火山学者に聞いてみよう -トピック編-  

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「Q&A火山噴火」 に寄せられた意見集


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Jan. 2012.

The Volcanological Society
of Japan.

kazan-gakkai@kazan.or.jp

マグマとマグマ溜まり

マグマ成因・多様性


Question #29
Q 僕は実習で地質の調査をしました。同じ地域なのですが、安山岩、玄武岩,デ イサイトと、火山岩の種類が違いました。同じ火山でも噴出する火山岩が年代に よってちがうことはよくあるのですか。それとも単に火山が違うのですか。 もし、 よくあることならそれらは同じマグマが分化したものなのですか。

(6/5/97)

センダ ヨシミチ:学生:20

A
 ある一定の地域内でさまざまな種類の火山岩がともなって出現することはよ くあることです。これらがマグマのできる過程において同根であったのかそれ とも別物かということ(これを火山岩の成因的関係といいます)は20世紀初 頭からの科学的大問題でありました。技術の発達した現代では、この問題に対 処するにあたって岩石のどんな化学成分を分析してどのように比較すべきかと いう理論はかなり確立してきました。その結果、同地域に出現する、安山岩、 玄武岩,デイサイトなどの岩石がいかなる成因的関係をもつかについては検討 された地域ごとにいろいろな場合があることがわかっています。どんな関係が あるかだけを以下に列挙します。 1 マグマは地下のマントルや地殻が融けてできます。それらをマグマの起源 物質といいますが、その起源物質が岩石毎にちがっている。 2 マグマの起源物質は同じなのだけど、融ける具合が違って異なるマグマが できる場合。融けた場所の深さの違い、揮発性成分(多くは水)の量の違い、 融ける程度の違いなどです。 3 同じもとのマグマ(親マグマといいます)から、それが地下で冷えて固ま る過程で時間をかけて化学成分が変化していく(これをマグマの分化といいま す)ため、変化の程度でさまざまなマグマができる。 4 いろんな理由で生じた複数の異なるマグマが混じり合って中間的組成のマ グマができる場合。 5 マグマが地表へと上昇してくる途中で経路の岩石をさまざまな程度に融か しこんでもとのマグマとことなる組成をもつにいたる場合。

三宅康幸(信州大学理学部)


Question #61
Q 火山は、なぜ出来たのですか?また、火山の利用法などはないのですか (12/18/97)

karen/s:中学生:15

A
 普通の岩石は1200℃くらいの温度まで熱すると、どろどろに溶けてしまいま す。このようにして溶けた岩石をマグマと言います。地球は内部に多量の熱を たくわえていて、例えば日本で深い穴を掘ると、その穴の中では、深さ1kmご とに約30℃ずつ温度が高くなります。つまり、単純に計算すると、地下40kmで 温度が1200℃になり、そこでは、普通の岩石は溶けていることになります。実 際には、深くなるほど圧力も高くなるので、岩石は溶けにくくなるし、地下 40kmはもうマントルの中で、そこはカンラン岩という溶けにくい岩石でできて いるので、どこでも溶けているわけではありませんが、地球のマントルはプレ ート運動とともにゆっくり動いていて、マントルのカンラン岩が上昇している ような場所では、特に溶けやすくなります。溶けてできたマグマは集まって上 昇し、それが地表に噴出する場所が「火山」です。
 火山では、マグマが地下から多量の熱を運んで来るので、その熱を利用して 地熱発電が行なわれています。この熱は温泉の水を温める役もしていて、入浴 はもちろん、農作物の温室栽培などにも利用されています。富士山のような大 きな火山体は、大気に上昇気流を生じてしばしば雨を降らせ、穴だらけの溶岩 の中に多量の水をたくわえて、貴重な水源の役もしています。地下のマグマの そばでは、岩石から熱水へいろいろな元素が溶け込み、熱水の温度が下がると それらが沈澱して、銅・亜鉛などの金属鉱床を作るので、我々にとって貴重な 資源を作り出してくれる役もしています。 (12/18/97)

石渡 明(金沢大学・理学部)


Question #112
Q
 大学の教養の講義で、マグマの分布、火山、地震などに関するレポート課題というものがあり、そのために、沈み込み帯におけるマグマの成因を本で調べていたところ、「マグマの発生には沈み込むプレート、及び、マントルウェッジ最下部にプレートに沿って形成される含水層内での脱水分解反応によるH2Oの供給が、本質的な役割を果たす」とありました。講義では、島弧の火山列は列を成すことがよくあり、マグマの分布も一様ではない、と聴いた気がしますが、前述の文からでは、マントルウェッジ最下部の部分融解帯が不連続であるか否かということはわかりません。
 そこで質問なのですが、 1.沈み込み帯下においてのマグマ発生の際のマントルウェッジ最下部の部分融解帯は連続したものなのでしょうか? 2.部分融解帯が不連続だとしたら、どうしてそのようになるのでしょうか? 3.また、沈み込み帯下において、マントルウェッジではなく、スラブ自体が融解してマグマが発生することはないのでしょうか?
 私は工学部1回生で地学に関して付け焼き刃の知識しかないので、間抜けな質問をしてしまっているかもしれませんが、どうかよろしくお願いします。 (8/14/98)

