火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:東北地方

縫道石山


Question #3997
Q 下北半島に縫道石山(標高626m)という、ごつごつした岩山があります。石英安山岩とか、デイサイトととかで出来ていると聞きました。岩の小さな隙間や穴などに綺麗な水晶の結晶が見えます。どのようにして、この奇怪な山が出来たのか、素人にも分かりやすく説明して戴けないでしょうか。また、この山頂の南西約900mにコの字型をした小さな岩山(地元ではババ岩と呼ばれている標高424mの峰)があります。こちらのほうは、ごつごつしていませんが、恐竜の背中みたいで急峻です。この小さな岩山と縫道石山との間に何か関係があるのでしょうか。縫道石山はアメリカのワイオミング州にあるデビルスタワーの形にもどこか似ていますが、山のできかたに似たものがあるのでしょうか。 (06/06/03)

空想好きな地元のハイカー:会社員:51

A
 縫道石山はとても印象的な姿をした岩山ですね。私自身は残念ながら登ったことが なく遠望しただけですが、空想好きな地元のハイカーさんはよく登られるのでしょう か。
 さて,これまでの研究によると縫道石山を作っている岩石はおっしゃる通りのデイ サイト(石英安山岩も同じ種類の岩石をさす用語ですが,最近はあまり使われません )で,檜川層[ひのきがわそう](一部の文献では目滝川石英安山岩)と呼ばれる地層に 属しています。岩石の年代は測定されていませんが第三紀中新世(約2300万年前から 500万年前)に形成されたと考えられています。しかし山としての縫道石山ができたの は,ずっと新しい時代でしょう。
 縫道石山の周辺の地層はおもに同じ檜川層に属する凝灰岩からできています。縫道 石山はこの凝灰岩を貫いて上昇したマグマの通り道(火道)で固結した火山岩が,まわ りの凝灰岩よりも硬いために侵食に耐えて残ったものであると考えられえています。 このような山体は火山岩頚(volcanic neck)と呼ばれ,日本でも各地に見られます(た とえば本Q&Aの#618)。なお山頂部は角礫化した岩石からなると報告されていますの で,おそらく火山体の下の比較的浅い部分に位置していたのでしょう。そのような場 所では火山活動の後に地下を高温の水(熱水)が循環している事が多く,ご覧になった 水晶はそのような活動によりできたのかもしれません(もっと後の時代のものかもし れません)。
 ババ岩とおっしゃっている標高424mの峰も同じ時代のデイサイトからなるとされ ていますので,やはり侵食されにくいために山として残っているのでしょう。見かけ の類似を指摘なさっているワイオミング州のデビルスタワーも,貫入した火成岩がま わりの軟らかい堆積岩が侵食されることによって露出したものと言う点で同様な成因 と考えられているようです。ただし火山岩頚なのか,もっと水平方向に広がりがある 岩体が侵食されて一部分だけが残ったものなのかについては議論があるようです (http://www.nps.gov/deto/geology.htm ,でき方を示すスライドショーが参考にな ります)。
 (06/29/03)

佐々木  実(弘前大学・理工学部・地球環境学科)