火山のできる場所と地球の大構造
(中央)海嶺・海溝 |
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Question #11
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Q |
アンデス山脈の火山や南極大陸の火山はどのくらいあり、また研究は進んでいますか。
(2/17/97)
単なる学生:学生:21
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A |
地球上の火山は、3つの種類の場所にできます.1)島弧海溝系,2)ホット
スポット,3)中央海嶺.ご質問のアンデス山脈の火山は1)の島弧海溝系
に,南極大陸の火山は2)のホットスポットのものと1)の島弧海溝系のものが
あります.アンデス山脈でよくみられる火山岩はアンデサイト(andesite)と
よばれます.同じ島弧海溝系に属する日本の火山にはにもそれと同じ種類の岩
石が多くありますが日本語の「安山岩」は、漢字表記をそのまま使用したもの
です.
このアンデス山脈に沿って多数の火山がありますが,その中でも有名な活火
山をいくつかあげると,(1)コトパクシ,(2)ネバドデルルイス,(3)
ミスティ,(4)ビジャリカなどです.このうち(2)のコロンビアのネバド
デルルイス火山は1985年の噴火の時に,大規模な泥流が発生,麓にあったアル
メロの町を襲い,2万5千人もの人名が奪われました.この火山については,そ
の後,詳しい研究が行われ,山頂の氷河の上を高温の火砕流が流れ,そのため
に1時に氷が融け,最高40mの高さに達する泥流が発生したとされています.
南極の基地の中でも有名なアメリカのマクマード基地やニュージーランドの
スコット基地がある,ロス島という東西100kmくらいの火山島の中に,エレバス
火山という有名な活火山があります.基底部の直径が30kmていどの成層火山で
す.最近では1972年にストロンボリ式の噴火をしています.直径500mの山頂火
口の底には絶えず灼熱のマグマが湛えられた溶岩湖があるのが有名です.火山
周辺は高い地熱のために雪や氷のない砂礫地(ドライバレー)となっていま
す.このロス島周辺以外にはあたらしい火山はないと思います.古くは1814年
にJamesRossらによって,20世紀になってScottらによって観察されています.
日本の研究者も頻繁に訪れており,毎年のように学会に報告があります.な
お,南極半島には島弧海溝系の種類の火山がいくつかあります.その中でのデ
セプション火山は最近も活動を繰り返しており,島にあったチリの基地が泥流
の被害を受け放棄されました.
千葉達朗(アジア航測株式会社)
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Question #124
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Q |
火山学会のページは何回かアクセスしたのですが 火山についてのQ&A集には不覚にも今日初めてでした。それでこのページレベルの高さと真剣さに敬意を表します。何故か、この2ヶ月のうちに磐梯山、鳥海山、渡島大島、立山と立て続けに訪問しその激しい美しさに魅了されています。それで質問ですが、1.鳥海山の中島台を形成した水蒸気爆発どの様なものだったと思われましょうか?
2.渡島大島の寛保の爆発と津波は海面下の北斜面を含む大規模な水蒸気爆発と考えられないか?
3.弥陀ヶ原の展望台から見られるカルデラを作った古弥陀ヶ原火山?(古立山?)の標高は最高時でどれくらいのものであったか?
4.日本海にアメリカプレートとユーララシアプレートの境界があるとされる学説が一般的になっていると思われますがそうすると大西洋の中央海嶺はどこにいったのでしょうか?
(9/8/98)
幸村真佐男:この所火山ズいている大学教員。:55
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A |
●1の回答
中島台,といいますと東鳥海馬蹄形カルデラ(ながったらしい名前で申し訳
ありませんが,私がつけました)のことですね?このカルデラは山体崩壊でで
きたものです.
では,その山体崩壊の原因はといいますと・・・
それに関しては下記の論文の中の北大の宇井先生の執筆部分が,最新の研究報
告です.おそらく水蒸気爆発が引き金となったと推測はされていますが,その
実体はいまだに明らかになっていません.
というわけで,「よくわからない」というのが現状のお答えです.すみませ
ん.
文献
Hasenaka, T., Ui, T., Nakamura, Y. and Hayashi, S.(1992)Traverse of
Quaternary volcanoes in Northeast Japan.1992 29th IGC Field Trip
Guide Book,4,29-74.