A.O:大学生:19

A
 まず、3についてお答えします。沈み込み帯の存在する火山の成因としては (あ)スラブ表層の溶融、 (い)スラブ由来の水による融点低下でマントルウエッジのかんらん岩が溶融、 という2つのモデルが代表的なものです。 ただし、沈み込むスラブの温度が計算や観測によって推定され、実験的に決め られたスラブ物質の融点と比較するデータが集まるにつれて、スラブ自身の溶 融が起き得るのは非常に若いスラブ(あまり冷たくないスラブ)が沈み込んで いる場所(例えば伊豆・マリアナ弧など)などに限られており、こうした場所 以外ではスラブ自身の溶融が起きている可能性は低いと考えられるようになっ てきました。


 さて、次に(1)と(2)についてマントルウエッジの融解という観点から考えて みましょう。まず答えから言ってしまうと、地上において観察される火山の分 布が一様ではなく沈み込みと平行な方向にも垂直な方向にもある種の集まりを 持っているのと同様に、部分融解帯も決して一様なものではありません。では 何故、一様にはならないのでしょうか。
 今、私たちが目にするような地表の火山分布ができるためには、地下深部 で、(a)H2Oの生成、(b)マグマ源へのH2Oの移動と部分溶融帯の形成、という2 つのステップが必要です。こうしたそれぞれのステップに、一様でない部分溶 融帯を作りうるプロセスがあるのです。 (a)のH2Oの生成の要因には、岩石の空隙中に閉じこめられていた水の絞り出し と含水鉱物の分解反応とがあります。前者は連続的に起きますが、多くの水は 沈み込みが始まって間もなく絞り出されてしまい、火山の形成にはあまり寄与 していないと考えられています。後者は含水鉱物の分解反応に特有な温度圧力 下でのみ起こりますから、不連続なH2Oの生成となるわけです。(b)において は、H2Oの移動中に一様な分布からH2Oの集中がおきる可能性と部分溶融帯自身 が不均一な分布に成長していく可能性とが存在します。雨の日の軒先からした たる雨のしずくや、お風呂場で天井から落ちてくる水滴を思い出してくださ い。初めはほぼ一様に分布していたとしても、小さな滴のあるものが少しずつ 周囲の小さな水滴を吸収して大きく成長していき、ついには落下する様子が観 察できるはずです。これと同じように、時間空間スケールと上下の向きは異な りますが、大きく成長したものほどより大きな成長・移動速度を持つようにな るといった不均一性が増大していく現象が、マントルウェッジでも起きている と考えられています。
 さて、以上のような幾つかのプロセス、それらのどのプロセスによってどの ような方向の非一様性が実現するか、ぜひ考えてみてください。
 さらに地表で観察される火山の分布について言うならば、部分融解帯で作ら れたマグマが地表までの上昇する過程で地殻の構造や応力などの影響をうける ということも、一様でない火山分布の原因に付け加えなくてはなりません。 (8/19/98)

安田 敦(東京大学・地震研究所)


Question #165
Q 火山の成因について教えていただきたいですが。 さらに、火山の発生については海溝や中央海嶺などと何の関係を持っていますか。 (11/27/98)

林:学生:17

A
 地球は,内部に多量の熱をたくわえていて,地下では深いところほど温度 が高くなっています(通常の場所では深さ100mにつき3℃程度).しかし, 深いところほど圧力も高くなり,圧力が高いと岩石の融解温度も高くなっ て,岩石は融けにくくなるので,大陸や海洋の通常の場所では,どの深さで も,地殻やマントルの岩石が融けるほどの温度にはなっていません.


 ところが,マントルの岩石(かんらん岩)がゆっくりと(1年に数mm〜 数cm程度)上昇する流れがある場所では,地下深くにあった高温の岩石 (1400℃程度)が浅くて圧力の低い場所に運ばれるので,そこで岩石がわずか に融解し,玄武岩質のマグマが発生します.マグマは周囲の岩石より軽いの で,集まりながら上昇し,ついには地表や海底に噴出して火山をつくります (噴出時の玄武岩マグマは1200℃程度).大洋中央海嶺の下には,マントル が湧き上がって両側へ拡がる流れがあり,海嶺の中軸地溝帯に沿って活発な 火山活動が起きています.アイスランドやアファー三角地帯では,海嶺の火 山活動の様子を陸上で見ることができます.ただし,海嶺から離れた場所で も,スポット状のマントル上昇流(プルーム)によって,大きな火山体が形 成されることがあり,ハワイに代表されるこのような場所をホットスポット と呼びます.


