火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

現在,諸般の事情により質問の受付を停止しております. 再開に向け準備を進めておりますので,いましばらくお待ちください.
トピック項目表示

QA番号順表示

小中学生から多い質問

指定のQ&A番号へ飛ぶ
(半角数字で入力)

「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


VSJ HOME


Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火現象と噴出物・岩石・鉱物

溶岩・溶岩流・枕状溶岩


Question #30
Q 私はテレビや写真でしかマグマを見たことがありません。特別な許可なくして、近距離からマグマを肉眼で観察できるところはあるのでしょうか? 学問的な質問でなくて申し訳ありません。 (6/12/97)

近藤 昌也:団体職員:29

A
 マグマといっているのはおそらくオレンジ色に輝くドロドロしたもののこと だと思いますがこのような状態の溶岩は1000℃くらいの温度をもっています 一般に、近距離まで近づくことは危険です。
 そのような溶岩流は火山噴火の際に地表に現れるものですから突然の噴火に 遭遇できれば、許可無くして観察できる可能性があります。しかし、いつ何処 で噴火が起こるかを予測することはできませんし、そのような可能性の高い場 所で待ち受けることは非常に危険です。
 ところが、地球上の火山の中には、定常的に噴火をし続けている火山がいく つかあります。そのような場所では、「マグマ」を見ることができる場合があ ります。
 ハワイ島のキラウエア火山では1983年からずっと噴火が継続中です。溶岩流 の流れは気まぐれで、日々刻々と変化しますので、観光客の行ける場所のすぐ そばまで流れてくることもあります。そのような溶岩流を見るための展望台な ども整備されています。ヘリコプターで上空から溶岩流を見るツアーがあっ て、たいそうな人気です。もし、これを肉眼で近距離というのならば、特別 な許可無く、お金を払えば誰でも見ることができるわけです。
 1950-51年の伊豆大島三原山の噴火では、多くの人がオレンジ色のマグマを 見に行き、魅せられたように、溶岩湖に身を投げる人が続出し、大きな社会 問題となりました。というようなこともありますので、十分にお気をつけ て。

千葉達朗(アジア航測株式会社)


Question #46
Q 溶岩流には地表を浸食する力はありますか。 (10/2/97)

K.F.:学生:22

A 溶岩流は火砕流ほどには地表を侵食する能力はありません.しかし,がさがさ のスコリアなどからなる火砕丘を,重い溶岩流が削ったり,その下に潜り込 んで,火砕丘を決壊してしまうことがよくあります.そのようにして壊した火 砕丘の断片を溶岩の上に乗っけている玄武岩や安山岩の溶岩流がしばしば見ら れます. (10/18/97)

中田節也(東大・火山センター)


Question #190
Q
 わたしは,社会の時間に,長野県南牧村の勉強をしました。その時,クラスの友だちが,「よう岩の流れる速さってどれくらいの速さ?」とみんなに聞きました。先生が辞典で調べたけどのっていませんでした。それで,わたしは,よう岩の流れる速さが知りたくなり,お父さんにインターネットで調べる方法を教えてもらいました。よろしくお願いします。 (2/3/99)

さのかよこ:小学4年生:10才

A かよこさん.返事が遅くなってすみません. 溶岩の流れ下る速さは溶岩の粘り気や流れる斜面の傾斜によってちがいます.最 大で毎秒10m(時速36km)程度のようです.ハワイでは傾斜30度の斜面を毎秒 15mの速さで流れたことが記録されています.最近良くテレビで見るハワイのキ ラウエア火山やイタリアのエトナ火山の噴火映像では,真っ赤な溶岩が川の水のよ うにとても勢い良く流れていますが,これらは粘り気の非常に小さい溶岩で,日本 ではほとんど見かけません.三宅島でおきた1983年に噴火した溶岩は比較的粘り 気の低いものでしたが,それでも毎秒0.3mとゆっくり流れました.一方,ずっと 粘り気の強い普賢岳のドームを作った溶岩は,最も速いときでも一日約50mの速 さ(遅さ?)でしか流れませんでした. (2/25/99)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #207
Q 長崎県の福江島の鬼岳の空中写真と地形図で溶岩の流れを調べていたんですけれども、いまいち判読ができませんでした。どこまで溶岩が流れているかは分かるのですけれども、一回一回の溶岩の境目がわかりませんでした。特に溶岩台地の上にのったスコリア丘から流れ出した溶岩がどこまでなのかがわかりにくいです。地質図を見たのですけれども何を基準にして分けてあるのかがいまいち分かりません。何か見分けるこつを教えてください。多分私の勉強不足でしょうけど。 (4/13/99)

大二:学生:21

A どこまで流れているかはわかるということは,溶岩末端崖はわかるということですね. 空中写真で溶岩流の地形を判読する時は,溶岩流に特徴的な地形,溶岩末端崖や,溶 岩じわ,溶岩堤防を丹念に探していくしかありません.溶岩末端崖は比較的分かりや すいと思いますから,そこから溶岩じわの分布や,溶岩堤防を火口側に辿っていくの が良いでしょう.またいきなり難しいところではなく,分かりやすい新鮮な溶岩流地 形が残っている火山で,判読の経験を積んでおくのも大切です.また地形は,地表で の物理的な営力で形成されるわけですから,たとえば溶岩流なら粘性流体が傾斜地を 流れ下る時にどういう形態になるのだろうかと考える癖をつけておくのもいいでしょ う.