(9/8/98)(林 信太郎@秋田大学・教育文化学部)
●2の回答
寛保津波の原因については噴火,地震,斜面崩壊など諸説あり,まだ決着し
ておりません.水蒸気爆発の可能性ももちろんあります.決めてとなる物的証
拠を得るため,最近になって,(1)火山灰の同定,分布把握,(2)津波堆
積物から津波規模や遡上過程を推定する試み,(3)海底地形の詳細な調査,
が進められています.もしも興味がおありなら,以下の文章をお読みくださ
い(入手困難ですのでご連絡ください.nishi@ares.sci.hokudai.ac.jp).
西村裕一,渡島大島1741年噴火と津波−謎の多い大災害−,Oshimanography,
5,印刷中(もうすぐ!).
(9/11/98)(西村裕一@北海道大学・有珠火山観測所)
●3の回答
これまでは,弥陀ヶ原を作る火砕流が噴出して陥没カルデラが形成されたと
考えられていました.1960年代に発表された論文では,カルデラ形成以前の山
体は標高2,800-3,000mに達すると想定していたようです.この論文に基づい
て,これまで長いこと,立山火山の形成史がいろいろな本に紹介されてきまし
た.
しかし,最近の研究によると,立山カルデラは陥没カルデラではなく,谷頭
浸食により拡大した浸食カルデラであると考えられるようになりました.今年
オープンした立山カルデラ砂防博物館の展示では,浸食カルデラであると考え
ているようです.また,私も現在立山火山を調査中ですが,そのように考えて
います.また,カルデラ形成以前,富士山型の単一の成層火山ではなく,い
くつかの火山体があったようです.
現在見られる噴出物の分布から推定すると,火山体の高度は2,800mを越えて
いたのは間違いありません.火砕流がどこから噴出したのか,火山の中心はど
こにあったのか,カルデラ内を詳しく調査したのですが,それらしき場所はな
かなか見つかりません.
(9/11/98)(中野 俊@工業技術院・地質調査所・地質部)
●4の回答
プレート境界の位置を,地球儀のうえでたしかめるとよくわかります.アメ
リカプレートとユーラシアプレートの境界を,大西洋中央海嶺から順に追って
いってみてください.東シベリアを経由して日本海につながっています.いか
がでしょう?
(9/8/98)(林 信太郎@秋田大学・教育文化学部)
できたら質問は一回につき一つで---ホームページ管理者
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Question #165
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Q |
火山の成因について教えていただきたいですが。
さらに、火山の発生については海溝や中央海嶺などと何の関係を持っていますか。
(11/27/98)
林:学生:17
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A |
地球は,内部に多量の熱をたくわえていて,地下では深いところほど温度
が高くなっています(通常の場所では深さ100mにつき3℃程度).しかし,
深いところほど圧力も高くなり,圧力が高いと岩石の融解温度も高くなっ
て,岩石は融けにくくなるので,大陸や海洋の通常の場所では,どの深さで
も,地殻やマントルの岩石が融けるほどの温度にはなっていません.
ところが,マントルの岩石(かんらん岩)がゆっくりと(1年に数mm〜
数cm程度)上昇する流れがある場所では,地下深くにあった高温の岩石
(1400℃程度)が浅くて圧力の低い場所に運ばれるので,そこで岩石がわずか
に融解し,玄武岩質のマグマが発生します.マグマは周囲の岩石より軽いの
で,集まりながら上昇し,ついには地表や海底に噴出して火山をつくります
(噴出時の玄武岩マグマは1200℃程度).大洋中央海嶺の下には,マントル
が湧き上がって両側へ拡がる流れがあり,海嶺の中軸地溝帯に沿って活発な
火山活動が起きています.アイスランドやアファー三角地帯では,海嶺の火
山活動の様子を陸上で見ることができます.ただし,海嶺から離れた場所で
も,スポット状のマントル上昇流(プルーム)によって,大きな火山体が形
成されることがあり,ハワイに代表されるこのような場所をホットスポット
と呼びます.