 海溝は,逆に下へ向かうマントルの流れがある場所で,そこではマグマは 発生しません.しかし,斜めに沈み込む冷たいマントルの上側には,熱いマ ントルが浅いところに上がってきていて,そこで発生したマグマが,海溝と 平行に伸びる数列の島弧火山帯をつくっています.東北日本の那須火山帯や 鳥海火山帯はその例です.海溝からは,多量の水を含んだ海洋底の堆積物や 変質して水を含んだ海洋地殻の玄武岩が,冷たいマントルと一緒に沈み込み ますが,深く沈み込むと温度が高くなるので水が放出され,この水が上側の 熱いマントル中に浸透して,そこの融解温度を下げて岩石を融け易くすると ともに,海嶺やホットスポットとは違った,島弧特有の水に富むマグマを形 成すると考えられています. (11/29/98)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


Question #163
Q 火山のしくみ・・・マグマはどうしてでるの。 (11/19/98)

ケンヂィフグ:学生:15

A うーん.むずかしい質問だねエ.この大問題は実にたくさんの問題からなって いるのです. まず第一に,地下でマグマがどうしてできるのかという問題.マグマは地下か ら出てくるけど,地球は生タマゴとは違って,内部にマグマがあふれていると いうわけでは決してありません.そのことは地下で起こった地震が地表に伝わ ってくる仕方などからわかっています.マグマは何かの理由があって,地下の 固体岩石が融けてできるのです.そしてそれは地球の中でもある特殊な場所に 限られることです.世界地図で火山がどこにあるかを見て,それがどんな場所 か調べてみてください.ちなみに日本などは沈み込み帯と呼ばれる地帯に属し ます.そこでのマグマのできかたは,このコーナーの112番の質問の回答が 参考になるでしょうが,中学生には少し難しいでしょうか. 第二に,地下でできたマグマは浅いところまで上がってきて,出る機会をうか がっています.その期間は何千年とか何百万年とかという長い時間です.そし てなにかの機会に地表に出てくると,私たちは噴火と呼ぶわけですね.どんな 時に,何をきっかけとして噴火するのかがわかれば,それが火山噴火を予知す ることになるわけですから,多くの火山学者がそのことを研究しています.そ のきっかけとしては・・・(1)マグマの中の状態が変化すると噴火に結びつ く.これは,このコーナーの114番や107番の質問に対する回答を参考に してください.そのほかに(2)地震を起こすような地盤の動きが関連してい る.(3)新しいマグマがさらに上がってくること,など,多くの考え方があ ります. この回答では,問題がたくさんあることを指摘するだけに終わりました.それ ぞれの問題がとても重要なことですので,これからも興味を持ち続けてください. (12/1/98)

三宅康幸(信州大学・理)


Question #332
Q はじめまして。 洪水玄武岩とは何か、なぜできるのか、を教えて頂けませんか? お願いします。 (11/24/99)

鶴谷京子:大学生:19

A
 洪水玄武岩は,台地玄武岩とも呼ばれていて,膨大な量の玄武岩質溶岩が流れ出し, それの粘りけ(粘性)はたいへん低いものですから,既存の山谷地形を埋めて平坦な 地形を作り,それが現在では浸食に耐えて台地を作っているものです.なにしろその 量は想像を絶するものでして,インドのデカン溶岩台地を作るもの(約6千5百万年 前)は52万平方キロ,アメリカ北西部のコロンビア高原をつくるコロンビアリバー玄 武岩(約千六百万年前)は16万平方キロの面積を占めています(日本の領土面積は37 万平方キロ).地球の歴史でも幾度かしかおこらなかった大規模な玄武岩質の火山活 動の産物です.
 そんな大規模な溶岩は,多くは割れ目状の火口から噴出しました.その割れ目状火 口の長さは数十キロから二百キロメートルにおよぶものもあります.温度も高くて粘 性の低い溶岩は噴出口の位置をずらしながら幾度も幾度も噴出し,コロンビアリバー 玄武岩の場合は,総数三百枚もの溶岩が積み重なっています.長いものでは一枚の溶 岩が六百キロメートルも流れました.日本の地理で例えれば富士山から八ケ岳にいた る大割れ目から出た溶岩が中部・近畿地方を埋め尽くして岡山あたりまで流れたと想 像して下さい.一枚の溶岩はそれだけの距離を一週間程度(時速4キロ程度)で流れ たと考えられてきましたが,最近では,もっとゆっくりと,たとえばハワイの溶岩が 流れるのと同程度で時速百メートル程度かそれ以下の速度で,何ヶ月〜何年もかけて 流れたという説が有力になっています.どちらであるかは,ある時間内の溶岩の噴出 率の問題,ひいてはこの溶岩の噴出による地球寒冷化の程度の問題ともからんでくる だけに真剣に議論されているところです.
 それにしても,それだけ膨大なマグマが地下で生産されたこと自体がたいへん不思 議な現象です.地下のマントルが連続的に溶け続けるということが起こってこれだけ の量のマグマができたと考えられてきましたが,それにしては,溶岩の化学組成はい ろいろと説明つきにくい性質をもっていました.たとえば,溶岩の組成は一枚一枚で 相当ちがっていて,その違いかたも生成順に関係なくまちまちで,そしてマントルが 溶けてでてきたばかりのマグマ(初生マグマ)とは異なり,かなり地殻中で分化した と考えなければならないものであること,珪酸の量は結構高くて玄武岩と安山岩の中 間的なものが多いこと,などです.最近は,マントル深部にあった玄武岩質な部分が 上昇してきて溶融してできたマグマであるという説が唱えられています.その玄武岩 質な部分というものは沈み込んだ海洋地殻がマントル中で集積したものであるという 考えに関連しています. (12/1/99)

三宅康幸(信州大学・理学部・地質科学教室)