ただ玄武岩質の溶岩流は,安山岩やデイサイトの溶岩流に比べると,厚さがそれほど 厚くないため,空中写真で判読するのはやや難しいと思います.特に鬼岳のように, 溶岩流が流出した後に降下スコリアなどが厚く覆ったり,植生が覆うととより難しく なります.その場合は,現地調査などを併用する必要がありますね.また空中写真は, 撮影時期やちょっとした光線角度の違いで,ある写真では見えなかった微細な地形が, 別の写真では見えることもあります.もし可能なら,別時期に撮影した別の空中写真 を使ってみるというのも手です. (4/28/99)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所・火山地質)


Question #188
Q 現在、産業廃棄物の処理を巡ってさまざまな問題が取りざたされております。 その一つが、焼却処理をした場合に発生するダイオキシンの問題です。 これは焼却時の温度が1200℃以上だと問題ないそうですが、この温度を保つのは 難しいみたいです。 そこで、いきなり突拍子もない質問になるのですが、火山の火口に産業廃棄物を ほうり込めば、問題ないと思うのですが如何なものでしょうか? ただし、火山の立地条件としては無人島みたいなところで火口までブツを運べる ことが条件になりますが。 商業ベースでペイするとは思えないのであくまで個人的な興味からなんですけど。

(1/31/99)

Nick:商社勤務:29

A 【溶岩と火口】 溶岩の温度は普通900度から1100度くらいです.溶岩の組成によっては,1200度を越 えるものも存在するかもしれません.ですが,これはあくまで噴火中,もしくは噴出 直後の溶岩の温度でして,実際の火山の火口の中で,このような高温の溶岩がドロド ロと溜まっている状況はほとんど存在しません.あるとしたら,せいぜいハワイくら いでしょうか.他の火山の火口は,噴火中で近づけないか,表面が冷えているか,あ るいは噴出物で閉ざされているはずです.

【放り込む?】 また,化学的なことを考えても,溶岩の組成は単純ではありません.しかも,その組 成は火山により,また同じ火山でも時期により変化します.起こりうる反応をすべて 予測することは簡単ではないでしょう.ご質問のケースでは,高温を得るということ だけで解決を図るのは,やはり単純すぎると思います.自然は複雑でパワフルですか ら,思っても見なかった結果が返ってくるかもしれません.私たちは,こういう例を 多く経験しているはずです.「問題ない」はずはありません.

【火山を制御】 少しはずれますが,個人的には,火山という自然をゴミ処理に利用する発想には,強 く抵抗を感じます.私たちが火山から恩恵を受けることはいいと思いますが,まだま だコントロールできる対象ではありません.例えば,溶岩流については,流れを先端 を止めたり,流路の一部を変えようという試みはなされていますが,実際には「ビル を倒して流れを変えたりできる」のは映画の中だけです.宮沢賢治の「グスコーブド リの伝記」にあるように噴火を制御することは,今日でもまだ夢のような話なのです. (2/3/99)

西村裕一(北海道大学・地震火山研究観測センター)


Question #261
Q こんにちは。私は中学3年の多緒といいます。 先日、小学生のいとこが、浅間山に行ってきてふもとにあった溶岩があつかった、と言っていました。 それは、太陽の熱であったまっただけ、と答えましたが溶岩は他の石よりあたたまりやすいということ はあるのですか。
 それと、私も宿題で浅間山の事を調べようとしたのですが、なかなか見つかりません。 よろしかったら噴火したのはいつだったのか、ということだけでもおしえてください。 あと、インターネット上ではどこにあるのでしょう。
 ばかな質問で申し訳ありませんがよろしくお願いします。 (8/21/99)

15さい。:中学生:15

A 夏休みであちこちの火山を見に行った人も多いようですね.宿題で火山のことを調べ ようとしている人も多いようで,火山に興味を持ってもらうことはとてもうれしいで すね.

