火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火現象と噴出物・岩石・鉱物

大きな噴火


Question #72
Q
 初めて質問します。
 私は、今社会科の時間に火山と人々の生活について調べています。
 そこで、初歩的な疑問がわきました。
 歴史上、最も大きな噴火はいつ、どこでおこったのですが。
 もちろんわかっている範囲でかまいませんのでよろしくお願いします。 (5/3/98)

松田 さおり:中学2年生:13

A
 人間の歴史に残る最も大きな噴火は,インドネシアのスンバワ島にあるタン ボラ火山で1815年におきました.タンボラ火山は直径60km海抜2850mの火山で, この噴火でできた直径6km深さ1kmのカルデラが山頂にあります.1812年から噴 火を始め,15年4月に大きな爆発を起こし7月まで続きました.この時の噴火の 爆発音は1800km離れた場所にまで聞こえたと言います.また,火山の周辺で は,噴火後3日間は,昼でも真っ暗であったといいます.この噴火の際に放出 された火山灰や軽石の量は150立方kmにも達すると見積もられています.この噴 火で約1万人が死亡し,そのあと餓死・病死者がスンバワ島で38,000人,隣のロ ンボク島で44,000人が出るなど,死者の総計は92,000人にも達しました.犠牲 者の数でも史上最大でした.また,翌年の北半球の夏は平均気温が0.7度低くな ったといいます.
 これと同じような規模の噴火は,今から約6,400年前の日本でも起きました. 鹿児島の南の海中にある鬼界カルデラを作った噴火です.また,もっと古く は,鹿児島湾の姶良カルデラ(約22,000年前)や阿蘇カルデラ(約8万年前)を 作った噴火がさらに大きい規模の噴火でした. (5/5/98)

中田節也(東大・火山センター)


Question #2343
Q 過去、北海道や九州等のカルデラにおいて想像を絶する規模の噴火が起きていたと知り大変驚いていますが、日本で過去数十万年のうちで1番規模の大きかった噴火はどの噴火で、どれほどの噴出物を出したのでしょうか? また、この種の噴火では巨大な火砕流が発生し100km以上先にまで達することもあるそうですが、このような火口からはるか先にまで到達した火砕流でも、まだ高温を保っているのでしょうか?

(06/23/02)

しろしろ:フリーター:24歳

A
 「火山噴火の規模で、一番大きいのは何か」というご質問に答えるのは、実は、け っこう難しいのです。地震と比べると、噴火現象はきわめて多様なので、規模を単純 に定義するのが簡単ではないからです。しかし、多くの場合、火山爆発指数 (Volcanic Explosivity Index)というのが、使われています。これは、おもに噴出 量によって、噴火の規模を段階別に分けたものです。この指数に従うと、日本で最大 級の噴火は、9万年前に阿蘇カルデラから出た阿蘇4火砕流や、2万5千年前に鹿児島湾 内の姶良(あいら)カルデラから出た入戸(いと)火砕流の噴火が、東西の横綱とい えます。いずれも数100立方キロメートルの噴出物を出しています。
 ただし、どちらが一番かと聞かれると、やはり悩みますね。というのは、比べるべ き噴出量として、地上に残った堆積物以外に、空高く舞い上がった細かい火山灰の量 も考えなければならないので、その見積もりがたいへん難しいからです。そこで、こ こでは、阿蘇4火砕流と入戸火砕流の両噴火が、最大級だと述べたわけです。
 過去数十万年前までさかのぼると、90万年前に噴出したアズキ火山灰(今市火砕 流)や100万年前に出たピンク火山灰(耶馬溪(やばけい)火砕流)も同じくらい巨 大な噴火の痕跡を残しています。両者はいずれも、大分県の猪牟田(ししむた)カル デラから噴出したものです。しかし、どちらも古い堆積物なので、いったいどれが最 大かを決めようとしても、なかなか決めがたいと言うのが実状です。火山の規模の決 め方に関しては、火山研究者の間でも様々な考え方があります。第1位を決めるの は、それほど重要ではないのではないか、という気も、私にはしています。
 上に挙げた阿蘇、入戸、今市、耶馬溪のいずれの火砕流も、巨大噴火の産物です。 大規模な火砕流が発生し、中には150キロメートル先まで流れ下ったものもありま す。これらの堆積物は高温であったために、流れた先で溶結凝灰岩(ようけつぎょう かいがん)となることもあります。つまり火山灰や軽石など、いったんバラバラの形 になった固体が、再び液体に近い状態となったのです。軽石や火山灰が溶結凝灰岩と して固まるには、摂氏700度を超すような高温であったことが、分かっています。さ らに興味があるようでしたら、最近私が書いた火山の入門書(『火山はすごい』 PHP新書)の「阿蘇山」の章を参考にしてみて下さい。
 (07/23/02)

鎌田浩毅(京都大学・ 総合人間学部・地球科学分野) --


Question #3915
Q ここのページで火山に興味を持ち、色々な所のホームページを見ていてふと疑問に
思ったのですが、各々の火山の噴火履歴に大噴火の時と普通に噴火と記されて
いる時が有りますが、何をもって大噴火とするのかという定義みたいな物は
有るのですか? (03/18/03)

シゲ:会社員:29

A 火山噴火の規模を表現する方法があります。例えば、一回の噴火(爆発)で放 出される火山灰や溶岩の量を基準にしており、これはその噴火で放出される熱 エ ネルギーの量に対応しています。それによると大規模噴火というのは1回 の噴火でおよそ1億立方mの噴出物量のあるもので、中規模噴火というのはお よそ1 億〜百万立方mの噴出量のある噴火です。それいかは小規模噴火です。 しかし、火山ごとに数多くある噴火のうち、特に規模が大きい場合に大噴火と いうこと があります。ホームページに記述されている大噴火では、これらを 混同して使っていると思います。さらに、新聞やテレビ報道などで使われる 「大噴火」は規 模よりも社会的なインパクトや印象を重視して大噴火と表現 されていることが多いと思います。
 (03/18/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)