Question #1094
Q はじめまして。ずっと疑問に思っていましたことを質問します。
マグマですが、これは、どうして地球に存在しつづけるのでしょうか。何億年も前から、高温のままだと思いますが、そのエネルギー源は何なのでしょうか。核反応の一種でしょうか。
時間が経つと地球から熱が放射されて地球が冷えてマグマも固まるような気がするのですが。 (10/06/00)

まさみ:会社員:50

A 御考えのように放射性元素(例えばウラン、トリウム、カリウム)の壊変によるエネルギーが 地球の冷却を遅らせていることは事実ですが、現在の地球上にマグマが存在する理由としては 別の要因も考える必要があります。

現在の地球の場合、マグマが作られる状況として3つ考えられます。 一つは減圧融解というメカニズムが働く状況です。 地球を構成する岩石の融けはじめる温度は圧力が低くなるとともに低温になっていきます。 このため、地下400km(圧力約14万気圧)で1400度の岩石は固体ですが、 地表では1200度の岩石はどろどろに融けてしまいます。 このため、マントル内の上昇流で地表近くにまでマントルの岩石が持ち上げられると 岩石の一部が融けてマグマを作ることになります。 海嶺と呼ばれる海洋プレートのわき出し口では、 このようなメカニズムで玄武岩マグマが生産され、海洋地殻を作っています。 マグマを作る別のメカニズムとして、低融点成分(例えば、水)との混合があります。 例えばマントルを構成するペリドタイトという岩石は、深さ100kmの圧力下では 水の存在しない環境では1400度近くまで融けません。 しかし、水が多量に存在すると1000度程度で融けてしまいます。 日本列島など島弧に火山が多いのは、プレートの沈み込みによって大量の水がマントル内部に 持ち込まれるため、岩石の融点が下がって、マグマを生産しやすい環境ができているためと 考えられます。 マグマ生産の3番目の状況は、融点の異なる物質どうしの接触や混合です。 一口にマグマといっても、その温度はマグマの組成によって大きく異なります。 最初は低温の低融点の岩石が高融点で高温の岩石と接触すると、高温の岩石から しだいに熱をもらって低融点の岩石が融けはじめてマグマを作ることがあります。

以上のように、マグマが存在しつづけているといっても、ずっと同一のマグマが存在しているのではなく、 温度や圧力、揮発性成分の量といった周辺の環境変化によって固体岩石であったり、融けてマグマになったり 形を変化させながら存在しているわけです。ずっと高温状態が必要なわけではありません。 マントル対流やプレート運動などが、岩石のおかれた環境の変化をもたらしているわけですから、 マントル対流やプレート運動の原動力、すなわち地球のゆっくりとした熱の放出が マグマがずっと作り続けられている原因と考えることもできるでしょう。 (10/09/00)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #1388
Q マグマの結晶分化についてご教示ください。教員をしておりますがkにマグマの結晶分化を教えるのが大変難しい。温度が下がるにつれ晶出してくる鉱物に規則的な順序があります。カンラン石→輝石→角閃石→黒雲母里最後に石英の順といわれていますがK則性を支配している法則性を知りたいのです。有色鉱物は]酸塩のネソ→1重鎖イノ→二十鎖イノ→フィロとなり四面体がx降下により単独からより重合していくのは納得します。しかしF鉱物のテクト珪酸塩である石英は最後の最後に晶出するので上の理屈でも合うのですが炎迴oします。上手く説明できません。生徒にわかりやすく説明する方法はないでしょうか。

 もう一つ。花崗岩は昔のマグマ溜が地表に露出したものだと思います。火山の地下にはマグマ溜があるはずなので}グマ溜は火山前線の地下に分布していると考えられます。そうすると白亜紀の花崗岩の分布から当時の火山前線、つまり当時の海溝の形を推定することができR前線との比較からプレ−トの運動の変化の様子が推定できるかなと思うのですが如何でしょうか。 (12/31/00)

迷える親父:教諭:53

A (1つ目の回答) まず、カンラン石→輝石→角閃石→黒雲母そして最後に石英の順ではありません。カ ンラン石→輝石→角閃石→黒雲母は鉄やマグネシウムを含んだ有色鉱物についての系 列で、これとは別に斜長石→石英→(カリ長石)という無色鉱物の系列があります。 また、こうした晶出順はいわば単純化されたきわめて概念的なものであり、いつでも こうなるというものではありません。鉄に富む還元的な雰囲気では珪酸分に富んだマ グマから鉄に富むカンラン石が石英と一緒に晶出しますし、水に乏しいマグマからは 角閃石は晶出しません。またカリウムに乏しいマグマからは黒雲母は晶出しません。 したがってこうした順序から法則性といったものを導き出すことはあまり意味がない かもしれません。こうした鉱物の晶出順序は基本的にマグマの組成に依存していると いえます。マグマの温度が低下すると結晶化が進行し、残液の組成は変化していきま す(結晶分化作用といいます)。カルクアルカリ系列とよばれる組成のマグマでは、 分化が進むと残液の組成は珪酸分に富むようになります。御指摘のように、珪酸分に 富むようになると四面体([SiO4]4-)の重合度が増すので、ネソ珪酸塩→一重鎖イ ノ珪酸塩→二重鎖イノ珪酸塩→フィロ珪酸塩と重合度の大きな珪酸塩が出来やすくな るでしょう。また、他の成分に対して珪酸分が十分に多くなると重合度が大きくて珪 酸だけからなる石英が長石とともに晶出するようになります。何れにしても鉱物の晶 出順は温度のみならず水なども含んだマグマの組成に大きく依存します。カンラン石 →輝石→角閃石→黒雲母といった晶出順序を一般的な法則であるとして絶対視しない 方が無難といえるのではないでしょうか。 (2つ目の回答) 御指摘の通りです。ある時代の花こう岩が出現しなくなる線を結んでいけば、当時の マグマ(火山)前線が描けます。こうしたマグマ前線の移動から過去のプレート運動 を復元するという仕事はごく普通に行われています。 (01/15/01)

