火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:北海道・千島

礼文島・桃岩


Question #2294
Q 先日礼文島観光に行ってきました.そのとき「桃岩」という桃の形をした岩を遠くから見ましたが,その裏には高」というたまねぎの皮状に割れ目の入った丸い形の岩が露出していました.溶岩かマグマが冷えて固まったものだと思いましたが,崖になっていて近づけませんでした.実際あれはなんだったのでしょうが?どなたかご存知の方教えてください. (06/11/02)

ちたん:会社員:29

A 礼文島の桃岩は、御質問に書かれているように、マグマが冷えて固まったものです。 もう少し詳しく説明すると、粘性の高いマグマ(シリカに富むデイサイト質マグマ) が冷えて固まったものです。
 粘性が高いマグマが地表に噴出すると、お饅頭のような形のドームを作ります。こ れが溶岩ドームです。九州の雲仙普賢岳の噴火(1990-1995年)で形成された平成新 山や、北海道の洞爺湖の近くにある昭和新山、屈斜路湖にある硫黄山などが、有名な 溶岩ドームです。
 さて、礼文島桃岩のドームは、これらの溶岩ドームと少し異なります。普通の溶岩 ドームは、マグマが地表に顔を出してから成長しますが、桃岩はマグマが地表まで到 達しないで「地下」でふくらんで成長したドームです。桃岩の場合、正確に言うと「 地下」ではなく、「海底下」でした。
 桃岩ドームは、礼文島がまだ海の底だった頃(1300万年前)、浅海の底に堆積して いた泥や砂の中にマグマが貫入し、ドームの内側からふくらむように成長したことが 明らかにされています。ドームの形成・固結後、かなり時間がたってから、この地域 は隆起し、礼文島になりました。ドームのまわりの泥や砂は柔らかいので浸食され、 硬いドームだけが残ったのです。
 桃岩の「桃」の形はドームの外形そのものです。桃岩の西側(裏側)は浸食され、 ドームの内部(縦断面)がむき出しになっています。「丸い形の岩」はドームを輪切 りにした面です。この面に出ている「たまねぎの皮」は、ドーム内部の流理構造(マ グマの流れでできた縞模様)です。このように内部構造がむき出しになっているドー ムは世界的にめずらしく、地質学的に貴重です。
 (06/13/02)

後藤芳彦(東北大学・地球工学) --