海溝は,逆に下へ向かうマントルの流れがある場所で,そこではマグマは
発生しません.しかし,斜めに沈み込む冷たいマントルの上側には,熱いマ
ントルが浅いところに上がってきていて,そこで発生したマグマが,海溝と
平行に伸びる数列の島弧火山帯をつくっています.東北日本の那須火山帯や
鳥海火山帯はその例です.海溝からは,多量の水を含んだ海洋底の堆積物や
変質して水を含んだ海洋地殻の玄武岩が,冷たいマントルと一緒に沈み込み
ますが,深く沈み込むと温度が高くなるので水が放出され,この水が上側の
熱いマントル中に浸透して,そこの融解温度を下げて岩石を融け易くすると
ともに,海嶺やホットスポットとは違った,島弧特有の水に富むマグマを形
成すると考えられています.
(11/29/98)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
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Question #2209
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Q |
火山ができる場所としてプレートが沈み込むところがあるのは理解できるのですが、海嶺ではできないのですか?世界の火山分布は沈み込み帯にはあるのですが、海嶺には分布していないように思います。アイスランドなどのように海嶺が大陸にむき出しになっているところは火山が並んでいるのように思うのですが?
(04/30/02)
一児の母:主婦:35歳
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A |
まさにお考えになったように,日本のようなプレートが沈み込む場所(沈み込み帯)
におけるよりも,海洋プレートが生産される海嶺の方がマグマの活動はずっと盛んで
す.海嶺の軸に沿って,無数と言っていいほどの火山の列が数珠状に並んでいます.
これらの火山の内,陸化している場所がアイスランドなどのように特殊な場所に限ら
れるので思い違いされたのではないですか.
(5/01/02)
中田節也(東大・地震研・火山センター)
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Question #2344
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Q |
世界の海底地形図を見ていて思ったのですが、太平洋プレートの生産地である東太平洋海嶺は、はるか未来には大西洋の拡大に伴って西進してくる南北アメリカ大陸と衝突してしまうのではないでしょうか?もしそうなったら海嶺や大陸はどうなってしまうのでしょうか?
(06/23/02)
しろしろ:フリーター:24歳
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A |
東太平洋海嶺は,実はもうすでに北米大陸と「衝突」しています.南米沖の東太平洋
海嶺はメキシコの沖で北米大陸に接近し,カリフォルニア湾で北米大陸に割って入っ
ています.そして米国北部沖〜カナダ沖で再び海底に現れます(ファンデフーカ海
嶺).両者の間の部分は,サンアンドレアス断層に代表される長大な横ずれ断層系に
なっています.この地域の内陸側では,大陸下のマントル上昇流が地殻の構造に大き
く影響しており,ネバダ州〜ユタ州のベーズン・アンド・レンジ地域では大陸の地殻
が薄くなっていますが,これらの原因が海嶺衝突かどうかはわかりません.
また,南米沖ではココスプレートとナスカプレートの境界のガラバゴス海嶺がエクア
ドル〜コロンビア付近で大陸と「衝突」していますし,ナスカプレートと南極プレー
トの境界のチリ海嶺がチリ南部で大陸と「衝突」していますが,そこで特に変わった
現象が起きているわけではありません.しかし,インド洋中央海嶺がアフリカ大陸と
「衝突」している部分ではアデン湾と紅海の海嶺がアフリカ大陸からアラビア半島を
分裂させていますが,これはアファー三角地帯(ジブチ付近)にホットスポット(マ
ントルからの上昇流)があって,そこが東アフリカリフト帯とこれらの海嶺との三重
点になっていることが原因と考えられます.
つまり,海嶺が大陸と衝突するだけなら,たいしたできごとは起きませんが,大陸の
下に大きなホットスポットがきて,そこから3本の海嶺が派生するような状況になる
と,大陸が分裂すると考えられます.最近は,日本海のような縁海の形成も広域的な
マントル上昇流(ホットリージョン)の働きによるという説があり,地球上の大陸が
全部集まった「超大陸」の形成やその分裂には,マントル底部からの数千km規模の上
昇流(スーパープルーム)が関与したという説が有力です.地球の固体部分の変動
は,プレートの動きだけでは説明できず,もっと深いところのマントルの動きが重要
視されるようになってきています.
