火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

身近の火山:国外の火山

キラウエア火山(ハワイ)


Question #30
Q 私はテレビや写真でしかマグマを見たことがありません。特別な許可なくして、近距離からマグマを肉眼で観察できるところはあるのでしょうか? 学問的な質問でなくて申し訳ありません。 (6/12/97)

近藤 昌也:団体職員:29

A
 マグマといっているのはおそらくオレンジ色に輝くドロドロしたもののこと だと思いますがこのような状態の溶岩は1000℃くらいの温度をもっています 一般に、近距離まで近づくことは危険です。
 そのような溶岩流は火山噴火の際に地表に現れるものですから突然の噴火に 遭遇できれば、許可無くして観察できる可能性があります。しかし、いつ何処 で噴火が起こるかを予測することはできませんし、そのような可能性の高い場 所で待ち受けることは非常に危険です。
 ところが、地球上の火山の中には、定常的に噴火をし続けている火山がいく つかあります。そのような場所では、「マグマ」を見ることができる場合があ ります。
 ハワイ島のキラウエア火山では1983年からずっと噴火が継続中です。溶岩流 の流れは気まぐれで、日々刻々と変化しますので、観光客の行ける場所のすぐ そばまで流れてくることもあります。そのような溶岩流を見るための展望台な ども整備されています。ヘリコプターで上空から溶岩流を見るツアーがあっ て、たいそうな人気です。もし、これを肉眼で近距離というのならば、特別 な許可無く、お金を払えば誰でも見ることができるわけです。
 1950-51年の伊豆大島三原山の噴火では、多くの人がオレンジ色のマグマを 見に行き、魅せられたように、溶岩湖に身を投げる人が続出し、大きな社会 問題となりました。というようなこともありますので、十分にお気をつけ て。

千葉達朗(アジア航測株式会社)


Question #86
Q 先日、ハワイのキラウエア火山にいってまいりました。黒い溶岩を眺めているうちにふと気がついた のですが、日本の黒い溶岩と違います。なぜ、キラウエア火山の溶岩は緑色の光沢を持っているの でしょうか? 教えてください。 (6/8/98)

熊本のお姉さん:主婦:25

A
 これは困りました。私はハワイに行ったことがないし、緑色の光沢といって もそれだけではどんなものか想像がつきません。たまたま熱水変質を受けて、 緑色になった部分を見たのかもしれないし、ガラス質の溶岩の表面近くでの光 の散乱のために偶然緑色に見える溶岩なのかもしれないし、かんらん石の斑晶 を多量に含む溶岩で、その部分が緑色に見えるのかもしれないし、はたまた、 表面にコケ類や菌類がへばりついていて緑色に見えるのかもしれません。


 明るい緑なのか、暗い緑なのか、割った面が緑なのか、自然の面が緑なの か、緑色の粒が多量に入っていて緑に見えるのか、更に割っても中まで緑なの か、その辺の、もう少し詳しい観察がないと、私には、この質問には答えられ ません。大学にあるハワイの溶岩の標本は、普通の黒い玄武岩です。 (6/8/98)

石渡 明(金沢大学・理学部)


Question #187
Q はじめて質問させていただきます。 CG制作に携わるものですが、海底噴火の様子を海中映像でとらえた資料はあるでしょうか? また文書資料で同様のものがあったら教えてください (1/30/99)

佐久間敏郎:映像プロデューサー:44歳

A 高温のマグマと水が接触すると 水蒸気爆発が発生することがあります。 これは、水とマグマの量比やマグマの温度、マグマの噴出率、 水深、マグマ中に含まれる揮発成分の量によります。 水が多すぎず少なすぎずの場合には、時として大水蒸気爆発が発生します。

海底噴火の場合、水は十分にありますので 水深が浅く、噴出率が高いと大爆発が発生しやすいわけです。 伊東沖の海底噴火の時の映像にもありましたが コックステイルジェットという弾道を描いて飛行する特徴的な噴煙を伴ったり、 水面上を横殴りに高速で広がるサージを発生させたりします。 明神礁の噴火ではサージで調査船が沈没したのではないかと言われています。 このような激しい噴火の映像は、なかなか捉えることはできないものです。

アイスランドのスルツェイ火山の噴火では そのような爆発的な噴火の映像がごく近くで撮影されています。 「Birth of iland」という映画でで、日本語版のビデオもあります。 レイキャビクのvolcano showというところで入手できます。 ただし、これは海面よりも上の映像です。 残念ながら、このような、 激しい海底噴火を水中で捉えた映像はありません。