まず溶岩は他の石よりあたたまりやすいかについてお答えします. 浅間山のふもとの溶岩と言うと,浅間山の北側に流れた鬼押出し溶岩流のことでしょ うね.新しい溶岩が流れたところでは,森や林が埋め立てられたり,焼かれたりし て,溶岩の上には全く植物がなくなってしまいます.ですから日陰がなく,日光が直 接当たってしまう状態がしばらく続きます.気候にもよりますが,何百年何千年の時 間がたつと,次第に植物が溶岩の上を覆いはじめます.でも鬼押出し溶岩はできてか らまだ220年ほどしかたっていないため,まだ植物に完全に覆われていないのです. そのため日光によくあたって暖められるので,特に暖かく感じるのでしょう.また溶 岩は,いったん暖まるとなかなか冷めにくい性質を持っています.これは熱が伝わる はやさが,溶岩などのケイ素を主成分とする岩石では遅いからです.他の岩石の大部 分もケイ素を主成分としますから,溶岩と大きく違うことはないと思います.火山の 近くのいくつかの観光地では,溶岩が冷えにくいことを利用して,溶岩の板を熱して 肉を焼いたりする料理を名物にしているところもあります.余熱を利用してじっくり と焼くことができるので,おいしく料理することができるのだそうです.

つぎは浅間山についてです. 浅間山は,およそ4万年前くらいから噴火を始めた火山です.まず今の浅間山山頂の 西にある黒斑山が成長したあと,いったん崩れてしまいます.崩れたあとが牙山など の東に開いた馬てい形の火口です.それを埋めるように,仏岩火山,前掛火山が成長 し,今見られるような浅間山の姿を作っています.人間が書いた記録がないのに,4 万年前のことがどうしてわかるのかというと,噴火で吹き上げられた軽石や,崩れた 堆積物,火砕流などの積み重なりを調べることでわかるのです.最近1000年程の人 間の記録がある時代になると,浅間山の噴火の記録はかなり多くなってきます.最も 最近の大きな噴火は,江戸時代の1783年(天明3年)の噴火で,まず軽石の放出では じまり,火砕流,溶岩流が流れ出しました.鬼押出し溶岩流はこの時の噴火で流れ出 した溶岩です.火砕流とそれによる岩屑なだれで,浅間山の北側ふもとの鎌原村で 477人が亡くなったほか,吾妻川に流れ込んで泥流となり,下流で900人ほどの人が 亡くなっています.20世紀になってからも,山頂での噴火を何度もくり返していて, 登山者が何回か犠牲になっています.

浅間山のことをもっとくわしく知りたい場合は,学校の図書室や図書館などで火山の 本をさがしてみて下さい.いくつか本の名前をあげておきます.
 空から見る日本の火山 荒牧・白尾・長岡編 丸善
 写真で見る火山の自然史 町田・白尾著 東大出版会
 フィールドガイド日本の火山(1)関東・甲信越の火山I 高橋・小林編 築地書館 またインターネットでは,群馬大学の早川さんのページを参考にするとよいでしょう. (8/25/99)

川辺禎久(工業技術院・地質調査所・環境地質部・火山地質課)


Question #1565
Q 初めまして。中学校の理科教師です。いつも火山の単元になると頭をもたげてくる疑問があります。その質問とは…
「いわゆる溶岩と、玄武岩などの火山岩は同じなのか違うのか?もし違うのならどんなところが違うのか?」ということです。
火山の単元では、まず火山噴出物として溶岩(浅間の鬼押し出しのようなあれです)を学習します。そしてそのあとには火山岩の仲間として玄武岩・安山岩・流紋岩を取り扱います。火山岩の説明はどんな本にも「マグマが地表や地表近くで急激に冷やされて固まったもの」と書かれています。
そこで疑問としてわいてくるのが、「だったら溶岩も火山岩なのか。はたまた岩石標本にあるような玄武岩や流紋岩を溶岩と呼んでいいのか。」ということです。ときどき、玄武岩質の溶岩なんて言葉もありますが、よけいわからなくなってしまいます。
お忙しい中まことに申し訳ありませんが、よろしくご教導ください。 (02/14/01)