(07/03/02)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学教室)
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Question #4106
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Q |
高校時代に火山のなかには、中央海嶺に沿って分布するものがあると習いました。
この中央海嶺とは、海嶺の大規模なものなのか大西洋中央海嶺の略称なのか
また別のものを意味しているのか。このサイトを見つけ、高校時代からの
疑問を思い出しなんとか解決し、すっきりしたいのでよろしくお願いいたします。
(07/23/03)
高校時代の疑問:会社員:30
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A |
「中央海嶺」は「大洋中央海嶺」(mid-oceanic
ridge)を縮めた言い方です.大西洋,インド洋,南太平洋のほぼ中央にある「海底山脈」です.東太平洋海膨は太平洋の中央にはありませんが,地質構
造から言うと中央海嶺の仲間です.もっと短くして,単に「海嶺」ということもありますが,海嶺には小規模な海洋性島弧や縁海の中の山脈状の高まりも含ま
れ,本来はもっと広い意味の言葉です.意味を広げずに言葉を縮めるには,「中央海嶺」が限度ということでしょうか.
(08/17/03)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
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Question #5452
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Q |
社会人になってからプレート・テクトニクスのような地球科学の基礎的な書籍から遠ざかっておりましたが,最近,ケネス・J・シュー博士が書かれた「地球科学に革命を起こした船グロマー・チャレンジャー号」を読む機会があって,たいへんおもしろく読ませていただきました。その時から疑問に思っている中央海嶺の形態について,質問させて下さい。
大西洋中央海嶺は,海底から比高2〜3kmで,中軸部は正断層によって明瞭な中軸谷が形成されているということです。新しい溶岩はこの中軸谷の谷底付近から噴出し,ここがプレートの拡大軸となっているようです。しかし,ここから拡大が進むとすると,大陸地域のリフトバレーと同じように中軸谷の幅が拡がるのみで,現在の大西洋中央海嶺で見られるような幅の狭い中軸谷の両側に海嶺頂上部をもつ断面形態は維持できないと思うのですが,何か私の考えが及ばない特別な機構があるのでしょうか?
私の貧弱な頭で思いついた考えは,
@溶岩の噴出と中軸谷の拡大・形成が交互に起こり,中軸谷から大量のマグマを噴出する時期には大量の噴出物が中軸谷を海嶺頂上部の高さまで埋め,その後マグマが噴出した場所で拡大が生じて中軸谷が形成された。
A中軸谷を形成した正断層が,拡大によって移動するとともに逆断層的に動いて,変位を解消しながら高くなって海嶺頂上部を形成した。
くらいです。ただ,Aの動きは比較的狭い範囲で,応力状態が変わらなければならないので,難しいような気がします。どのように考えられているのか教えて下さい。
(02/20/04)
地質コンサルタント:社会人:48
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A |
私もプレート拡大境界のテクトニクスを専門に研究しているわけではないので,教科書的な知識とアフリカのジブチにおける観察(昔,「地球大紀行」の取材
に同行した)に基づいてお答えします.ジブチではインド洋中央海嶺が地表に露出しています.海嶺軸と平行な正断層が何本もあり,軸から両側へ高くなる階
段状の地形が見事に発達しています.1978年にこの海嶺軸上で噴火が起こり,アルドゥコバという小さな火山ができました.この前後の期間は海嶺軸に
沿って地震が頻発し,この間に海嶺軸の両側で最大2m地殻が拡がり,海嶺軸付近の中軸谷は50cm以上沈下しました.この部分は乾燥した陸地ではありま
すが,標高は海面下150m程度にもなります.重要なことは,このような「拡大イベント」の時は正断層が活動して地殻が両側へ拡大し,中軸部が沈降しま
すが,通常この地域全体としてはゆっくり隆起していることです.これは下から熱いマントル物質が湧き上がってくるためで,海嶺軸の両側の階段状の地形全
体がドーム状に盛り上がっている部分も見られます.つまり,正断層が逆断層のように動いて中軸部が盛り上がるのではなく,一度できた正断層はそのまま,
またはやや外側に傾くようにして両側へ運ばれ,中軸部の新しく形成された火山岩の地殻に新たな正断層ができると考えられます.これは「アキレスと亀」の
ような話で,考え出すと難しくなりますが,実際の事例に即して理解することが肝要だと思います.ジブチと同様の火山活動と地殻の動きは大西洋中央海嶺上
のアイスランドでも見られますが,拡大速度の大きい東太平洋海膨では隆起速度も大きいためか,中軸谷の地形が不明瞭になっています.丸善の「空からみる
世界の火山」の50節や61-64節を読まれるとよいと思います.
(02/23/04)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学教室)
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