高橋正樹(茨城大学・理学部・地球生命環境科学)


Question #1331
Q プレートの境界でのマグマの発生の原因に、水(H20)による融点降下があると聞きましたが、
やはり海水による影響が大きいのでしょうか?
また、海溝から離れるほど火山岩の種類が変わったりするのでしょうか?
よろしくお願いします。 (12/14/00)

地学高校生:高校生:18

A 海水の影響はあります。といっても、単純に海水と接しての反応ではありません。 島弧のような沈み込み帯のプレートの境界では、沈み込むスラブ(海洋プレート+海底堆積物)が マントルへ水(海水が鉱物中に固定されたものや鉱物粒間に閉じこめられたもの)を持ち込みます。 この水は、マントル中で鉱物の分解反応や鉱物粒間からの絞り出しによって沈み込むスラブから 放出されます。 これが沈み込むプレートの上に位置するくさび形のウエッジマントルと呼ばれる領域を移動して マグマ発生の場に到ると、融点降下を引き起こします。

海溝からはなれるにしたがって沈み込むスラブから放出される水の量は変化し、 また、ウエッジマントルと呼ばれる領域の温度構造も変化します。 このため、マグマ発生の場の温度や圧力も海溝からの距離で変化し、 島弧を横切る方向で火山岩の化学組成、特にアルカリ元素量、には系統的な変化が見られます。 ただし、ウエッジマントルで発生したマグマは、上昇経路の地殻を取り込んだり 地殻中で様々な結晶分化をして組成を変化させた後、地表近くに到達するので、 海溝からの距離と火山岩の種類を簡単な関係で示すことはむつかしいです。

(12/23/00)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #1253
Q はじめまして、
質問させていただきます。
私は四国にすんでおりますが、四国には火山はありません

1.どうして四国には火山がないのですか

2.石槌山は、昔、火山だったとききますが、本当ですか。

  本当だったとしたら、いつ頃まで活動していたのでしょうか。

  また、外に火山だった山はないのですか?(たとえば剣山など)

3.今後、四国で火山活動が起こる可能性はないのでしょうか。 (11/11/00)

くま:公務員:33

A 1.どうして四国には火山がないの?
 火山は地下深部(上部マントル)から高温のマグマが上昇して来ることによって形 成され、噴火を起こします。上部マントルの温度が、岩石が溶ける温度より低いとマ グマは発生せず、その上に火山もできません。また、上部マントルが高温で溶けてい ても、マグマが地表に上昇するための通路がなければ、火山はできません。四国の地 下深部(上部マントル)は、温度の低いプレートが低角で沈み込んでおり上部マント ルでマグマが溶ける条件にないために火山がないものと思われます。

2.石槌山は、昔、火山だった?
 石鎚山は、今から1千5百万年前頃、火山として活動しておりました。その頃活動 していた火山としては、小豆島の寒霞渓や、讃岐の五色台などがあります。

3.今後、四国で火山活動は?
 上に書いたような四国の状態は数百万年にわたって維持されていたと思われますの で、私達が生きている間に、火山活動が起こることはないと思っています。 (11/13/00)

吉田武義(東北大学・理学部・地球物質科学科)


Question #1801
Q 初めまして^^/
レベルの低い質問ですが、質問します。

先日、授業で火山岩のスライドガラスの観察をしました。
大きな形の良い斜長石の結晶があって、その中に形の悪い別の斜長石が入っていました。
先生は、一回溶けて、そのあとにまた成長したのだと説明していました。

結晶がマグマの中でできるときに、溶けちゃうんですか?
マグマがもっと熱くなるのでしょうか?? (07/10/01)

さおちゃん:高校生:18

A
 この質問はかなりレベルの高い質問です.「結晶がマグマの中でできるときに,溶 けちゃう」ということは,不思議なようですが,実際によくあることです.溶ける原 因としては,(1)温度が上昇する,(2)圧力が低下する,(3)別のマグマや水 などの流体と混合する,などの場合があります.


 斜長石は「固溶体」で,カルシウムの多いものからナトリウムに富むものまで,い ろいろな化学組成のものがあります.一般に玄武岩にはカルシウムの多い斜長石が含 まれ,安山岩,流紋岩とSiO2が増えるに従ってナトリウムに富む斜長石を含むように なります.これは,温度が下がって結晶作用が進行するに従って,マグマも斜長石 も,カルシウムの多いものからナトリウムに富むものへ,連続的に化学組成が変化す るためで,斜長石は「連続反応系列」とも呼ばれます.


