火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火現象と噴出物・岩石・鉱物

海底噴火


Question #187
Q はじめて質問させていただきます。 CG制作に携わるものですが、海底噴火の様子を海中映像でとらえた資料はあるでしょうか? また文書資料で同様のものがあったら教えてください (1/30/99)

佐久間敏郎:映像プロデューサー:44歳

A 高温のマグマと水が接触すると 水蒸気爆発が発生することがあります。 これは、水とマグマの量比やマグマの温度、マグマの噴出率、 水深、マグマ中に含まれる揮発成分の量によります。 水が多すぎず少なすぎずの場合には、時として大水蒸気爆発が発生します。

海底噴火の場合、水は十分にありますので 水深が浅く、噴出率が高いと大爆発が発生しやすいわけです。 伊東沖の海底噴火の時の映像にもありましたが コックステイルジェットという弾道を描いて飛行する特徴的な噴煙を伴ったり、 水面上を横殴りに高速で広がるサージを発生させたりします。 明神礁の噴火ではサージで調査船が沈没したのではないかと言われています。 このような激しい噴火の映像は、なかなか捉えることはできないものです。

アイスランドのスルツェイ火山の噴火では そのような爆発的な噴火の映像がごく近くで撮影されています。 「Birth of iland」という映画でで、日本語版のビデオもあります。 レイキャビクのvolcano showというところで入手できます。 ただし、これは海面よりも上の映像です。 残念ながら、このような、 激しい海底噴火を水中で捉えた映像はありません。

ハワイのキラウエア火山では、 1983年からずっと噴火が続いています。 火口そのものは山の上の方にあるのですが 延々と地表や溶岩トンネルの中を流れて やがて海岸に到達します。 そこでは、水と反応して爆発したりもしますが、 爆発を起こす揮発成分が抜けきっているためか 意外なほど静かに水中に流れ込む場合もあります。 そのような場合には、水中を静かに流れる溶岩流の様子を ダイバーが撮影することも可能なようです。

水中の溶岩流は急冷され、すぐに表面にガラスの殻ができます。 これが枕のような形をしていることが多いので「枕状溶岩」と呼ばれます。 この枕は、餅が膨らんではガスが抜けるような感じで 次々に子供を産み落とすように、流れていくのです。 この様子を水中カメラで捉えた見事な映像は結構有名です。 はじめて撮影されたのは1976年頃と思います。 その後、いろいろな撮影者がいたようですが、このごろは コナのアマチュアグループが積極的にやっているようで、 最近のdiscovery channelでも紹介されていました。 くわしいことは、そちらにお問い合わせください。

ただし、これは海底火山の噴火の映像ではありません。 陸上を流れていた溶岩流が 海に流れ込んだあとの水中の映像であって これを、「海底噴火」と呼ぶかは意見が分かれるかもしれません。 (2/12/99)

千葉達朗(アジア航測(株)防災部)


Question #717
Q 三宅島の海底噴火をテレビで見ましたが、なぜ、海底が青っぽくなっていたのですか?
また、他にも色々な色に変色するのでしょうか? (06/29/00)

sanae:公務員:22

A
 今回の三宅島の火山活動で海水の表面に現れた青白い濁りのようなもののことをご 質問されていると思います。これは変色海水と呼ばれるものです。これは次のような プロセスで発生すると考えられています。

1)海底でマグマが海水を加熱します。この加熱された海水はマグマから出てきたガ スを取りこむために酸性(*)になると考えられます。(*)マグマから出てきたガ スは塩化水素や二酸化硫黄などのガスを含むのでこれが海水にとけると塩酸や硫酸に なるのです。マグマから出てくるガスにはこれらのガス以外にも窒素ガスや水素ガス などが含まれます。

2)酸性でかつ高温の海水が形成されると海底の岩石と接触し,岩石から,鉄(Fe) ,アルミニウム(Al),珪素(Si)等の元素が溶けだします。

3)しかしこの高温の酸性海水は冷たい海水と混ざり,酸性度が低く,中性に近くな ります。

4)中性の水溶液には鉄(Fe),アルミニウム(Al),珪素(Si)等の元素は溶けた ままで居られない性質があるので,これらの元素は水酸化物(Fe(OH)3,Al(OH)3)な どの形の極めて細かい粒子状の鉱物に変化します。

5)これらの粒子を含んだ海水はマグマから出てきた海水に溶けない不活性なガス( 例えば窒素ガス)の上昇に巻き上げられて海面に到達します。これが変色海水の正体 です。


 つまり変色海水はマグマの活動によって発生するもので,海底での火山活動の証拠 です。鉄(Fe),アルミニウム(Al),珪素(Si)の組成割合により色が変化します 。鉄(Fe)が多いと黄色あるいは茶色になり,アルミニウム(Al),珪素(Si)が多 いと白っぽくなります。経験的には海底火山活動が激しいと鉄(Fe)が増えるようで す。意外なことに変色海水の温度は周囲の表面海水よりも温かくないのです。これは 海底の冷たい海水が巻き上げられるので,高温の海水が混ざったとしてもそれ以外の 海水の量が多いので冷やされてしまうからです。

大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)