噴火現象と噴出物・岩石・鉱物
火山岩・火成岩 |
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Question #1565
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Q |
初めまして。中学校の理科教師です。いつも火山の単元になると頭をもたげてくる疑問があります。その質問とは…
「いわゆる溶岩と、玄武岩などの火山岩は同じなのか違うのか?もし違うのならどんなところが違うのか?」ということです。
火山の単元では、まず火山噴出物として溶岩(浅間の鬼押し出しのようなあれです)を学習します。そしてそのあとには火山岩の仲間として玄武岩・安山岩・流紋岩を取り扱います。火山岩の説明はどんな本にも「マグマが地表や地表近くで急激に冷やされて固まったもの」と書かれています。
そこで疑問としてわいてくるのが、「だったら溶岩も火山岩なのか。はたまた岩石標本にあるような玄武岩や流紋岩を溶岩と呼んでいいのか。」ということです。ときどき、玄武岩質の溶岩なんて言葉もありますが、よけいわからなくなってしまいます。
お忙しい中まことに申し訳ありませんが、よろしくご教導ください。
(02/14/01)
悩める子羊:教員:35
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A |
火山岩(火山噴出物)を構成するものとして、溶岩、溶岩餅、スコリア、軽石、火
山灰などがあり、後者がある程度集合したものを、溶岩流、火山砕屑岩、凝灰岩など
といいます。ですから、溶岩(流)、火山砕屑岩、凝灰岩なども火山岩です。溶岩流
は「流」をはぶいて単に溶岩ということが普通です。また、溶岩とは液体状態にある
マグマを指す場合と、マグマがある程度の大きさをもって固まったものを指す場合と
があります。玄武岩、安山岩、流紋岩などは火山岩を化学組成や入っている鉱物の種
類・大きさで分類した時の名称で、特にこだわらない限りは溶岩のことを指します。
ですから、玄武岩・安山岩・流紋岩はもちろん火山岩です。
あまり良い例えではありませんが、食べ物には、米、豆、なす、みかん、豚肉など
があり、それらが集合して、穀物、野菜、果物、肉類などといいます。また、成分で
分けると、脂肪、でんぷん、たんぱくとなります。たんぱく質の食べ物、あるいはた
んぱく質の穀物というように、玄武岩質の火山岩、あるいは玄武岩(質)溶岩という
使い方をします。
「鬼押し出し溶岩」は安山岩(質)の溶岩(流)で、浅間山火山の一部と作ってい
る火山岩です。
(02/19/01)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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Question #1965
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Q |
白根山の湯釜はなぜエメナルドグリーンなんですか?
またその隣の空釜の底にいっぱいへこみがあるのですがそれはどうしてできたのか教えてください。
(10/29/01)
ぴろゆき:大学生:20
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A |
湯釜の色の原因は,水に溶けている鉄イオン(Fe2+)と水に漂っている硫黄などの
微粒子のためであると思われます.色の原因を完全に特定するのは,なかなか容易で
はありません.たとえば,湯釜の水をビーカーにいれて眺めても,エメナルドグリー
ンには見えません.殆ど透明で,すこしにごっているだけです.つまり水そのものが
エメナルドグリーンではないのです.おそらく,湯釜の湖水に入射した太陽光線が反
射する際に,特定の波長の光が吸収され,結果として湖がエメナルドグリーンに見え
ているのだと考えられます.
湯釜の隣の空釜の底のへこみは,1982,1983年の湯釜クレーターにおける
噴火の際に放出された岩が着弾してできた穴です.いつもは穏やかな湯釜ですが,噴
火すると暴力的になりますので,立ち入り禁止は守ってください.
(10/30/01)
大場 武(東京工業大学・火山流体研究センター)
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Question #4187
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Q |
来年センター試験の地学を受ける者です。岩床、岩脈、溶岩、バソリスが、火山岩だという参考書もあるし深成岩だという参考書もあります。それぞれどちらなのでしょうか?教えてください
(08/27/03)
ぐり:学生:18
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A |
岩床、岩脈、バソリスは形状で呼ばれるものですが、溶岩は違います。溶岩は地表や地表付近にあるマグマのことで、溶けた状態のものも固まった状態のも
のも「溶岩」と呼びます。
火成岩としての岩床と岩脈も地下に貫入したマグマ(溶岩)が固まったものです。バソリスとは、地下深部(深さ3キロ以下程度)で固まった巨大なマグマ
の塊まりであったものが、現在は地上に露出しているものをいいます。一般に分布の面積が百平方キロ以上のものを指します。
深成岩と火山岩はそれぞれ地下深部と地上で固まったマグマを指します。火山岩の場合はそれから飛散したり、再移動したものも含みます。火山岩と深成岩
の中間的な性質をもつものを半深成岩と呼びます。つまり地上と地下深部(3キロ程度)との間で固まったものです。深成岩、半深成岩、火山岩は、もともと
は、地上に露出する岩石について、ガラスの有無や結晶の大きさ、そろい方などから、形成された場所を想定してそう呼ばれたものです。
厳密には、岩床や岩脈は半深成岩で、バソリスは深成岩ということになります。また、溶岩は火山岩のこともありますし、半深成岩のこともあることになり
ます。しかし、しばしば、火山の根っこにあたる岩脈や岩床のことも広く火山岩類としてひとまとめにしていうこともありますので、岩脈や岩床を火山岩とす
ると間違いかと言うと必ずしもそうではありません。
結論は深成岩のバソリスを除いて、半深成岩か火山岩ということになります。
センター試験では曖昧なことは出題されないと思いますので、典型的なもの以外は覚えなくてよいでしょう。
(08/29/03)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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