火山の噴火エネルギーはとても大きなものです.地面に大きな穴を開けて地下のマグ
マを地表に吹き出させるためには大変な量のエネルギーが必要です.たとえば,1883
年のクラカトア火山の爆発のエネルギーはTNT火薬で1〜1.5億トンだったと考えられ
てます.今回の三宅島の噴火でも,TNT数千〜数万トンに相当するエネルギーが放出
されていると考えられます.これは広島や長崎に投下された原子爆弾に相当するぐら
いのエネルギーです.
このような大規模な自然現象に,通常の爆薬で立ち向かうのは,まったくエネルギー
不足です.といって,原子爆弾を使うわけにはいきませんし,使ったとしても,思い
通りに新火口を開けるのは大変難しいでしょうね.
実際,ハワイの1935年のマウナロア火山の噴火の際に,6トンの爆弾投下して,溶岩
流の流れを変えようとの試みがなされましたが,うまくいきませんでした.
長崎県の雲仙普賢岳では1991年に山頂部に溶岩ドームが出現し,それが崩壊してしば
しば大きな火砕流が発生しました.溶岩ドームが大きく崩壊するまえに砲撃やミサイ
ルでどんどん破壊してしまおうとのアイディアもありました.でも,それがきっかけ
で大火砕流が発生してしまうと,麓の町が大きく被害を受ける可能性もあり,責任問
題になってしまいます.結局このアイディアは採用されませんでした.
といって,まったく指をくわえて火山噴火を眺めているわけではありません.流れ出
る溶岩の通路にダムを造ったり,大量の水をかけて冷却して,その流れ出る方向を変
えて町を守るという手法は何度か行われています.1973年のアイスランドのヘイマイ
エ島の噴火や1983年のイタリアのエトナ火山での例が有名です.日本でも1983年の三
宅島や1986年の伊豆大島の溶岩流でも消防庁によって小規模ながら実施されています
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(9/24/00)
松島 健 (九州大学・地震火山観測研究センター島原観測所)
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