身近の火山:北海道・千島
有珠山 |
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Question #373
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Q |
私は水質検査の仕事をしておりますが。水道水源ダムの過去の水質データを
調べていた際,窒素濃度が急激に高くなった年がありました。この年は1977年で,
有珠山の噴火がありました。当地は同山より北東約50km程の所にあり,降灰があ
りました。
有珠山の噴火により,窒素酸化物(硝酸等)が産生ないし噴出し降雨や降灰によ
って当地まで到達する可能性はあるのでしょうか?お教え願います。また,1977
年の有珠山噴火についての気象データ,環境データ等をご存じでしたら所在も含め
お教え願います。
(01/09/00)
TAK:公務員:30
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A |
火山灰に硝酸イオンが付着していた事例は雲仙普賢岳の場合に認められました(文献
;赤木,山本(1995):Okayama University Earth Science Reports, vol.2, p55-62
)。しかしこの硝酸の起源については不確定です。すくなくとも火山ガス中には窒素
化合物が少ないので硝酸がマグマ起源である可能性は低いと思われます。そうすると
起源として,大気中に存在する窒素酸化物が変化して火山灰に硝酸として付着したか
,あるいは火山灰に肥料起源の硝酸イオン含む土壌が混入したか,という可能性が考
えられます。
1977年の有珠山噴火についての気象データ,環境データですが所在等にかんして存じ
ません。気象台あるいは北海道立地下資源研究所が把握しているかも知れません。
(1/12/00)
大場 武(東京工業大学・草津白根火山観測所)
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Question #496
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Q |
今噴火している有珠山は最初「水蒸気爆発」とニュースで聞きましたが、過去にある有珠山の爆発では通称何爆発というのがあったのですか。それは何年ですか。
(04/23/00)
田中 さとみ:中学1年生:12
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A |
火山が噴火すると,聞き慣れない言葉がいくつかでてきますね.
水蒸気爆発については,#446番の質問に対する三宅先生の回答を参考に
してください.
有珠山では今回の噴火を含めて,これまでに8回の噴火の記録があります.
噴火した年は,1663年,1769年,1822年,1853年,1910年,1944-45年,
1977-78年,それから2000年です.このうち山のふもとで噴火が起きたのが,
1910年,1943-45年,それと今回の噴火の3回で,このほかは全部山頂で
噴火が起きています.
これまでの山のふもとからの噴火は,「水蒸気爆発」で始まっています.
今回の有珠山の3月31日の最初の噴火は,はじめは水蒸気爆発と考えられて
いましたが,あとになって軽石などの高温のマグマからできた物質がふくま
れていることがわかり,「マグマ水蒸気爆発」だったことがわかりました.
これまでの噴火では,最後に地面が盛り上がって新しく山を作って終わって
います.山はマグマが地面を押し上げてできたものですが,1910年の噴火で
できた明治新山のように,マグマが地面を押し上げただけで地表にまで出てこな
かったものは「潜在ドーム」,昭和新山のように,地表まで出てきたものが
「溶岩ドーム」です.
一方,山頂からの噴火では,火口から軽石や火山灰でできた噴煙を空高く(高さ
10km以上にもなります)吹き上げる,「プリニー式噴火」で始まっています.
プリニーというのは,1900年以上前に火山の噴火の記録を書いた,プリニウスと
いう人の名前からとられたものです.有珠山ではプリニー式噴火のときに,
「火砕流」も起きています.この火砕流は,雲仙の噴火のときの溶岩ドームが
崩れてできる火砕流とは違って,吹き上げられた噴煙が上がりきれずに落ちてきて
できるタイプの火砕流が主です.またプリニー式噴火のあとには,潜在ドーム,溶岩
ドームを作って終わっています.1977-78年の噴火では,山頂で「マグマ水蒸気
爆発」も起きています.はっきりした記録はありませんが,おそらくこの他の
山頂からの噴火でも起きているでしょう.
このように,火山の噴火では,時間とともにどんな噴火が起きるのかが変わって
いくことも珍しくありません.ただ有珠山の場合は比較的変化のパターンは
決まっています.
(4/25/00)
川辺禎久(工業技術院・地質調査所・火山地質)
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Question #484
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Q |
有珠山の噴火でよく使われるカリフラワー噴火とは、学術用語ですか?