 さて,例えば地下のマグマ溜まりの中で,流紋岩質のマグマ(低温)の中に玄武岩 質のマグマ(高温)が入ってきて混合すると,流紋岩のマグマの中に浮いていた,ナ トリウムに富む斜長石は溶かされ,新たにもっとカルシウムの多い斜長石が結晶する ようになります.三宅島や有珠山の火山活動を見ても,マグマは数年〜数10年ごと に繰り返し上昇してきますし,その間の静かな時期にもマグマ溜まりの中で結晶作用 が進行しますから,結晶が成長したり,溶かされたりすることが繰り返し起きても不 思議ではありません.


 ところで,これとは別に,ただマグマの温度が下がって,結晶が成長しているの に,ある温度まで下がると,その結晶が逆に溶けてしまうという不思議なことが起き ます.例えば,ある種の玄武岩質マグマの中で,カンラン石という鉱物が結晶化して いるのに,ある温度まで下がると,カンラン石が溶けてしまい,この温度以下では, 斜方輝石という別の鉱物が結晶し始めるのです.この場合は,マグマの結晶作用の進 行とともに,別の種類の鉱物が結晶するので,「不連続反応系列」と呼ばれます. (逆に温度を上げて斜方輝石を溶かすと,カンラン石+マグマになります.これは 「分解溶融」と呼ばれます.)


 マグマは,いろいろな成分が混ざった複雑な液体なので,それが結晶化するときに はいろいろと不思議なことが起きます.水が0℃で氷になるような,単純な結晶化と はだいぶ違います.
 (07/12/01)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


Question #2179
Q マグマの成因についての質問です。

 中学校で、理科を教えています。マグマの成因について、プレートの沈み込みで陸のプレートと海のプレートの圧力などによる摩擦が原因だと思っていたのですが、最近以下のような説を聞きました。

「海水が沈み込むプレートといっ
しょに運ばれ,水のためにマントルの融点が下がって液体になる。」

マグマの成因に、プレートにしみ込んだ海水が影響していたという説は初めて聞きました。
勉強不足で、新しく正しい知識を子供達に伝えたいと思っています。この説の詳しい説明と、できればこの説をわかりやすく書いた文献などありましたら教えてください。 (03/23/02)

にらいかない:中学校教員:37

A
 以前にはプレート間の摩擦熱という説がありましたが,最近ではあまり重要視され ていません. それは,仮に摩擦で多少温度が上がっても,こんどは高温になった部分の流動性が高 まるので, 摩擦自体が小さくなってしまい,プレートの沈み込み帯でのマグマ生産に見合うだけの 十分な摩擦熱を生じさせるのか困難だと思われるからです.


 最近では,水の存在によって岩石の融点が下げられているという説のほうが一般的 です. 地下の高い圧力のもとでは,水が豊富に存在すると岩石の融点は数百度も低下します. 地下100kmあたりのマントルの平均的温度は1300〜1400度程度で,水が存在しない 場合には,マントルの岩石は融けることはありません.しかし沈み込んだ海洋プレー トから 脱水によって大量の水が供給されると,岩石は容易に融けることができるのです.


 島弧で噴出しているマグマについては,海洋プレートの真上のマントルの岩石が融 けてできた ものの関与と,沈み込んだ海洋プレートの海洋地殻部分が融けてできたものの関与と が認識され ていますが,いずれにせよ,岩石の融解には海洋プレートから放出された水が大きな 役割を担って いると思われます.

Q&Aの#289にも多少関連することが書いてあるので,そちらもご覧ください.


 参考となる文献としては, ・岩波ジュニア新書 「大地の躍動を見る:新しい地震火山像」 山下輝夫編著 の第7章が最適だと思います.やや専門的になりますが, ・東京大学出版会 「沈み込み帯のマグマ学」 巽好幸著 にも詳しい説明が述べられています. (04/01/02)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #3497
Q マグマに中には、なぜスコリア、火山灰などが、入っているんですか?それに、カルデラができて、湖が、できるというのですが、カルデラは、マグマみたいに熱くないんですか?もし熱いなら、なぜ湖ができるのですか?蒸発してしまって、湖ができないんじゃないでしょうか? (11/21/02)

小学6年生:なし:12

A マグマは高温でドロドロにとけたものをさします。スコリアや火山灰というの は、マグマが噴火の時に冷えて固まってできたもので、その形、色、大きさな どのとくちょうからそのようによばれます。

スコリアとは泡だった黒っぽいものです。白っぽい色のときは軽石(かるい し)とよばれます。それらがくだけて、こなごなになれば火山灰になります。 火山灰は別の原因でもできます(下の回答を参考にして下さい)。

カルデラができるにはいろいろな原因があります。地下にあったたくさんのマ グマが一度になくなったために、地面が落っこちてできることや、山が大きく くずれたり、噴火のときに火口付近がはでにふき飛ばされたりしてできること があります。カルデラの中にいつも湖ができるわけではありません。うまく水 がせき止められるとカルデラ湖ができます。

ふつうマグマがたまっているのは地下数キロメートルから十キロメートルの深 さですから、地上にはその熱がほとんど伝わってきません。カルデラができる ときに地上に噴出(ふんしゅつ)した溶岩や堆積物(たいせきぶつ)がまだ熱 いときには、水が蒸発して湖ができにくいこともあるかもしれません。高温の 火山ガスが吹き出しているところがあればその周辺だけちょっとだけあったか いかもしれません。大きなカルデラ湖ができるのは噴火からずいぶん時間がた っていることが多いので水は熱くないのがふつうです。でも、火山がふたたび 活発になってマグマが上昇してくれば、水が部分的にあたためられたり、蒸発 することもあるでしょう。
 (11/23/02)