悩める子羊:教員:35

A
 火山岩(火山噴出物)を構成するものとして、溶岩、溶岩餅、スコリア、軽石、火 山灰などがあり、後者がある程度集合したものを、溶岩流、火山砕屑岩、凝灰岩など といいます。ですから、溶岩(流)、火山砕屑岩、凝灰岩なども火山岩です。溶岩流 は「流」をはぶいて単に溶岩ということが普通です。また、溶岩とは液体状態にある マグマを指す場合と、マグマがある程度の大きさをもって固まったものを指す場合と があります。玄武岩、安山岩、流紋岩などは火山岩を化学組成や入っている鉱物の種 類・大きさで分類した時の名称で、特にこだわらない限りは溶岩のことを指します。 ですから、玄武岩・安山岩・流紋岩はもちろん火山岩です。
 あまり良い例えではありませんが、食べ物には、米、豆、なす、みかん、豚肉など があり、それらが集合して、穀物、野菜、果物、肉類などといいます。また、成分で 分けると、脂肪、でんぷん、たんぱくとなります。たんぱく質の食べ物、あるいはた んぱく質の穀物というように、玄武岩質の火山岩、あるいは玄武岩(質)溶岩という 使い方をします。
 「鬼押し出し溶岩」は安山岩(質)の溶岩(流)で、浅間山火山の一部と作ってい る火山岩です。 (02/19/01)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #1953
Q 今、学校の授業で溶岩について調べています。
辞書には『地下の深所にあるマグマが火山の噴出口から地表に流れ出したもの
また黷竄竦xとあり、
教科書には、『火山からでた溶岩が固まってできた岩石が火成岩』とありました。
溶岩について調べるほど何だか判らなくなってきています。
父は『固まったマグマのこと』と言ってますが、
何だか簡単過ぎるような気がします。
わかりやすく教えてください。

また、溶岩は何故火山が噴火すると遠くまで飛ばされるのですか?。
よろしくお願いします。

(10/24/01)

YamaChan:小6:12

A
 溶岩は「地表やその付近にある」マグマ(どろどろにとけた状態のもの)をさす場 合と,それが固まってしまったものをさす場合とがあります.火口から出て流れてい るものも,冷え固まったものも溶岩と呼びます.
 「火成岩」とはマグマが固まってできた岩石のことで,花こう岩のように地下の深 い場所でゆっくり冷えてできたものを「深成岩」(しんせいがん),溶岩のような地 表やその付近でできたものを「火山岩」と呼びます.深成岩+火山岩=火成岩
 飛ばされる溶岩は,とけた溶岩の「しぶき」であることや,すでに固まった溶岩の 「塊や破片」であることもあります.形や大きさなどによって,火山弾,軽石,火山 岩塊,火山れきなどと呼ばれます.これらは火口で爆発が起こることによって粉々に なり噴き飛ばされるものです.爆発は,マグマ中のガスやマグマで熱せられた地下水 が噴火までに蓄えていた高い圧力が原因でおこります.
 (11/26/01)

中田節也(東大・地震研究所・火山センター)


Question #2276
Q 突然ですが、マグマと溶岩とマントルと海洋プレートの関係を教えてください。
特に、マグマとマントルの違いが、良く分からないのですが・・・・・
あるHPで、「中央海嶺では、実に地球上で発生するマグマの80%が生産されています。」という記載があったのですが、マグマはマントルなんでしょうか。
中央海嶺とは、プレートが裂けて、マントルが見えているところなのでしょうか。
マグマが冷えると、即プレートになるのでしょうか。
固さだけの違い?なのでしょうか??? (06/05/02)

りょん:会社員:34

A
 基本的には,あたたかくてやわらかいマントルと冷たくてかたいプレートという認 識で いいのですが,マグマのことを考える場合には,若干の修正が必要です.


 まず,マントルとマグマの関係ですが, マントルは固体ですが,圧力が低くなったり温度が高くなったりすると 部分的に融けてしまい,マグマを生み出します. たとえていうなら,マントルとマグマの関係は,かちかちに固まった シャーベットがマントルで,半分とけかけたシャーベットの果汁部分がマグマです.


 マグマとは,地球内部で岩石がどろどろに融けた状態のもの全般をさす呼び名で, マントルがとけてもマグマが生じますし,地殻がとけてもマグマが生じます. これに対し,溶岩は,マグマが地表に流れ出てきたものです. ただし,融けて流れている状態のものも冷え固まった状態のものも, いずれも溶岩とよびます.


 さて,これらをふまえて,海洋プレートとマントルの関係に移りましょう. 中央海嶺は、マントル物質が上昇してきてプレートが作られているところです. プレートは左右に分かれて移動していくので,中央海嶺には深い谷状の地形が 形成されますが,そこでマントルそのものが見えるわけではありません. 上昇してきたマントルは,圧力が低くなるために部分的に融けてしまいます. 先ほどのシャーベットのたとえを借りるならば, ちょうどシャーベットを少し溶かしたたときに果汁の部分と氷の部分とができるよう に, 中央海嶺の地下深くにおいて,マントルにもとけた部分(マグマ)ととけのこり部分 が生じます. マグマ部分はとけのこり部分よりも軽いので,表層近くまで上がってきて 溶岩として海底に噴出したり,噴出できずに表層近くの地中で固まったりします. これが海洋地殻と呼ばれるもので,厚さが5〜10kmあり,海洋プレートの最上層を形 成します. その下側には厚さ30〜40km程度のとけのこり部分からなる層があります. その下にさらに厚さ数十km〜100kmの冷たい(したがって,固い)マントル物質の層 があり, これら全体として海洋プレートを構成します. つまり,おおざっぱに言うと海洋プレートは3層重ねで, 下から順に,マントルと同じ物質で温度が低いだけの層,マントル物質からマグマを 分離して しまった残りの物質の層,分離したマグマが冷え固まった層,からできているわけで す. (06/07/02)