(04/20/00)
富士山:公務員:40歳
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A |
カリフラワー噴煙とは学術用語としては定義されていません.火山灰を含む噴煙の
膨張ち移動の(比較的乾いた暗灰色の拳状の雲の塊が勢い良く動いてモクモクと成長
する)仕方がカリフラワーのように見えるので例えて表現しているものです.有珠山
の3月31日の噴火開始の時,火山灰を多量に含む噴煙に特徴的に見られたもので,雲
仙普賢岳の火砕流に伴った噴煙(灰かぐら)でも見られた特徴です.
4月12日頃から有珠山で観察されている噴煙は,これまでの土砂噴出のような水蒸
気爆発(あるいはマグマ水蒸気爆発)よりは水気が少なくなって,火口の直上で仕掛
け花火が炸裂するような爆発になりました.この爆発時の噴煙の動きが小さなカリフ
ラワー状に見えるというわけです.これは火山灰噴煙に見られる典型的なカリフラワ
ー型とは規模の点で大きく異なりますが,形態を表現しやすいのでこの言葉を使用し
ているのだと思います.
有珠山では,今後,火山灰を数km以上も勢い良く噴き上げる噴火に移行するのかど
うかが注目されています.昭和新山を作った噴火では,水蒸気爆発期後に立ち上った
勢いの良い火山灰噴煙から火砕サージ(火砕流の一種)が発生しました.今回の噴火
でもこれを警戒しているわけです.
(4/20/00)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #643
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Q |
有珠山は、火山性地震が起こった後に山腹から噴火しましたが
岩手山は、火山性微動は確認されながら未だに噴火していません。
北海道大学の岡田教授は、「有珠山は、嘘をつかない山と言いま
したが、火山によって噴火する性格があるのですか?逆に、火山
性微動があれば、どんな地形でも噴火するのですか?
(06/02/00)
たあさん:大学生:21
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A |
有珠山は,珪酸分の多いマグマの火山としては頻繁に噴火を起こす世界でもめずら
しい火山です.しかも,過去の噴火の前には必ず地震が群発しました.この癖を利用
して今回も噴火を上手く予想できたわけです.
火山性微動はいくつかの理由でおこると考えられています.今回の有珠山の噴火前
には,はっきりとした火山性微動は観測されていません.逆に,火山性微動があれば
必ず噴火をするわけでもありません.
火山性地震や火山性微動が多発してもなかなか噴火には至らない火山がいくつもあ
ります.今のところ,岩手山もその例です.噴火を起こすには,山の地形やマグマの
性質によるのではなく,山ごとにもっと複雑な背景があるようです.山によって噴火
にまで至る経緯はさまざまです.
(6/3/00)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #530
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Q |
最近はテレビにあまり有珠山の噴火についての話題も少なくなってきましたが
有珠山の噴火はもう終わったのでしょうか。
今回の噴火は新しいマグマが関係していると聞いたんですが
それはどうやってわかったのですか?
(05/01/00)
北高に合格しました:高校生:15
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A |
有珠山では,現在も,噴煙を活発に上げる活動がまだ続いています.報道される頻
度が減ったのは火山活動がおさまったからではありません.ニュース(特にスクープ
)として流したいほどの大きな変化が見られていないためです.火山活動が長期化す
ると報道される頻度が減るということは4年以上続いた雲仙普賢岳の噴火でもあった
ことです.
噴火でしばしば起こる水蒸気爆発では,マグマが直接地表には噴出せず,水蒸気と
一緒に火口付近の古い堆積物が粉々になって吹き飛ばされると考えられています.今
度の有珠山の噴火では,初期(3月31日)の噴出物に新しいマグマが含まれているこ
とが分かりました.これは,噴火直後に降ってきた灰や湖岸に流れ着いた漂流物の中
に泡の空いた軽石が含まれていたためです.軽石はいってみればマグマのしぶきのよ
うなものです.当初,火口のそばにあった古い軽石が水蒸気爆発で吹き飛ばされたの
ではないか,との疑いもありましたが,詳しく調べた結果,全く新しい物質であるこ
とが分かりました.3月31日の噴火では,勢いのあるモクモクの火山灰噴煙が高さ
3.5kmまで上昇しました.これは新しいマグマが混ざっていて温度が高かったためで
あるというわけです.その後1ヶ月間の活動では,マグマのしぶきがほとんど入って
いないようです.今回のマグマに関する詳細は,いくつかのホームページで公開され
ていますので参考にして下さい.例えば,工業技術院地質調査所に以下があります.