中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)


Question #3859
Q なぜマグマは出来たのですが?地球が出来たのはビックバンが原因ってことはマグマもビックバンが原因なのでしょうか?
それからいつ出来たのか?何のために出来たのか?も教えてください。
あと、なぜマグマは何年経っても冷えないのかも教えてください。 (02/13/03)

☆おちょめ☆:中学生:15

A 回答が遅くなってごめんなさい. それにしても,ビックバンとの関連性とは壮大な話ですね. 時間や空間や物質のすべての源が約140億年前におこったビックバンであるという点 から言えば, マグマとビックバンも無関係とは言えないでしょうが,現在のマグマとの直接の関係 はありません.

いただいた質問には,大事な点が2つ含まれています.一つは物体が冷えるスピードは なにで決まるかということ,もう一つはマグマがどうやってできるかということです.

物体が冷えるためには,熱を逃がさなくてはなりません.この場合,表面積に比例して 熱が逃げていきます.一方,物体が持つ熱の総量は物体の体積に比例するので, 大きな物体ほどたくさんの熱を持っていることになります. ところで,物体表面積は物体のサイズの2乗に,体積はサイズの3乗に比例しますか ら, 結局のところ,大きな物体ほど冷めにくいということになります. カップに少し入れたお茶はすぐに冷めてしまうけれど,なみなみと注げばなかなか冷 めないということを 思い出してください.マグマの場合も同じことです. 地表に流れ出た厚さ数メートルの溶岩はすぐに冷え固まってしまいますが, 火山の地下にある直径数kmのマグマ溜まりが冷え固まるには数十万年が必要です.

次に,マグマがどうやってできるのか. マグマは岩石がとけてできたものです.ではどのような場合にとけるかというと, (1)温度が上がった場合,(2)圧力が下がった場合,(3)融けやすい別の物質 が混ざった場合,です. 「圧力が下がった場合」というのは少しわかりにくいかもしれませんが,たいていの 物質では 物質のとける温度は圧力が高いほど高くなっていきます.例えば岩石の場合も地下 100km(圧力3万気圧)で 1200度では岩石は固体のままですが,その温度を保ったまま大気圧下に持ってくると どろどろにとけてしまいます.

地球の46億年の歴史のなかでは地球のどこかでは常にマグマが存在しています. 地球ができる際には幾つもの微惑星が地表に降り注ぎました.この時には衝突のエネ ルギーで 地表には煮えたぎるマグマの池やマグマの海ができたと考えられています.これは( 1)のケースです. 一方,現在の地球でのマグマのでき方を考える場合に重要となるのはおもに上記の( 2)と(3)の場合です. マグマができる場所は主として,海嶺,ホットスポット,沈み込み帯の3カ所ですが ,海嶺とホットスポットの場合には(2)の圧力低下がマグマのできる主要な原因で す.これに対し,日本のような沈み込み帯の火山の場合には, 沈み込むプレートによってマントル内に水が供給されて,この水の存在によって岩石 の融点が下がることも重要なので (3)もマグマの生成に効いてきます. 地球はとてもゆっくりしか冷えないので,現在の地球の表面温度は20度くらいですが, 今でも地下深くではでは温度が1000度を越えています.でも地下深い所すべてがどろ どろに とけたマグマになっているわけではありません.外核と呼ばれる深さ2900kmから 5100kmの領域を除けば 地球の内部はほとんど固体です.ではどうしてマグマが作られるかというと, マントル対流やプルーム活動によって固体状態の地球の中の方の岩石が地表近くに上 がってきた際に 圧力が低くなることが効いて岩石が融けてしまい新たにマグマが作られるのです. マントル対流やプルーム活動は地球内部の熱を効率よく外に放出するための しくみです.だから地球の内部が十分に熱いうちはマントル対流やプルーム活動が起 きて, それに伴って次々とマグマも作られ続けていくのです. (Mar-07/2003)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


Question #3943
Q いつも御丁寧な回答ありがとうございます。2つの質問があります。
@イタリアのエトナ山は外見や玄武岩質である事に加えて噴出量が極端に多い事も富士山によく似ていると思います。エトナはホットスポット火山であるがゆえあれだけ膨大な噴出量を誇ると聞きます。富士山については地下にホットスポット云々とは聞かないため島弧火山列の中に不自然なほど巨大な玄武岩質火山があるのを常々不思議に思ってましたが、最近「フィリピン海プレートは北東側と西側に沈みこんでるため結果として中央部が割け富士山から八ヶ岳の間はプレートが存在しない状態になっている(フィールドガイド。日本の火山@)」という記載を見つけました。この「プレートが割けている状態」と富士山の膨大な量の玄武岩は関係があると考えてよろしいのでしょうか。

A伊豆大島から八丈島をこえさらに南の方まで(新島〜神津島を除いて)これまた島弧火山でありながら玄武岩質の火山が連なっています。特に大島、三宅島、八丈島は割れ目噴火をおこしたりキラウエア型のカルデラを持つ点でも兄弟の様に似ていると思います。同じ「火のリング」でありながらアメリカのカスケード地方の火山群に比べて伊豆諸島の島々の溶岩がサラサラしているのは理由があるのでしょうか(何となく陸の火山の溶岩はネバネバしていて島の火山の溶岩はサラサラしている様に思えます)。

以上、よろしくお願いします (04/27/03)

アマンタジン:医師:28

A 2つの質問ですが,いずれも関連がないわけではないのでまとめてお答えします.