安田 敦 (東大・地震研・地球ダイナミクス)


Question #2494
Q こんにちは 私は小学4年生です。夏休みに富士山と浅間山に行きました。浅間山の鬼押し出し溶岩は約200年前に出来たそうですが、これから何千年も経つと富士山の樹海のようになるのですか?また富士山と浅間山について調べていますが、溶岩の違いについても教えて下さい。お願いします。 (08/17/02)

響ちゃん:小学生:10歳

A 響ちゃん,こんにちは. 浅間山の鬼押出溶岩は,たしかに何千年もたつと富士山の樹海のようになります.富 士山の樹海で有名な“青木ヶ原溶岩”は,今から1100年ぐらい前の大噴火の時に流れ 出たもので,噴火のすぐ後は黒っぽい溶岩の原っぱみたいになったのでしょう.それ が今ではうっそうとしたジャングルのようになっていますね.浅間山でも,鬼押出よ り前の大噴火(今から900年ぐらい前)の時に流れ出た溶岩は樹海のようになってい ます.日本のような気候では,だいたいどの火山でも,噴火がおさまるとすぐに草木 が生えてきて,時間がたつにつれうっそうとしてきます.植物の力はすごいですね.
 ところで今から220年ほど前に流れ出た鬼押出溶岩には,すでに樹海のようになっ ている場所があります.鬼押出溶岩は,噴火口のある高さ2500m以上(海面からの高 さ)の浅間山のてっぺんから1200mぐらいのところまで流れ下りました.溶岩の上を 歩き回ってみると,浅間園や鬼押出園のある1400mぐらいのところより低い場所で は,けっこうジャングルのようになっているのです.生える草木の種類や数は高さに よって違っていて,あんまり高くなると,草木はほとんど生えなくなります.浅間山 のてっぺんの方を眺めると,草木はほとんど見あたらないですよね?浅間山以外の火 山では、伊豆大島や桜島にも,鬼押出と同じ今から220年ぐらい前に流れ出た溶岩が あります.どちらも溶岩が流れた場所の高さは鬼押出よりずっと低くて,かなり草木 におおわれています.伊豆大島や桜島は浅間山のある高原に比べると気温が高くて雨 も多いので,草木がどんどん成長して,同じ時代の溶岩でも早く樹海になってしまう のでしょう.
 富士山と浅間山の溶岩の違いはいろいろありますが,富士山の溶岩の方がねばり気 が少なくて,浅間山の方がねばっこいのが大きな違いです.富士山の溶岩の方が流れ やすくて,火口から何10kmも流れたことがありますが,浅間山の方は数kmぐらいで す.富士山の溶岩は,厚さが数mほどで,表面がつるんとしていたり,あるいは,い がいがのあるパパイヤぐらいの大きさの石でしきつめられたようになっています.青 木ヶ原溶岩でも足元をよーく見てみると,そういった様子を見ることができます.浅 間山の溶岩の方は,厚さが何10mもある,つぶれたカマボコのような形をしていて (鬼押出は浅間園のところで厚さが60m以上もあります),表面には巨大なサイコロ のような岩がごろごろ転がっています.富士山の溶岩の石の名前は玄武岩(げんぶが ん),浅間山の方は安山岩(あんざんがん)といいます.二種類の石の詳しいことに ついては,この質問コーナーの検索(けんさく)機能などで調べてみて下さいね.
 (08/19/02)

安井真也(日本大学・文理学部・地球システム科学科) --


Question #187
Q はじめて質問させていただきます。 CG制作に携わるものですが、海底噴火の様子を海中映像でとらえた資料はあるでしょうか? また文書資料で同様のものがあったら教えてください (1/30/99)

佐久間敏郎:映像プロデューサー:44歳

A 高温のマグマと水が接触すると 水蒸気爆発が発生することがあります。 これは、水とマグマの量比やマグマの温度、マグマの噴出率、 水深、マグマ中に含まれる揮発成分の量によります。 水が多すぎず少なすぎずの場合には、時として大水蒸気爆発が発生します。

海底噴火の場合、水は十分にありますので 水深が浅く、噴出率が高いと大爆発が発生しやすいわけです。 伊東沖の海底噴火の時の映像にもありましたが コックステイルジェットという弾道を描いて飛行する特徴的な噴煙を伴ったり、 水面上を横殴りに高速で広がるサージを発生させたりします。 明神礁の噴火ではサージで調査船が沈没したのではないかと言われています。 このような激しい噴火の映像は、なかなか捉えることはできないものです。