http://www.gsj.go.jp/~tomiya/magma2000.html,
http://www.gsj.go.jp/~imiyagi/Works/Event/Usu2000/petrol/0331/sum/
(5/1/00)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #718
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Q |
有珠山の場合、噴火までに時間がかかると言われていました。一方で三宅島の場合は、数時間以内に噴火するだろうと言われていました。
このことは何を意味しているのでしょうか。教えてください。
(06/29/00)
あい:大学生(1回):19
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A |
有珠山と三宅島は噴火と噴火の間がそれぞれ30年ぐらいから20年ぐらいと比較的短
い火山です。このため、現在までに何回も噴火が観測された経験があります。それら
の記録に基づいて次の噴火がいつ来るのかおおよその目安をつけることができます。
これに基づいて、有珠山や三宅島では、地震や地殻変動の観測が強化されていました
。
有珠山の場合は、地震活動が始まってから早くて1日あまり、遅い場合で数ヶ月で
噴火が起こるという癖がありました。そして、3月の噴火も地震が起こりはじめて4
日ほどで噴火しました。一方、三宅島の場合には遅くても6時間くらいの短さで噴火
が起こる癖がありました。今回は、「噴火と思われる現象」が起こるまでには半日程
度もかかりました。
一方、噴火の経験が少ない火山では、地震活動が起こってから噴火が起こるまでの
時間をきちんと予想することができません。例えば、雲仙普賢岳では地震活動が起こ
ってから噴火が始まるまでには1年近くもかかっていますし、岩手山では地震活動が
ここ数年続いていますがまだ噴火は起きていません。
このように、地震が起こり始めてから噴火が起こるまでの時間の長さは火山ごとに
異なります。この原因は、マグマの性質(粘り気など)、岩盤の性質(地下水が多少
など)、そして、火山のある場所におよぶ地殻内部の力などが複雑に関係しているの
だと考えられています。ひとつの火山であれば、前の噴火と比較的よく似た性質のマ
グマが次も噴出することが多いので、噴火前の地震などの現象もよく似た状態で起こ
ると考えられる訳です。
(6/30/00)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #678
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Q |
私は鹿児島に住む元理科の教師です。
今回の有珠山の噴火については,
近くに桜島という火山もあることもあって,大変興味深くニュースなど
見てまいりました。
さて,質問ですが,
有珠山は約30年に1回の周期で噴火しているという話を聞きました。
しかし,今回の噴火は23年目ということで,いつもの周期より若干早いように思います。
そこで,今回噴火の周期が早まったのは,
噴火の規模や場所に関係があるのでしょうか?
お教え下さい。
(06/20/00)
ash:主婦:30
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A |
有珠山は2万年〜1万5000年前ころから活動をはじめ,玄武岩質〜安山岩質の溶岩,
スコリアが小さな富士山型の山体をつくったあと,7000〜8000年ほど前に山頂部が崩
壊し,岩なだれを発生しました.その後長い休止期間をおいて,江戸時代の1663年に
噴火活動が再開し,デイサイト質〜流紋岩質のマグマを噴出しました.それ以降1769
年(前の噴火の終了から105年),1822年(同52年),1853年(同30年), 1910年(
同56年),1943年(同33年),1977年(同32年),そして今回2000年(同22年)に噴
火をしました.
御質問にあるように,確かに,江戸時代以降では過去3回,30数年の間隔をおいて
噴火することがありましたから今回の噴火の前から,多くの火山研究者も経験からこ
の先10年以内に噴火の可能性が高く,注意深く観測する必要があるとは考えていまし
たが,やはり噴火するのはもう少し先だと思っていた人が多かったと思います.
さて,噴火の間隔の規則性について,残念ながら現在,そのしくみを充分説明がで
きているわけではありません.
一般に噴火がおこるのは,
1. マグマ溜まりの中には,もっと深いところから絶えず少しづつマグマが供給され
るが,マグマの圧力がたかまり,耐えきれなくなったところで,地表に達する通り道
を作って,噴火する.
2. マグマ溜まりの中のマグマが過剰でなくても,火山活動以外の理由(たとえば広
い範囲にわたる地殻変動)によって,マグマ溜りにかかる力が増してしぼりだされて
噴火に至る.
3. 火山活動以外の理由(たとえば広い範囲にわたる地殻変動)によって,逆にマグ
マの通り道にかかる力が弱くなって容易に上昇できるようになって噴火に至る、など
の場合が,考えられます.
1.のようなしくみが続いていて,しかもマグマの供給量が一定ならば,噴火が同
じような間隔をおいて起こることは理解しやすいと思います.
そこで,今回の有珠山の噴火を考えてみます.
