今回の三宅島の火山活動で海水の表面に現れた青白い濁りのようなもののことをご
質問されていると思います。これは変色海水と呼ばれるものです。これは次のような
プロセスで発生すると考えられています。
1)海底でマグマが海水を加熱します。この加熱された海水はマグマから出てきたガ
スを取りこむために酸性(*)になると考えられます。(*)マグマから出てきたガ
スは塩化水素や二酸化硫黄などのガスを含むのでこれが海水にとけると塩酸や硫酸に
なるのです。マグマから出てくるガスにはこれらのガス以外にも窒素ガスや水素ガス
などが含まれます。
2)酸性でかつ高温の海水が形成されると海底の岩石と接触し,岩石から,鉄(Fe)
,アルミニウム(Al),珪素(Si)等の元素が溶けだします。
3)しかしこの高温の酸性海水は冷たい海水と混ざり,酸性度が低く,中性に近くな
ります。
4)中性の水溶液には鉄(Fe),アルミニウム(Al),珪素(Si)等の元素は溶けた
ままで居られない性質があるので,これらの元素は水酸化物(Fe(OH)3,Al(OH)3)な
どの形の極めて細かい粒子状の鉱物に変化します。
5)これらの粒子を含んだ海水はマグマから出てきた海水に溶けない不活性なガス(
例えば窒素ガス)の上昇に巻き上げられて海面に到達します。これが変色海水の正体
です。
つまり変色海水はマグマの活動によって発生するもので,海底での火山活動の証拠
です。鉄(Fe),アルミニウム(Al),珪素(Si)の組成割合により色が変化します
。鉄(Fe)が多いと黄色あるいは茶色になり,アルミニウム(Al),珪素(Si)が多
いと白っぽくなります。経験的には海底火山活動が激しいと鉄(Fe)が増えるようで
す。意外なことに変色海水の温度は周囲の表面海水よりも温かくないのです。これは
海底の冷たい海水が巻き上げられるので,高温の海水が混ざったとしてもそれ以外の
海水の量が多いので冷やされてしまうからです。
大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)
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