日本列島のような沈み込み帯の火山は,SiO2成分が多い安山岩,デイサイト質マグマ の噴出が多く,玄武岩質マグマだけを噴出している火山は少ないです.この特徴は世 界中の沈み込み帯の火山に共通して見られますが,より詳しく調べてみると,沈み込 み帯の島弧地殻や大陸地殻が厚ければ安山岩質マグマが卓越し,薄ければ玄武岩質マ グマが卓越する傾向があることが知られています.伊豆大島や三宅島がある伊豆-小 笠原弧は,大部分が海底にあることからわかるように,島弧地殻の厚さが本州などに 比べて薄く,玄武岩質マグマが多く噴出する島弧の一つです.

マントルが溶けてできる初生マグマは大部分が玄武岩質マグマであると考えられてい ます.島弧に玄武岩質マグマの火山が少ないのは,島弧に安山岩質マグマの火山がな ぜ多いのかということにつながります.安山岩質マグマの成因として,地殻内のマグ マ溜まり内での玄武岩質マグマの結晶分化作用や,地殻が玄武岩質マグマの熱で溶け てできたSiO2の多いマグマと玄武岩質マグマの混合などが挙げられます.いずれも地 殻が厚ければより容易に安山岩質マグマを作りやすくなるのが理由と考えられていま す.

富士山の地下では,地殻下部が構成する沈み込んでいるフィリピン海プレートが富士 山の直下で裂け,そこを埋めるようにマントルから玄武岩質マグマが上昇しやすくな っているという考えがあります.つまり局部的に地殻が薄くなっているのと同じこと が起きているというわけです.富士山の場合,開いていくことで強制的にマントル物 質が上昇することもあって,大量の玄武岩質マグマが地表に噴出していると考えられ ます.
 (03/5/20)

川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門) --


Question #5405
Q マグマの発生について質問します。
火山についての記述の中に次のような文がありました。
「上部マントル中で発生するマグマは、そこに存在する橄欖岩がすべて溶融したものでは
なく、橄欖岩の成分中のSiO2の重量%が大きい成分だけが溶融してマグマとなる。」
これを具体的に説明していただければ幸いです。特に、SiO2の重量%が大きい成分と
は何でしょうか。
よろしくお願いします。 (01/06/04)

公務員:社会人:53

A 参考になさった記述はあまり正確ではありません. 「橄欖岩の成分」というのはおそらく橄欖岩(カンラン岩)を構成する鉱物のことを指しているものと思われます.カンラン岩を構成する主要な鉱物は4種類 で,圧力によって異なります.比較的低圧下では,<カンラン石,斜方輝石,単斜輝石,斜長石>という鉱物であり,やや圧力が高くなると,<カンラン石, 斜方輝石,単斜輝石,スピネル>に変化します.もっと高圧下では,<カンラン石,斜方輝石,単斜輝石,ざくろ石>という鉱物組み合わせに変化します.こ れらの鉱物の量比については,通常のマントルを構成するカンラン岩の場合,カンラン石が60〜70%程度と大部分を占め,次に多いのが斜方輝石で10〜 20%程度を占めています.

さて,こういったカンラン岩が融解してマグマを発生する場合には,程度の差こそあれどの鉱物も融解しています.発生したマグマは結果的には融解の程度が 高くなる(マグマの量が多くなる)につれてSiO2の重量%が乏しくなりますが,これは融解した鉱物の量比に依存するのであってどれか特定の鉱物のみが 融解した結果ではありません.例えば,カンラン石,斜方輝石,単斜輝石,スピネルという鉱物組み合わせをもった平均的な組成のカンラン岩の場合,マグマ の発生領域ではマグマの量が増加するにしたがって

<カンラン石,斜方輝石,単斜輝石,スピネル,マグマ>→ <カンラン石,斜方輝石,単斜輝石,マグマ>→ <カンラン石,斜方輝石,マグマ>→ <カンラン石,マグマ>

のようにマグマと共存する鉱物の組み合わせが変化します.この時にもカンラン石はマグマに融けていますが,融けにくい鉱物であることと元々の量が多いこ とから結果的に最後まで残る鉱物になっています.

ちなみに,これらの鉱物の化学組成を見ると,スピネルはAl酸化物,Mg酸化物,Fe酸化物を主体とする鉱物であって,SiO2はほとんど含まれていま せん. 単斜輝石のSiO2の重量%は温度や圧力によって異なりますが,51-54重量%程度が普通です.いっぽう,斜方輝石のSiO2の重量%も温度や圧力に よって異なりますが52-57重量%程度が多く,単斜輝石よりもややSiO2成分に富んでいる場合が多いようです.カンラン石のSiO2の重量%は 40%程度です. (01/08/2004)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)