳥海山構造線、本荘−松島構造線)の構造運動の影 響、(2)古い時代のカルデラ(花山カルデラ)の影響などが考えられます。
 さて、カルデラから噴出した大規模な火砕流が堆積した場所には、広大な台地(火 砕流台地)が形成されます。鬼首・鳴子カルデラからの火砕流が堆積した直後には、 鳴子−古川間には広大な火砕流台地が形成されていたと考えられます。その火砕流台 地の名残が、鳴子町上原や同町向山などの丘陵地上に見られる平坦面です。このよう な火砕流台地は一般にカルデラ側から遠方に向かい緩い傾斜を持ちますので、鳴子− 古川間の火砕流台地は北西から南東に向かって緩く傾斜していたはずです。
 ご質問の中で、特徴的な水系について触れられていましたね。水は高いところから 低いところへ流れ下りますので、火砕流台地の傾斜方向と平行に川の流れができま す。そのため、しばしば火砕流台地の傾斜と平行に浸食谷が発達します。このように ご指摘のNW-SE方向に水系が平行する地形が形成されたと考えられます。同様な地形 は、北海道支笏湖の東側の火砕流台地でもみることができます。
 (09/11/02)

大場 司(東北大学・理学部・地球物質科学科) --