現在も金星に火山活動があるのかどうかは分かりません.火山活動が直接観
測されてはいないからです.1990-1994年にマゼラン探査機が金星地表の撮影
を行ないましたが,その間,火成活動による地表の変化は観測されませんでし
た.しかし間接的な証拠らしいものはいくつかあります.
・1978-1984の6年間の間で金星大気中のSO2,H2SO4(金星の火山ガスの成
分)の量が90%も減少した
・1991にガリレオ探査機は金星から稲妻のようなパルスをキャッチした(噴
煙柱に伴う稲妻?)
ただし,これらを火山活動起源だとする説が唯一ではなく,他にもいろいろ
な説明がなされています.金星には火山地形が数多く存在しますが,このよう
な観測結果をみると,現在の金星では,火成活動は地球ほど活発ではないよう
です.
現在の金星で火成活動が活発ではない理由として,金星では5億年ほど前に全
球規模での大規模な火成活動と構造運動が起き,その後火成活動は小規模なも
のになってしまったという説が一般に受け入れられています.
なぜこのような火成活動の消長が起きるのか,いくつかの仮説が提案されて
います.例えば,ある説によると,高い地表温度のため,金星の地表は変形し
やすく,マントル対流によってリソスフェアが金星内部に沈み込みやすくな
る.この効果がさらにマントル対流を活発化させ,この活発化のピークは間欠
的に来る.計算によると5億年程度の周期で,ピーク時に大量の溶岩が噴出
し,全星規模での火成活動や構造運動をもたらすと考えられています.
これらはあくまで仮説であり,絶対正しいというものではありません.現在
多くの研究がなされている最中であり,これらの仮説もこれから先に書きかえ
られていくと思われます.
なお,火成活動の熱源は惑星形成時に内部に蓄えられたエネルギーだけでな
く,放射性元素の崩壊にともなう熱や潮汐力などもあります.
例えば木星の衛星のイオは半径が1820kmと,地球(6400km)よりも小さい天
体ですが,火成活動は太陽系で最も活発な天体です.潮汐力が強く関わってい
るからです.木星から近い所を公転していること,さらに公転軌道が他の衛星
エウロパ,ガニメデと複雑な関係にあることで,イオは公転しながら圧縮され
たり引き伸ばされたりします.このような作用が絶え間なく続くのでイオの内
部は熱くなり,火成活動が活発になっていると考えられています.
(6/2/98)
永澤千明(東京大学理学部博士課程)
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