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小中学生から多い質問
「Q&A火山噴火」
に寄せられた意見集
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Jan. 2012. The Volcanological Society
of Japan.
kazan-gakkai@kazan.or.jp
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噴火現象と噴出物・岩石・鉱物
凝灰岩・溶結凝灰岩 |
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Question #258
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Q |
ぼくは、小学6年です、修学旅行で熊本県の阿蘇火山博物館に行きました。
1.阿蘇山のカルデラが出来たときに、どんな事がおきましたか。
2.南阿蘇国民休暇村にキャンプに行きました。根子岳の山頂のギザギザは、なぜ出来ましたか。
(8/16/99)
河野 誠:学童:12
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A |
1. 阿蘇火山博物館にはこのあいだ僕も行きました。とても面白いところで、火山が
すごく身近に感じられますね。さて、阿蘇山のカルデラは4回の大噴火で出来ました
。大噴火の時には、火砕流(かさいりゅう)という、熱く溶けた岩や軽石や火山灰の
混じったものが遠くまで流れました。そのうち最も遠いものは山口県にまで達してい
ますし、また海を越えて島原半島にも渡っています。火砕流はあまりにも熱いので、
もう一回固まって溶岩と同じくらいカチンカチンの岩石になったりもします。この岩
石は、火山灰が溶けたという意味で、溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)と名づ
けられています。また、火砕流は空高く30キロメートル以上まで吹き上がり、さらに
西風にのってはるか遠くまで飛んで行きました。なんと九州から出た火山灰が北海道
まで運ばれていて、そこでは10センチメートルの厚さの火山灰が今でも残っています
。阿蘇山のカルデラが出来たころには、九州全土で人間がどこにも住めないような荒
れ地になっていたと思います。また、カルデラは直径20キロメートル近い大穴を作っ
たわけですが、そこには何千年もかかって湖が出来たり、中岳などの中央火口丘が出
来ました。なお、最後の阿蘇山のカルデラが出来たのは約9万年前です。ずいぶん昔
の事のようですが、阿蘇山はその後もずっと活動を続けていて、今でも活きているの
です。
2. 根子岳というのは阿蘇山のカルデラの中にありますね。実はカルデラをつくった
4回の噴火のうち、根子岳は2回目と3回目の間に出来ました。数字で言うとたぶん13
万年前ころに出来ました。根子岳の山頂のギザギザは、このように時代が古いために
浸食が進んだ結果できたのです。根子岳の登山は大変に難しく、上級者でないと登り
切らないそうです。それは上の方では、岩脈(がんみゃく)といって平たく伸びた薄
い岩が切り立っているからです。岩脈というのは、根子岳をつくったマグマが地下か
ら上がってきた時につかった通路が固まったものを言います。通路の方がかたくて、
後まで残ったというわけです。つまり根子岳というのは、現在の阿蘇山のカルデラが
出来る前の小さな火山が、長い時間にけずられてできた、ギザギザの火山ということ
ができます。
(8/17/99)
鎌田浩毅(京都大学・総合人間学部・地球科学分野)
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Question #2343
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Q |
過去、北海道や九州等のカルデラにおいて想像を絶する規模の噴火が起きていたと知り大変驚いていますが、日本で過去数十万年のうちで1番規模の大きかった噴火はどの噴火で、どれほどの噴出物を出したのでしょうか? また、この種の噴火では巨大な火砕流が発生し100km以上先にまで達することもあるそうですが、このような火口からはるか先にまで到達した火砕流でも、まだ高温を保っているのでしょうか?
(06/23/02)
しろしろ:フリーター:24歳
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A |
「火山噴火の規模で、一番大きいのは何か」というご質問に答えるのは、実は、け
っこう難しいのです。地震と比べると、噴火現象はきわめて多様なので、規模を単純
に定義するのが簡単ではないからです。しかし、多くの場合、火山爆発指数
(Volcanic Explosivity Index)というのが、使われています。これは、おもに噴出
量によって、噴火の規模を段階別に分けたものです。この指数に従うと、日本で最大
級の噴火は、9万年前に阿蘇カルデラから出た阿蘇4火砕流や、2万5千年前に鹿児島湾
内の姶良(あいら)カルデラから出た入戸(いと)火砕流の噴火が、東西の横綱とい
えます。いずれも数100立方キロメートルの噴出物を出しています。
ただし、どちらが一番かと聞かれると、やはり悩みますね。というのは、比べるべ
き噴出量として、地上に残った堆積物以外に、空高く舞い上がった細かい火山灰の量
も考えなければならないので、その見積もりがたいへん難しいからです。そこで、こ
こでは、阿蘇4火砕流と入戸火砕流の両噴火が、最大級だと述べたわけです。
過去数十万年前までさかのぼると、90万年前に噴出したアズキ火山灰(今市火砕
流)や100万年前に出たピンク火山灰(耶馬溪(やばけい)火砕流)も同じくらい巨
大な噴火の痕跡を残しています。両者はいずれも、大分県の猪牟田(ししむた)カル
デラから噴出したものです。しかし、どちらも古い堆積物なので、いったいどれが最
大かを決めようとしても、なかなか決めがたいと言うのが実状です。火山の規模の決
め方に関しては、火山研究者の間でも様々な考え方があります。第1位を決めるの
は、それほど重要ではないのではないか、という気も、私にはしています。
上に挙げた阿蘇、入戸、今市、耶馬溪のいずれの火砕流も、巨大噴火の産物です。
大規模な火砕流が発生し、中には150キロメートル先まで流れ下ったものもありま
す。これらの堆積物は高温であったために、流れた先で溶結凝灰岩(ようけつぎょう
かいがん)となることもあります。つまり火山灰や軽石など、いったんバラバラの形
になった固体が、再び液体に近い状態となったのです。軽石や火山灰が溶結凝灰岩と
して固まるには、摂氏700度を超すような高温であったことが、分かっています。さ
らに興味があるようでしたら、最近私が書いた火山の入門書(『火山はすごい』
PHP新書)の「阿蘇山」の章を参考にしてみて下さい。
(07/23/02)
鎌田浩毅(京都大学・ 総合人間学部・地球科学分野)
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