もし,最近の有珠山のマグマの供給量自体が増加して1.のしくみで噴火に至った
とすれば.噴火の規模(噴火にかかわるマグマの量)は特別に小さいということはな
いと考えられます.
また,2または3の理由で噴火したとすれば(かつマグマの供給量が一定ならば),
前の噴火以降マグマ溜りの中に蓄えられていたマグマの量は少ないと考えられるので
,全体としてやや小規模な噴火で終わる可能性もあります.
マグマはその時その時に最も楽な(仕事要の少ない)出口(通り道)を探して上昇
すると考えられますので,噴火の間隔と火口の場所はあまり関係がないのではないで
しょうか.
ついでながら,三宅島火山では21〜22年(あるいはその2倍,3倍にあたる40数年,
60数年)の間隔をおいて噴火した例が多く,前回1983年から21年後の2004-5年前後に
噴火するのではないかと注目されています.
(6/21/00)
津久井雅志(千葉大学・理学部・地球科学)
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Question #1867
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Q |
夏休みに虻田町の火山科学館に行ってきました。
1977年の噴火の時の火山灰と2000年の火山灰が展示されていましたが、色も形も違います
これは噴火の種類の違いによるものでしょうか? 1977年の噴火はプリニー型、2000年はマグマ水蒸気爆発と聞いておりA1997年のものはマグマが多く、2000年のものは火口付近の不純物が混じり、水蒸気で細かな石になったもの思いますがいかがでしょうか?
(09/19/01)
Issei:高校1年:15
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A |
その通りです.火山灰の色や形,含まれる粒子の種類は噴火のタイプによって決まっ
てきます.
1977年の噴火では大小様々な爆発が起こりましたが,そのうち軽石を降らせるような
大きな爆発は"プリニー式噴火"というタイプの噴火でした.このタイプの噴火では,
マグマがそれ自身含んでいたガス成分によって発泡(カルメ焼きができる場面を想像
してみて下さい)し,爆発的に噴火します.そのときに吹き飛ばされる火山灰は,発
泡した"マグマそのもの"のしぶきが急に冷やされて固まったものがほとんどで,それ
らは良く見ると細かい気泡をたくさん含んでいたり,ガラスのように尖っていたりし
ますし,色はマグマの組成を反映した色(有珠のようなデイサイト質マグマでは白〜
灰白色)になります.
一方,2000年の噴火は,"マグマ水蒸気爆発"あるいは"水蒸気爆発"というタイプの噴
火でした.このタイプの噴火では,基本的にはマグマが地下水に接触することによっ
て地下水が急に沸騰させられて爆発(線香花火の火の玉をバケツの水に落としたとき
の様子を想像してみて下さい)します.このときに吹き飛ばされる火山灰の多くは,
マグマの通り道や火口付近の地層が砕かれて混じり込んだ様々な物質からなります.
そのため,良く見ると火山灰粒子には様々な色・形のものが入り交じっています.有
珠火山2000年噴火の灰の場合,1977年のものに比べて全体に黒っぽく(場合によって
は赤茶っぽく)見えたのではないでしょうか?
なお,有珠火山2000年噴火の爆発の中では,一番最初の3月31日噴火だけは特別でし
た.このときの"マグマ水蒸気爆発"では,火山灰のうち約半分も"マグマそのもの"が
含まれていました.このため,典型的な"マグマ水蒸気爆発"と"プリニー式噴火"の中
間的な性質を持つ噴火だったのではないかとの説が提案されています.
参考までに,"マグマそのもの"が固まったものは「本質物」と言い,混入物は「異質
物」とか「類質物」などと言います.火山灰を調べる時には,どの粒子が「本質物」
であるかを突き止めることがまず大事になります.
(10/15/2001)
東宮昭彦(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)
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Question #2510
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Q |
この間家族でうす山に行きました。その時とてもくさいにおいがしましたが、
なんのにおいですか?
歩いているととてもあつかったんですが、
ふんかのところにたまっている水はあついのですか?
かんたんなしつもんでごめんなさい。
(08/20/02)
小林愛美:小学3年生:9
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A |
においは,りゅうかすいそ(硫化水素,化学式ではH2S)か,にさんかいおう(二酸
化硫黄,化学式ではSO2)というガスのためだと思います.この二つのガスはかつか
ざんで発生し,すごいなにおいを出します.体によくないので,あまりたくさんすわ
ないで下さい.
うす山はかつかざんで,地面の下の深いところにはマグマがあります.このマグマに
よってあたためられた地下水が地面まで上がり,わきだすこともあります.そのよう
なところは沼のようになり,足がはまってヤケドすることがありますので,ちかよら
ないようにして,きをつけてください.
