空震(空振)とは,火山の爆発や火砕流の発生により火口周辺の空気が
動かされ,その振動が遠くまで伝わる現象です.噴火の衝撃で窓ガラスが
震えたりするのも,この空振が発生するからです.空振計のセンサーは基
本的にはマイクロフォンです.風が強いとその振動が記録されます.
一方,震度は,地震によって地面が揺れる強さを階級で示したもので
す.この階級(震度2とか震度3とか)は,かつては気象台職員などが各
自の体感で決めていました.が,最近では,地面が揺れる際の加速度を計
測し,それを基に客観的に震度を決める計器が用いられるようになりまし
た.これが震度計です.加速度や地面の変位そのものを測るのは,地震計
と呼ばれています.
まとめると,空気の振動を測るのが空振計,地面の振動を測るのが地震
計,地震計のデータをもとに震度を決めるのが震度計,ということになり
ます.それぞれの機械は,名前は似ていますが,測ろうとする振動現象の
種類や設置する目的が異なっているんです.設置する場所なども,当然な
がら違ってきます.
さて,空振に戻ります.火山の噴火は,地下の物質を空気中に放出する
現象ですから,結果として周囲の空気を乱すことになります.爆発的な噴
火が起きれば,衝撃的な空気振動が生じます(ボンという音を想像してく
ださい).一般的には,爆発が大きければ空振も大きくなります.です
が,噴火現象は単純ではないので,厳密な比例関係は成り立ちませんが.
また,噴煙柱が立ち登るような噴火では,空振は衝撃的なものではなく,
連続的な振動になります(ゴーという音を想像してください).
火山性地震,火山性微動は,いずれも火山の活動に関連した地面の振動
です.これまでの話に関連させると,空振計ではなく地震計で記録される
振動ということになります.地震と微動の区別は,主に振動の継続時間に
よってなされることになります.火山性地震は単発的な振動で,地下でな
んらかの破壊現象が起きて発生すると考えられています.一方火山性微動
は,振動が数十秒から数分,時には何時間も継続する現象で,地下のマグ
マやガス,熱水といった流体の移動が原因ではないかと考えられていま
す.
以上,似たような単語が並んでわかりにくいかもしれませんが,ご理解
いただけましたでしょうか.ご不明な点があれば,またご質問ください.
また今後は,できれば質問だけでなく,その背景(どうして知りたくなっ
たのか)を少しでも書いていただけると嬉しいです.こちらもお答えしや
すいし,応答ももっと楽しくなると思います.
(10/28/98)
西村裕一(北海道大学・理・有珠火山観測所)
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