ハワイのキラウエア火山では、 1983年からずっと噴火が続いています。 火口そのものは山の上の方にあるのですが 延々と地表や溶岩トンネルの中を流れて やがて海岸に到達します。 そこでは、水と反応して爆発したりもしますが、 爆発を起こす揮発成分が抜けきっているためか 意外なほど静かに水中に流れ込む場合もあります。 そのような場合には、水中を静かに流れる溶岩流の様子を ダイバーが撮影することも可能なようです。

水中の溶岩流は急冷され、すぐに表面にガラスの殻ができます。 これが枕のような形をしていることが多いので「枕状溶岩」と呼ばれます。 この枕は、餅が膨らんではガスが抜けるような感じで 次々に子供を産み落とすように、流れていくのです。 この様子を水中カメラで捉えた見事な映像は結構有名です。 はじめて撮影されたのは1976年頃と思います。 その後、いろいろな撮影者がいたようですが、このごろは コナのアマチュアグループが積極的にやっているようで、 最近のdiscovery channelでも紹介されていました。 くわしいことは、そちらにお問い合わせください。

ただし、これは海底火山の噴火の映像ではありません。 陸上を流れていた溶岩流が 海に流れ込んだあとの水中の映像であって これを、「海底噴火」と呼ぶかは意見が分かれるかもしれません。 (2/12/99)

千葉達朗(アジア航測(株)防災部)


Question #2187
Q 初めて、質問させて頂きます。今、学校の宿題で、楯状火山特にキラウエアとマウナロアについてリサーチしています。
論文で、この二つの火山の噴火スタイルの違いを記述しなければならないのですが、インターネット上の情報からは、二つとも同じような特徴(例:パホイホイなど。)のような説明しか見当たりません。
キラウエア火山と、マウナロア火山の噴火の特徴に何か決定的な違いは無いのですか?
教えてください。お願い致します。

(04/06/02)

kuni:学生:26

A
 キラウエアとマウナロアはともにハワイ島にある玄武岩の火山で,溶岩の性質も噴 火の仕方もよく似た火山です.場所,大きさや年齢以外に特に大きな違いはないとい っていいでしょう.質問にあるように,両者の決定的な違いを探せという「宿題」で すか?もしそうならこのような質問コーナーに安易に頼らず自分で答えを見つけるこ とです.ハワイの火山に関する英語のホームページは充実していますからそちらを真 っ先に調べることです.
 マウナロアは標高4000m以上もあり,深さ4000mを越える海底からそびえている巨 大な火山です.キラウエアはマウナロアの斜面に寄りかかるように成長したより新し い火山です.いずれも盾状火山ステージと呼ばれる,ハワイ火山の主要な成長時期に あると考えられいます.両火山とも,山頂火口のほかリフトと呼ばれる山頂から長く 伸びる割れ目帯から噴火することが多く,地表を流れる溶岩は粘り気が非常に低いた め,パホイホイやアアと呼ばれる溶岩を作ります.パホイホイ溶岩は,皿の上に少量 こぼした蜂蜜のように,表面が平らで先端が水風船のような形をした房状の頭部を持 ちます.ちょうど味付け海苔を張り付けたような色とつやをしています.パホイホイ 溶岩が流れている間に温度が低下して粘り気が増すことや,崖などに近づき流れる斜 面が急になった時には,溶岩がちぎれてトゲトゲの表面からなるアア溶岩へと変わり ます.
 (04/07/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) --


Question #3409
Q 先ごろ、学会で(専門はぜんぜん違いますが)ハワイにいったついでに、キラウェアやマウナケア、ハレアカラ、ダイアモンドヘッド、とひととおり現地の火山を上ってきました。とても楽しかったです。
ところで、ハワイの火山、ってリフトゾーンがあって、そこからよく噴火すると聞きましたが、このリフトゾーンの形って、どの山も山頂付近で折れ曲がった独特な形をしていますね。これは何故なのでしょうか?

