火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

噴火現象と噴出物・岩石・鉱物

スコリア・軽石


Question #1747
Q 初めて質問します。浅間山ふもとに転がっていた石についてです。軽石のようにとっても軽く驚いてしまいました。でも色は市販の軽石のように白くなく、どちらかといえば黒や赤っぽい色でした。これは火山の噴火の時に出来るものなのでしょうか?火山の噴火といえばドロドロのマグマのイメージが先行しますが。またこの石は空気の穴がたくさんあるのですね。どうしてドロドロマグマがこのような軽い石までできるのか不思議です。こういった石は火山岩と呼ぶのでしょうか?つらつら書きましたが、浅間山で私が拾ってきた石について呼び方や特徴などを是非教えて下さい。出来ましたらメールアドレスまでお返事くださると大変助かります。 (06/07/01)

川口かえる:会社員:28

A
 かえるさんは浅間山で拾ってこられた石について,とてもするどい観察をなさいま したね.特に,たくさんの穴があることに目をつけられましたが,これには大きなヒ ントが隠されています.かえるさんが観察された“空気の穴”は,噴火の時に“ドロ ドロマグマ”の中に溶けこんでいたガス成分(大部分はH2O)がマグマから抜け出し てあぶくを作り,さらにそのガスがあぶくの中から空気中に逃げ出していった跡なの です.ですので,かえるさんの石は軽くて穴だらけだとは思いますが,火山の噴火の 時に出来た,れっきとした火山岩といえます.ドロドロのマグマが川のように流れる 噴火もありますが,あぶくだらけのマグマがばらばらに砕けて勢いよく噴き出す噴火 もあるのです.炭酸飲料の入った瓶の栓を開けた時に,あぶくがいっせいにできて, はじける様子を思い浮かべていただければよいかと思います.
 さて浅間山で拾ってこられた石の呼び名ですが,火山岩を化学的な性質から分けた 場合の呼び名としては,安山岩だと思われます.ふもとのどこで拾ったかにもよりま すが,浅間山の石の大半は安山岩なので,おそらくそうだと思います.
 また,噴火の時にマグマが砕けて固まったものの呼び名もいろいろあります.かえ るさんの石の場合は次のような理由でちょっと難しいです.火山学では,穴が多くて 白いものを“軽石”,黒いものを“スコリア”と呼びます.白いとか黒いとかの色の 違いは,マグマの化学成分の違いとだいたい対応していて,シリカ(二酸化ケイ素) 成分が多いほど白く,少ないほど黒くなります.例えば,有珠山の軽石は市販のそれ のように白いですが,富士山のスコリアはとても黒いです.ところが浅間山のマグマ は,化学成分が有珠山と富士山の中間ぐらいで,浅間山では焦げ茶や薄茶,あるいは ねずみ色の石が見つかります.そのような色の石を何と呼んだらよいか困るわけで す.さらにやっかいなことに,富士山と同じようなマグマが噴き出すハワイでは,黒 っぽいねずみ色のものが軽石と呼ばれています.山全体が真っ黒に近いハワイでは, ねずみ色は白く見えるということでしょうか.このような訳で,白と黒の中間色の時 は呼び方に困ってしまうのです.私自身は浅間山の穴だらけの石を研究しています が,いろんな色の石があるので,どちらかというと黒っぽい時はスコリア,ねずみ色 っぽい白の時は軽石と呼んでいます.なお,赤っぽい石はマグマ中の鉄分が酸化した ものと思われます.鉄錆びのようなものです. (6/12/01)

安井真也(日本大学・文理学部・地球システム科学科)


Question #1647
Q 軽石の中の穴の出来方についての質問なのですが、あの穴は石の中の水分が、熱によって蒸発して出来たものであっているのですか? (04/06/01)

へろへろ:もうすぐ高校生:15

A 火山の地下にあるマグマ溜まりの中で、マグマには数パーセントの水が溶け込んでい ます。意外と多いと感じられるのではないですか? 多量の水がマグマの中に溶け込 めるのは、マグマ溜まりが地下深くにあるため圧力がかかっているからです。マグマ が上昇して地表に近づくと、圧力が下がるためにいままでマグマに溶け込んでいた水 が気化します。

ビールやサイダーも栓を抜くと泡立ちますが、これは栓を開けることで瓶の中の圧力 が下がり、液体の中に溶けていた二酸化炭素が気化するためです。というわけで、軽 石の穴(泡)はビールやサイダーと同じように、圧力が下がる(減圧する)ことによ ってできた、というのが正解です。

岩石が熱せられて岩石中の水が気化して泡ができ、軽石になることもあります。とい っても天然の軽石ではありません。パーライトという名称で販売されている人工軽石 で、土壌の改良や断熱材に用いられています。身近な所ではセントポーリアの土など として園芸店で入手できます。これは黒曜石という火山ガラスを熱して作られていま す。工場でできた軽石です。ぜひ探して天然の軽石と比較してみてください。

なお、園芸店には天然の軽石も多数並んでいます。産地を調べたり違いを考えたりす るとおもしろいかも知れません。 (04/12/01)

(萬年一剛 神奈川県・温泉地学研究所)


Question #3497
Q マグマに中には、なぜスコリア、火山灰などが、入っているんですか?それに、カルデラができて、湖が、できるというのですが、カルデラは、マグマみたいに熱くないんですか?もし熱いなら、なぜ湖ができるのですか?蒸発してしまって、湖ができないんじゃないでしょうか? (11/21/02)

小学6年生:なし:12

A マグマは高温でドロドロにとけたものをさします。スコリアや火山灰というの は、マグマが噴火の時に冷えて固まってできたもので、その形、色、大きさな どのとくちょうからそのようによばれます。

スコリアとは泡だった黒っぽいものです。白っぽい色のときは軽石(かるい し)とよばれます。それらがくだけて、こなごなになれば火山灰になります。 火山灰は別の原因でもできます(下の回答を参考にして下さい)。

カルデラができるにはいろいろな原因があります。地下にあったたくさんのマ グマが一度になくなったために、地面が落っこちてできることや、山が大きく くずれたり、噴火のときに火口付近がはでにふき飛ばされたりしてできること があります。カルデラの中にいつも湖ができるわけではありません。うまく水 がせき止められるとカルデラ湖ができます。

ふつうマグマがたまっているのは地下数キロメートルから十キロメートルの深 さですから、地上にはその熱がほとんど伝わってきません。カルデラができる ときに地上に噴出(ふんしゅつ)した溶岩や堆積物(たいせきぶつ)がまだ熱 いときには、水が蒸発して湖ができにくいこともあるかもしれません。高温の 火山ガスが吹き出しているところがあればその周辺だけちょっとだけあったか いかもしれません。大きなカルデラ湖ができるのは噴火からずいぶん時間がた っていることが多いので水は熱くないのがふつうです。でも、火山がふたたび 活発になってマグマが上昇してくれば、水が部分的にあたためられたり、蒸発 することもあるでしょう。
 (11/23/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)