アイスランドのスルツェイ火山の噴火では そのような爆発的な噴火の映像がごく近くで撮影されています。 「Birth of iland」という映画でで、日本語版のビデオもあります。 レイキャビクのvolcano showというところで入手できます。 ただし、これは海面よりも上の映像です。 残念ながら、このような、 激しい海底噴火を水中で捉えた映像はありません。

ハワイのキラウエア火山では、 1983年からずっと噴火が続いています。 火口そのものは山の上の方にあるのですが 延々と地表や溶岩トンネルの中を流れて やがて海岸に到達します。 そこでは、水と反応して爆発したりもしますが、 爆発を起こす揮発成分が抜けきっているためか 意外なほど静かに水中に流れ込む場合もあります。 そのような場合には、水中を静かに流れる溶岩流の様子を ダイバーが撮影することも可能なようです。

水中の溶岩流は急冷され、すぐに表面にガラスの殻ができます。 これが枕のような形をしていることが多いので「枕状溶岩」と呼ばれます。 この枕は、餅が膨らんではガスが抜けるような感じで 次々に子供を産み落とすように、流れていくのです。 この様子を水中カメラで捉えた見事な映像は結構有名です。 はじめて撮影されたのは1976年頃と思います。 その後、いろいろな撮影者がいたようですが、このごろは コナのアマチュアグループが積極的にやっているようで、 最近のdiscovery channelでも紹介されていました。 くわしいことは、そちらにお問い合わせください。

ただし、これは海底火山の噴火の映像ではありません。 陸上を流れていた溶岩流が 海に流れ込んだあとの水中の映像であって これを、「海底噴火」と呼ぶかは意見が分かれるかもしれません。 (2/12/99)

千葉達朗(アジア航測(株)防災部)


Question #223
Q 現在、水中火山岩について調べていますが、解らないことがたくさんです。 ピローローブなどに見られる周辺のガラス質は何故出来るのですか。そのガラス質の部分の性質に特徴はあるのですか。 また、枕状溶岩とニセ枕状溶岩はいったい何の違いからわかれるのですか。特定の条件などがあるのですか。 最後に、陸上で出来たものと水中で出来たものの違いを見分ける方法には、どんなものがありますか。 ぜひ教えて下さい。読むと解る文献などがありましたらそれも教えて下さい。 (6/5/99)

熱帯魚:学生:21

A
 熱帯魚さんのご質問は溶岩の産状を観察している多くの研究者を悩ましている問題 でもあります.熱帯魚さんはこうした地質学的課題を専門的に勉強しておられるよう ですので,いつものこのコーナーよりも多少専門的な回答と参考文献についてお答え します.
 最初に,陸上・水中いずれでできたかを問わず,溶岩をその内部構造から以下のよ うに2大別することができます.一つは,一枚の溶岩流がさらに小さな溶岩のフロー ユニット(多くは直径数10cm〜数m程度)に分けられるものであり,それぞれの フローユニットは冷却されたため急速に固結してできた殻をもっていて,その形態か らローブ(lobe:耳たぶ)またはトウ(toe:つま先)などと呼ばれているといった 溶岩です.もう一つはそのようなフローユニットに分割されない一続きの溶岩です. Walker(1971)は,前者をcompound lava,後者をsimple lavaと呼びました(ここでは,それぞれ,集成溶岩,単純溶岩と呼んでおきましょう ).
 ご質問の枕状溶岩(pillow lava)は水中でできた集成溶岩の一種です.ローブの ひとつひとつはピローローブなどと呼ばれます.溶岩が水中を比較的ゆっくりと流れ ると,多くは枕くらいの大きさのローブがムニュと出てきては表面が固まり,さらに そのどこかが破れて次のローブができるといったことを繰り返して集成溶岩全体は前 進・形成されます.ですからピローローブの外殻には,マグマが周囲にある無尽蔵の 海水によって冷やされて急冷してできたガラス部分が,少なくとも玄武岩では必ずで きます.お尋ねのそのガラスの特徴については,Moore(1966)の論文の記載をごらん ください.私の経験も加味して解説しますと,ピローローブの外縁のガラス層は透明 な薄茶色のガラス(5〜20mm厚)からなっていて,内側へいくと,微斑晶を核と して苦鉄質鉱物や鉄酸化物などの骸晶状微結晶が成長し,さらに内側では,それが全 面に広がってきます.ただし,ガラスはパラゴナイトという変質物に置き換わってい ることや,脱ガラス化していることも往々にしてあります.
 次にニセ枕状溶岩ですが,これは枕状溶岩と違って,必ずしも集成溶岩とは限りま せん.これは,一見枕状溶岩のローブに似た岩塊の集合体のようであって,各岩塊の 内部には岩塊表面に垂直な冷却節理が発達しているため枕状溶岩と間違えそうではあ りますが,実は水中にできた単純溶岩の内部が冷却のために収縮して局面や平面の開 口割れ目ができ,それにそって水が進入したためにできたものです.最初Watanabe and Katsui(1976)によって阿蘇の水中デイサイト溶岩で記載・定義付けされました が,玄武岩溶岩にもできます.また,Walker(1992)は玄武岩質枕状溶岩のひとつの ピローローブの中にできた収縮割れ目に沿って水が侵入し冷却節理を生じたものまで もニセ枕状溶岩と呼んでいます.ニセ枕状溶岩を枕状溶岩と識別するには,枕状溶岩 のローブが溶岩の流動と同時期に形成されるのに対して,ニセ枕状溶岩は溶岩が定置 したのちにその流動の痕跡(気泡の配列など)と斜交する割れ目によりできることが 決め手(Watanabe and Katsui,1976)とされています.またニセ枕状溶岩の岩塊 の外形からも判断されます.
 最後に陸上と水中の溶岩の見分け方ですが,これは難しい問題です.とりわけ,枕 状溶岩と陸上の集成パホイホイ溶岩とは,水か空気かのいずれかに冷却されてローブ をなしている点では共通しているわけですから,多くの共通点をもっていて,相違点 を明らかにする研究としては,これまで以下の論文があります.とりわけローブの表 面形態(Yamagishi, 1991参照)の相違は重要ですのでその点に注目して文献にあたっ てください.なお,私の今年の地球惑星連合学会での講演要旨 (http://geogate.shinshu-u.ac.jp/Miyake/CRBabst1.html) も参考にしてください.