(08/20/02)
大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)
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Question #2925
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Q |
私たちは、りかの授業で、火山の大地のつくりと変化について、勉強しています。
そこで、有珠山の、噴火による大地の変化を調べています。
たとえばどんな変化があったか教えてください。
(10/15/02)
浦河町立浦河小学校6年生:小学生:12才
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A |
浦河小学校6年生の皆さん、こんにちは。
有珠山の噴火による大地の変化ですね。有珠山は実に様々に大地を変化させてきまし
た。
まず1万数千年前から有珠山は噴火を開始し、地下からマグマを出しました。そのマ
グマが固まった溶岩などが積み重なって、小型の富士山のような山を作りました。こ
のようにマグマを出して、それが火口のまわりに積み重なって山を作るというのも
「火山による大地の作り方」のひとつです。そして数千年前に有珠山の山の南側が大
きく崩れてしまいました。これにより有珠山の一部はなくなってしまいましたが、そ
の崩れたものは南側の山麓に広く溜まっています。今の伊達市善光寺あたりには、元
々有珠山を作っていた山の一部が小山を作っていたり、海岸近くの島になっていま
す。これも大地の変化です。
その後も噴火は続き、山の成長もあったようですが、間も無く長い休みの時期に入り
ました。ところが江戸時代の西暦1663年から現在まで続く噴火活動がはじまりまし
た。最初の1663年の噴火ではマグマを軽石として放出して、その軽石は遠く日高地方
まで分布しています。浦河や少し北の方では、崖の上の方に白い火山灰として見える
はずです。この噴火では大量のマグマが出てしまったので、山頂に大きな火口ができ
てしまいました。それから2年前の噴火まで何回も噴火しています。それぞれの噴火
ではやはり軽石を出していますが、それに加えて非常に粘り気のあるマグマが地表に
向かって上昇してきました。そしてあるときにはマグマが地表に顔を出して溶岩ドー
ムを作ります。この一例が昭和新山ですね。また顔を出さなくても、地表近くまで上
がってくることで地面を押し上げて山をつくります。これが明治新山や2年前の噴火
でできた山ですね。このようにマグマが地面を押し上げるときには、広い範囲で地面
が盛り上がったり(隆起)、割れ目や地面の段差(断層)ができたりします。また地
面は上下方向だけではなく、水平方向にも動きます。そのため線路や道路が曲がった
りもします。これらの地面の動きのことを「地殻変動」と呼んでいます。これも「火
山による大地の作り方」で、有珠山の場合はこの「地殻変動」で有名ですが、それ以
外の方法でも「大地を作ってきた」ということも覚えておいて下さい。
(10/15/02)
中川光弘(北海道大学・大学院理学研究科・地球惑星科学専攻)
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Question #4109
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Q |
授業で有珠山の2000年噴火について調べているのですが、2000年噴火で潜在ドームが形成されたといえる根拠は、単純に、マグマが地表まで出てこなかったからということでいいのでしょうか?それに具体的にその潜在ドームが形成された場所は、どこにあたるのでしょうか?
(07/27/03)
基礎から勉強したい:大学生:18
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A |
潜在ドームとは,粘性の高い(ねばりけのある)マグマが地下の浅いところまで上
がってきて地盤を隆起させた(持ち上げた)ものの,地表までは顔を出さなかったも
のを言います.従って,次のような観察事実があれば潜在ドームと考えてよいでしょ
う:(1) 噴火活動に伴ってドーム状の隆起地形ができた;(2) その付近で噴気や温泉
などの地熱活動が見られるようになった(浅いところにマグマが上がってきた証
拠).有珠の2000年の活動では実際にこれらの現象が見られましたので,潜在ドーム
が形成されたと考えられています.なお,もしこうした隆起地形からマグマ(溶岩)
が顔を出せば,それは溶岩ドームと呼ばれますが,昭和新山はその有名な例の1つで
す.
2000年噴火の潜在ドーム(虻田新山)の出来た場所は,道央自動車道の虻田洞爺湖
ICから北東に1kmほどの所の有珠山西麓です.ここは,2000年噴火で繰り返し爆発の
起こった西山西麓火口群の場所に当たっています.現在この場所は公園として整備さ
れ,火口や噴気,隆起地形などを間近に観察できる観光スポットとして多くの観光客
が訪れるようになっています.
(08/18/03)
東宮昭彦(独立行政法人・産業技術総合研究所・地質調査総合センター)
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