火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

火山のできる場所と地球の大構造

ホットスポット・プルーム


Question #11
Q アンデス山脈の火山や南極大陸の火山はどのくらいあり、また研究は進んでいますか。 (2/17/97)

単なる学生:学生:21

A
 地球上の火山は、3つの種類の場所にできます.1)島弧海溝系,2)ホット スポット,3)中央海嶺.ご質問のアンデス山脈の火山は1)の島弧海溝系 に,南極大陸の火山は2)のホットスポットのものと1)の島弧海溝系のものが あります.アンデス山脈でよくみられる火山岩はアンデサイト(andesite)と よばれます.同じ島弧海溝系に属する日本の火山にはにもそれと同じ種類の岩 石が多くありますが日本語の「安山岩」は、漢字表記をそのまま使用したもの です.
 このアンデス山脈に沿って多数の火山がありますが,その中でも有名な活火 山をいくつかあげると,(1)コトパクシ,(2)ネバドデルルイス,(3) ミスティ,(4)ビジャリカなどです.このうち(2)のコロンビアのネバド デルルイス火山は1985年の噴火の時に,大規模な泥流が発生,麓にあったアル メロの町を襲い,2万5千人もの人名が奪われました.この火山については,そ の後,詳しい研究が行われ,山頂の氷河の上を高温の火砕流が流れ,そのため に1時に氷が融け,最高40mの高さに達する泥流が発生したとされています.
 南極の基地の中でも有名なアメリカのマクマード基地やニュージーランドの スコット基地がある,ロス島という東西100kmくらいの火山島の中に,エレバス 火山という有名な活火山があります.基底部の直径が30kmていどの成層火山で す.最近では1972年にストロンボリ式の噴火をしています.直径500mの山頂火 口の底には絶えず灼熱のマグマが湛えられた溶岩湖があるのが有名です.火山 周辺は高い地熱のために雪や氷のない砂礫地(ドライバレー)となっていま す.このロス島周辺以外にはあたらしい火山はないと思います.古くは1814年 にJamesRossらによって,20世紀になってScottらによって観察されています. 日本の研究者も頻繁に訪れており,毎年のように学会に報告があります.な お,南極半島には島弧海溝系の種類の火山がいくつかあります.その中でのデ セプション火山は最近も活動を繰り返しており,島にあったチリの基地が泥流 の被害を受け放棄されました.

千葉達朗(アジア航測株式会社)


Question #2344
Q 世界の海底地形図を見ていて思ったのですが、太平洋プレートの生産地である東太平洋海嶺は、はるか未来には大西洋の拡大に伴って西進してくる南北アメリカ大陸と衝突してしまうのではないでしょうか?もしそうなったら海嶺や大陸はどうなってしまうのでしょうか? (06/23/02)

しろしろ:フリーター:24歳

A 東太平洋海嶺は,実はもうすでに北米大陸と「衝突」しています.南米沖の東太平洋 海嶺はメキシコの沖で北米大陸に接近し,カリフォルニア湾で北米大陸に割って入っ ています.そして米国北部沖〜カナダ沖で再び海底に現れます(ファンデフーカ海 嶺).両者の間の部分は,サンアンドレアス断層に代表される長大な横ずれ断層系に なっています.この地域の内陸側では,大陸下のマントル上昇流が地殻の構造に大き く影響しており,ネバダ州〜ユタ州のベーズン・アンド・レンジ地域では大陸の地殻 が薄くなっていますが,これらの原因が海嶺衝突かどうかはわかりません.

また,南米沖ではココスプレートとナスカプレートの境界のガラバゴス海嶺がエクア ドル〜コロンビア付近で大陸と「衝突」していますし,ナスカプレートと南極プレー トの境界のチリ海嶺がチリ南部で大陸と「衝突」していますが,そこで特に変わった 現象が起きているわけではありません.しかし,インド洋中央海嶺がアフリカ大陸と 「衝突」している部分ではアデン湾と紅海の海嶺がアフリカ大陸からアラビア半島を 分裂させていますが,これはアファー三角地帯(ジブチ付近)にホットスポット(マ ントルからの上昇流)があって,そこが東アフリカリフト帯とこれらの海嶺との三重 点になっていることが原因と考えられます.