枕状溶岩と集成パホイホイ溶岩を比較研究した文献 Jones, J.G., 1968, Pillow lava and pahoehoe. J.Geol., 76, 485-488 Truckle, P.H., 1979, Pahoehoe and pillow lavas from the Suguta Trough Turkana, Kenya. Geol.Mag., 116,139-142 Walker, G.P.L., 1992, Morphometric study of pillow-size spectrum among
 pillowlavas.Bull.Volcanol., 54, 459-474 Walker, G.P.L., 1971, Compound and simple lava flows and flood basalts.
 Bull.Volcanol., 35, 579-590 その他の文献 Moore, J.G., 1966, Rate of palagonitization of submarine basalt adjacent to Hawaii.USGeol.Surv.Prof.Pap., 550-D, 163-171. Watanabe, K. and Katsui, Y., 1976, Pseudo-pillow lavas in the Aso caldera, Kyushu, Japan. J.Japan.Assoc.Min.Petrol.Econ.Geol., 71, 44-49. Yamagishi, H., 1991, morphological features of Miocene submarine coherent lavas from the "GreenTuff" basins: examples from basaltic and andesitic rocks from the Shimokita peninsula, northern Japan. Bull.Volcanol., 53, 173-181. (6/16/99)

三宅康幸(信州大学理学部地質科学教室)


Question #3875
Q 溶岩の速さは、どのくらいなのですか?噴火のしかたで速さは、違うんですか?また、そのときの平均とかはどのくらいなのですか?あとマグマとか溶岩の温度を教えてください! (02/20/03)

川瀬里奈:小学生:12

A
 例えば、丸善から出版されている理科年表をみてみると、実測された溶岩の温度は 摂氏で約850から1200度程度までです。マグマとは地下にある状態ですから、冷えて おらずさらに高温であると考えられます。例えば、月の表面を作っている溶岩を実験 室で溶かすと約1400度でさらさらのマグマの状態となります。溶岩の流れる平均の速 さがどれだけかと言うことは簡単には言えません。その速さは溶岩の粘り気と斜面の 傾斜に大きく左右されます。火口を出た瞬間は時速数十キロメートルで流れていたも のでも、冷えて粘り気が増えるほど遅くなり、ついには止まります。アフリカの玄武 岩火山では流れる溶岩から車でも逃げるのが難しかったと言われています。ここでは 時速60km以上にもなったのでしょう。粘り気のある流紋岩などでは1日でも最高 でも数10mしか前進しないこともあります。
 (02/22/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター) --


Question #3842
Q はじめまして、私は会社で地盤調査、地質調査を担当している者ですが、火山地形の中に、火山斜面、溶岩流地形、火山山麓扇状地と3つありますが具体的にどんな地形なのかを教えて下さい。 (02/09/03)