日本の火山では、圧力がかかるため、頂上を含む直線上でよく噴火する(富士山とか箱根とか)、という話はよく聞きますが、これについては、圧力がその向きにかかっているんだな、とかいうように分かりやすいのですが、
このように折れ曲がった線になっている理由がよくわかりません。
よろしくお願いします。 (11/16/02)

山彦:バイオ:30

A
 ハワイといえばホノルル・ワイキキビーチだったのですが,最近は火山とし てのハワイも知られるようになってきたようで,火山屋としてはうれしいで す.
 ハワイの説明の前に,簡単に側火山が特定の方向に多いわけを考えてみま す.マグマが地下から地殻を破壊しながら移動するとき,地殻にかかっている 応力の影響を受けて,もっとも割れやすい方向に割れます.地殻にかかってい る応力を3成分にわけて考えると,岩脈の伸びの方向は最大圧縮軸に平行で最 小圧縮軸(最大引張軸)に直交する方向になります.つまり岩脈の伸びの方向は 岩脈が貫入したときの最大圧縮軸の方向,または岩脈の伸びの方向に直交する 方向が最大引張軸だったことを示します.富士山や箱根,伊豆大島などの側火 山分布は,プレートの沈み込みに伴う北西-南東方向の広域圧縮応力が非常に 大きく,それに平行な方向に岩脈が入りやすいためです.
 ハワイの場合,プレート内のホットスポット火山ですから,広域の応力場は ほとんどありません.基本的にマグマ溜まりの圧力変動による応力と,火山体 にかかる重力による応力に支配されていると考えられています.中央火道の下 にあるマグマ溜まりの圧力が増大すると,地殻には引っ張り応力がかかりま す.そのため中央火道・マグマ溜まりから放射状岩脈が派生します.これだけ なら多くの中央火道を持つ火山と同じですが,ハワイの場合,海底から 8000-10000mも盛り上がっている山体が,自らの質量で滑り落ちようとしてい て,それがリフトゾーンをつくる大きな要因と考えられています.プウオオ火 口からの溶岩流が海に流れこんでいる場所に行かれたでしょうか?
 もし行かれたのであれば,キラウエア山頂からChain of Craters Roadを南 海岸まで急な崖を降りていったと思います.その崖がキラウエア火山の南側斜 面が滑り落ちている断層崖(ヒリナ断層系)です.キラウエア火山の南斜面は南 側に滑り落ちようとしているため,その方向に引っ張り応力がかかっているわ けです.キラウエア火山のリフトゾーンが山頂近くで湾曲しているのは,中央 火道がつくる応力(山頂に近いほど大きい)に支配される領域と南側へ引っ張る 応力が支配する領域の境界で湾曲すると考えられます.なお,ハワイでリフト ゾーンが発達する理由に,海底堆積物が滑り面として作用し,火山体が滑りや すいためだという説があります.機会があれば下記の論文を読まれてみてはい かがでしょうか.

中村一明(1980) なぜハワイ火山では長い rift zone が生ずるのか -厚い海 底堆積物の役割-.火山,第2集,25巻,p255-269.
 (11/28/02)

川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門) --


Question #4128
Q ハワイの火山についてなんですが、火山の洞窟ってどのようにできるのですか?
ガイドさんは、「流れ出したマグマの表面が固まり、中のマグマが全部流れ出した跡です」
とかなんとかいってました。本当にそうなのですか?詳しく、簡単におしえてください(笑)


 一度噴火が起きると、どのくらい続くのですか?(ハワイの火山)

ぜひおしえてください!おねがいします。 (08/12/03)

佐藤:学生:12

A
 ガイドさんの説明は間違ってはいません。
 溶岩は冷えはじめると結晶が成長しはじめ溶岩の粘り気が増加し、さらに冷えるとついには固まってしまいます。ハワイのような流動性に富む溶岩が流れる 場合に、表面で冷えて固まった溶岩が内部を流れる溶岩に対して保温の役目を果たし、高温の溶岩が冷えずにそのまま流れることができます。これは溶岩チュ ーブといって、溶岩を遠方まで運ぶ主な仕組みです。噴火活動が低下し、溶岩チューブから内部の流動的な溶岩が抜けてしまうと溶岩のトンネルができる訳で す。また、溶岩の中に閉じ込められた火山ガスの圧力が増加して表面の溶岩を持ち上げて大きな中空を作ることも稀にあるようです。このような古い溶岩のト ンネルや中空が溶岩洞窟(洞穴)として観光地になっています。
 日本では富士山の溶岩洞穴が有名です。インターネットで溶岩洞穴を検索してみて下さい。
 噴火の継続時間は火山や溶岩の種類によってまちまちです。普通は3か月以下が多いようです。しかし、ハワイでは1983年から現在までほぼ連続的に溶 岩が流出しており、そこでは溶岩チューブを使って溶岩が海岸まで到達し、海に直接流れ込んでいます。その様子も見学できたのではないかと思います。
 (08/17/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)