つまり,海嶺が大陸と衝突するだけなら,たいしたできごとは起きませんが,大陸の 下に大きなホットスポットがきて,そこから3本の海嶺が派生するような状況になる と,大陸が分裂すると考えられます.最近は,日本海のような縁海の形成も広域的な マントル上昇流(ホットリージョン)の働きによるという説があり,地球上の大陸が 全部集まった「超大陸」の形成やその分裂には,マントル底部からの数千km規模の上 昇流(スーパープルーム)が関与したという説が有力です.地球の固体部分の変動 は,プレートの動きだけでは説明できず,もっと深いところのマントルの動きが重要 視されるようになってきています. (07/03/02)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学教室) --


Question #2561
Q ホット・スポットについて質問したいのですが、
@、ハワイホット・スポットから西に続く海山列を見ると、何千年(もしかして何億年?)も前から火山活動が続いているようですが、ハワイのようなホット・スポットは一体いつ、どのようにして誕生したのでしょうか?
A、インドのデカン高原はインドのはるか南方沖にある、レユニオンホット・スポット(レユニオン島)の活動により形成されたそうですが、他のホット・スポットでも(例えばハワイホット・スポット等でも)デカン高原のような大規模な溶岩台地が形成されたことはあるのでしょうか?
B、ハワイなどのホット・スポットの寿命はどのくらいあるのでしょうか?例えばレユニオンホット・スポットの活動を見るとデカン高原を形成したころに比べればだいぶ弱まっているような気がしますが、このまま下火になりやがて消滅してしまうことはないのでしょうか?
以上、3つの質問ですが、よろしくお願いします。
PS、以前の私の質問に答えて下さった先生方、本当にありがとうございました。 (08/29/02)

しろしろ:フリーター:24歳

A

ハワイから西に続く海山列はおよそ7000万年前までさかのぼれます.それより古い部 分はアリューシャン海溝に沈んでしまっているため,ハワイホットスポットは少なく とも7千万年間は活動しているとしかお答えできません.

海嶺での涌き出しと海溝での沈み込みといったプレート運動のような対流によっては 放出しきれない地球内部のエネルギーを逃がすしくみの一つが,プルームと呼ばれる 円柱状の上昇流です.このプルームが地表の火成活動を引き起こしているところをホ ットスポットと呼びます. プルームがどこから来るのかは,現在でも活発な論争になっている問題ですが,マン トル深部の熱境界層に由来するという考えが一般的です.具体的には,深さ660kmあ たりの上部マントルと下部マントルの境めや,深さ2900kmあたりの下部マントルと外 核の境めあたりです.このあたりにたまった熱が通常のマントル対流や熱伝導では解 消しきれなくなると,この部分の物質が熱膨張による十分に大きな浮力を得て上昇を 開始します.これがプルームの誕生です.

プルーム成長についての室内実験や数値実験の結果から,プルームはマントル内部を 上昇していくにつてれ,大きな頭とそれに続く細い軸からなる形になってゆくと考え られています.よくマッシュルーム状などと形容されますが,キノコを縦割りにした ときの大きなカサの部分と細い軸の部分を想像してみてください. このカサ部分が地球表層に到達すると,例えばデカン高原などに見られるような大規 模な火成活動が引き起こされますが,この継続時間はせいぜい数百万年と考えられて います.それ以降の弱いながらも継続的な火成活動は,プルームの細い軸の部分が地 球表層に到達することによってもたらされたものと考えられています.例えば,イン ド洋のマスカレン海台からレユニオン島に続く火山列の形成がこれにあたります.

