これは火山とはあまり関係のない質問ですが,地学を教えていらっしゃるというこ
となので,地学教育の発展のためにお答えしましょう.大理石(マーブル)は地学で
は結晶質石灰岩のことを言い,広域変成帯・接触変成帯どちらにも産します.例え
ば,日本の代表的な広域変成帯の一つである飛騨変成帯は結晶質石灰岩に富むことが
特徴です.大理石は「結晶質」であればよく,鉱物(方解石)が並んでいてもいなく
ても,縞模様があってもなくても構いません.因みに,マーブル模様と言えば墨流し
様の模様ですが,縞模様のない「おはじき」の石もマーブルと言いますよね(例えば
マーブルチョコレート).なお,市場では結晶質でない(変成されていない)石灰岩
や,蛇紋石と混合した蛇灰岩など,装飾石材になる美しい石灰質の岩石は何でも大理
石として売られているようです.
一方,ホルンフェルスは接触変成岩の代表です.広域変成岩は片理(鉱物の並び)
が発達していて粒が細かい「片岩」や縞状構造が顕著で粒が大きい「片麻岩」が代表
ですが,接触変成岩は一般に各結晶が細粒でランダムな方向を向いていて,ハンマー
で割ると片岩のように板状に割れず,角張った形に割れます.そのような変成岩を
「ホルンフェルス(角張った石の意味)」と言います.広域変成岩は造山運動による
強い圧縮力を受けながら鉱物が再結晶するので片状や縞状になり,多くの場合強く褶
曲していますが,接触変成岩はマグマの熱の影響だけで再結晶するので,鉱物は方向
性を持ちません.
要するに,大理石は結晶質の石灰岩であることだけが要件なので,広域変成岩でも
接触変成岩でもいいのですが,ホルンフェルスは方向性のない組織であることが要件
なので,接触変成岩の代表ということになります.もちろんこれは「教科書的な一般
論」であり,広域変成帯でも圧縮力が弱い部分では「ホルンフェルス状」の岩石がで
きることもあり,接触変成帯でも圧縮力が強い部分では顕著な片理をもつことがあり
ます.しかし,例外をことさら強調して教えるのはよくないでしょう.実例を示しな
がら,岩石ができるプロセスに踏み込んで教えていただければいいと思います.
(09/24/02)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学教室)
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