AC:会社員:23

A はじめまして。
 土木・建設業界では,学術的に定義されていない用語をその場の雰囲気で安易に使 う傾向があり,ACさんも同じギョーカイの方なので,ひょっとしてギョーカイ内に出 回っている報告書や文章をそのままお読みになって質問しているのでは?!とちょっと 危惧します。 「火山斜面」という言葉をいろいろ探してみましたが,明確に定義しているものはは く,「火山斜面」という用語を用いている文献は見渡す限り「国土地理院発行,火山 土地条件図」だけみたいです。さらに,同じ火山土地条件図でも「火山斜面」という 用語を用いているものとそうでないものがありました(他にあったら教えてくださ い) 。
 火山土地条件図で「火山斜面」という用語を用いているものでは「1/50,000火山土 地条件図 十勝岳」があります。この「火山土地条件図 十勝岳」では,溶岩流や火 砕流など,地形の成因が明らかなものに対して「溶岩流地形」,「火砕流地形」な ど, 地形の成因がわかるように名称を与え,それ以外の成因ははっきりしないが, 明らかに火山活動によって形成されたと判断できる開析段階の火山体斜面を「火山斜 面」として取り扱っているようです。
 ですから,「溶岩流地形」は,溶岩流が流下することによってできた地形のこと で, 溶岩じわ,溶岩堤防,溶岩側端崖,溶岩末端崖などの微地形が,航空写真判読 や現地 調査で明瞭にわかるものを指しています。
 火山山麓扇状地は,火山体の浸食により供給された物質が火山のすそ野に扇状に堆 積してできた地形のことを指します。ちなみにギョーカイでは,火山の谷出口付近に 存在する扇状の平滑面で平均勾配1〜14°程度の地形のことを指していることが多い ように見受けられます。
 せっかくの機会ですので,ギョーカイ用語ではなく正しい火山用語を勉強されては いかがでしょうか?以下の本が大変わかりやすく,私も時々使っています。


 守屋以智雄(1983) 日本の火山地形.東京大学出版会
 守屋以智雄(1992) 自然景観の読み方1 火山を読む 岩波書店
 日本火山学会(1984) 空中写真による日本の火山地形


 (04/28/03)

伊藤英之 (砂防・地すべり技術センター総合防災部)


Question #4187
Q 来年センター試験の地学を受ける者です。岩床、岩脈、溶岩、バソリスが、火山岩だという参考書もあるし深成岩だという参考書もあります。それぞれどちらなのでしょうか?教えてください (08/27/03)

ぐり:学生:18

A
 岩床、岩脈、バソリスは形状で呼ばれるものですが、溶岩は違います。溶岩は地表や地表付近にあるマグマのことで、溶けた状態のものも固まった状態のも のも「溶岩」と呼びます。
 火成岩としての岩床と岩脈も地下に貫入したマグマ(溶岩)が固まったものです。バソリスとは、地下深部(深さ3キロ以下程度)で固まった巨大なマグマ の塊まりであったものが、現在は地上に露出しているものをいいます。一般に分布の面積が百平方キロ以上のものを指します。
 深成岩と火山岩はそれぞれ地下深部と地上で固まったマグマを指します。火山岩の場合はそれから飛散したり、再移動したものも含みます。火山岩と深成岩 の中間的な性質をもつものを半深成岩と呼びます。つまり地上と地下深部(3キロ程度)との間で固まったものです。深成岩、半深成岩、火山岩は、もともと は、地上に露出する岩石について、ガラスの有無や結晶の大きさ、そろい方などから、形成された場所を想定してそう呼ばれたものです。
 厳密には、岩床や岩脈は半深成岩で、バソリスは深成岩ということになります。また、溶岩は火山岩のこともありますし、半深成岩のこともあることになり ます。しかし、しばしば、火山の根っこにあたる岩脈や岩床のことも広く火山岩類としてひとまとめにしていうこともありますので、岩脈や岩床を火山岩とす ると間違いかと言うと必ずしもそうではありません。
 結論は深成岩のバソリスを除いて、半深成岩か火山岩ということになります。
 センター試験では曖昧なことは出題されないと思いますので、典型的なもの以外は覚えなくてよいでしょう。
 (08/29/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #5328
Q マグマが地表に出たものを溶岩というと書籍には書いてあります。
マグマがラテン語・ギリシャ語であるという記述もいくつか見ました。
溶岩は明らかに日本語なのですが、マグマは日本語では何と言うのでしょうか。
今までそんなことを考えたことはなかったのですが、子どもに質問されて
答えに困ってしまいました。 (11/28/03)

あがろ〜:社会人:36

A マグマ(magma)は「岩しょう(漿)」と訳されています。しかし、この言葉は辞書には載っていますが現在ではほとんど使用されていません。岩石が高 温でとけて液体(溶融)状態になったものがマグマの意味ですから、「岩」と「液体」からイメージされた言葉だと思います。
 (11/30/03)

ホームページ管理者