現在知られている幾つかのホットスポットにおいて,活動の開始点に溶岩台地などの 大規模な火成活動の痕跡の存在が確認されています.代表的なものとしては,北海沿 岸とグリーンランドに広がる火成活動域は現在のアイスランドホットスポットが活動 を開始した時に作られたものですし,南米のパラナ洪水玄武岩台地は南大西洋のトリ スタン・ダ・クーニャホットスポットの活動開始点です.ただし,ホットスポットの 過去の活動痕跡を遡ることは容易なことではありません.プレートの運動方向や速度 についての情報や火成活動の年代がわからなければならないからです.したがって, 現在知られているすべてのホットスポットについて,活動開始の時期や場所が特定で きているわけではありません.

ホットスポットの寿命(=プルームの寿命)が何で決まるかついては,まだ明解な答 えは得られていません.一億年を越えて活動を続けているプルームもあれば(例えば インド洋のケルゲレンホットスポットや南大西洋のトリスタン・ダ・クーニャホット スポット),一千万年以下で活動を終えてしまったもの(例えばシベリアントラップ )もあります.レユニオンホットスポットは活動開始から6500万年になります.プル ームの発生源の位置,そこからの熱や物質の供給に関する差が,このような寿命の違 いになってあらわれているものと思われます.このことをはっきりさせるためには, 様々なホットスポットについて比較研究を行い,プルームの発生源の違いをより詳し く調べてゆく必要があります. (09/03/02)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #2650
Q 海底地形図を見て思ったのですが、南鳥島は、もともと、火山島なのですか?
天皇海山列とも離れていますが、どこかハワイとは別のホットスポットがあって、
そこで生じたものなのでしょうか。
それとも東太平洋海嶺で、マグマが湧きだした際に(もっとも海嶺で島が出来るのか分かりませんが)生じた島が元なのでしょうか。
もしお分かりでしたら、教えていただきたく思います。宜しくお願いします。 (09/12/02)

とも:会社員:29

A 南鳥島は古いホットスポット起源の火山島です。ただし現在海上に出ている部分は沈 降した火山島の上にできた珊瑚礁です。この島はマーカス-ウェーク海山列に属する とされ、ハワイー天皇海山列のようなホットスポット起源の火山列を構成していると 考えられます。ただしこの火山列を構成するすべての海山が同一のホットスポットに 由来するものかどうか明らかではありません。南鳥島を形作る火山島ができた時期に ついて 詳しいことはわかっていませんが、同じ海山列の南東部(ウェーク島に近い 部分)の海山から採取された溶岩は、8600-9300万年前の白亜紀に噴出したことが知 られています。
 (09/30/02)

石塚 治(産業技術総合研究所・地球科学情報研究部門) --


Question #4027
Q 世界の火山のうち、島弧海溝系と中央海嶺の火山の分布は大体わかるのですが、ホットスポット火山はハワイ諸島以外知りません。他にもあると思うのですが、地球上に何箇所くらいあるのですか?またどこに分布しているのですか?教えて下さい。お願いします。 (06/22/03)

頑張れ巨人!阪神に負けるな!:会社員:33歳

A
 地球の深部から温かい物質がわき上がってくるホットスポットは、地球上にいった い何個あるのか統一した見解はありません。多くの研究者は数十個くらいではないか と考えています。ホットスポットとして有名な火山地域は、ハワイ諸島の他に、合衆 国のイエローストーン、アイスランド、太平洋のガラパゴス、インド洋のレユニオン などがあります。
 ただし、火山の数となればかなり沢山あります(古いものも含めてですが)。例え ば、ハワイ島だけでも5つの火山(キラウエア、マウナロア、フアラライ、マウナケ ア、コハラ)からできていますし、ハワイのホットスポットがここ約7千万年間に作 った火山(海山)の列が、アラスカのアリューシャン海溝からハワイ島まで全長 6000km以上も分布しています。ハワイ天皇海山列と呼ばれ80個以上の海山が海の 底に並んでいます。これは地球の深部に根ざしたホットスポットの上を太平洋プレー トが移動し、火山が作られ続けたためです。
 (06/24/03)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)